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「ところで男女平等とは言っても、昔はまだ女の子でスカートはいてる人、たくさんいたんだぞ。考えられないだろ。これが証拠だ」
先生はテキストの写真を指さした。それは女の子達の集合写真で、全員がおそろいのスカートをはいている。写真の下に、女子高生の制服、とある。
「今じゃ、学校の先生が『スカートは時代遅れだからズボンにしなさい』って言ってるよ」と健太は答えた。
「ま、時代なんだろねそれが」
「でも先生。スカートに憧れてる女子、クラスに結構いるよ」
「レトロブームってやつかな」
健太がレトロブームって何と聞こうとしたとき、藤田先生は腕時計をちらり見た。ボールペンの揺れ巾が大きくなる。
「ちょっと急ごうか。とにかくさ、二十歳以上になると、男女の差なく選挙できるようになったんだ。その頃は今と違って、それに文句いう人はいなかったよ」先生はそこで、目をぱちぱちした「まだ今のように、『大人だけずるい』っていう声はなかったんだ」
藤田先生のボールペンが、止まった。
「そこから先は、話さなくても分かるだろう」
前の席と健太の席を隔てる仕切り板は、落書きで埋め尽くされている。中には「藤田のバカ」「塾長のデブ」というものもあった。それらは苦労して消そうとした痕が窺がわれる。周りの塗装まで薄い。消しゴムで何度もこすったことは間違いない。ただ、残念ながら文字の方が濃かった。また、字が少し大人びて見えることから、ここの職員が子供の字を真似て書いた可能性もある。
「平均くん」の絵もあった。これは新明党のイメージキャラクターだが、政治に興味のない子供達の間でも、その平均台の上にちょこんと立つ愛らしい姿は人気がある。長くも短くもない頭髪、かっこよくも不細工でもない顔つき、地味なスーツ姿は平均的すぎて、あまりパッとしない。しかし最近は特徴のはっきりしたものよりも、こういう方が人気がある。ぷうぎの裏番組として民放他局でアニメ化されるらしいと一部の友達は言うが、真偽の程は分からない。