テラーノベル
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その日の昼休みタクは昼休みに入るなり、
教室の窓際からグラウンドの方をぼんやり見ていた。
すると——
ロボットみたいなぎこちない動きで、
真琴が廊下を歩いていくのが目に入った。
目的地は明らかに隣のB組。
タクは小さく吹き出した。
(……その日のうちに行動するとは思わなかった)
軽く肩(尻?)を叩いたつもりだったのに、
真琴は本気で動いたらしい。
タクは腕を組んで、遠くからその姿を見守った。
(がんばれよ……戦友)
一方、B組の前。
真琴は教室の入り口で完全に固まっていた。
足が動かない。
心臓が爆発しそう。
「あんた誰?」
突然、顔がめちゃくちゃ近い距離でギャル(杏奈)が現れた。
山姥メイクに、長いつけ爪、ルーズソックス。
圧がすごい。
真琴はビクッと後ずさり、
即座に逃げモードになった。
「……帰ります」
「ちょ、帰んなって!
誰かに会いに来たんデショ?
呼んでやるって、誰?」
真琴は震える声で、かろうじて答えた。
「……お、岡田」
杏奈は一瞬「岡田ー?誰だよ」って顔をしたが、
すぐに教室の中に叫んだ。
「岡田ー!! お前呼んでるぞー!!」
すると、教室の奥から大きな体がにゅっと出てきた。
アキだった。
「真琴?」
アキがにこにこしながら近づいてくる。
真琴の心臓が跳ね上がった。
「あーあんた岡田って言うんだ。
ゴリラで覚えてたんだわ」
杏奈が横から茶々を入れる。
「ゴリラってなんだよ💢」
アキはぷりぷりしながら杏奈を軽く睨み、
すぐに真琴に向き直った。
「なんかあったか? 練習の話?」
真琴は言葉が出てこない。
喉がカラカラだ。
言え。
言えよ。
腹の底から、渾身の力を振り絞って、
真琴はか細い声で言った。
「……ひ、昼一緒に……よかったら……」
アキの目がパッと輝いた。
「メシ? え、いーよ‼︎
一緒に食お!
え、真琴、うわ、俺やば嬉しい‼︎」
アキは本気で嬉しそうに笑った。
4月から一緒にいて、
投手から自分を誘ってくれたことが、
純粋に嬉しいらしい。
真琴はクラクラした。
アキの笑顔が眩しすぎて、
視界がぐるぐる回る。
「…じゃ……昼、屋上で」
「迎えに行く‼︎
一緒に行こうぜ‼︎」
アキの屈託ない笑顔に、
真琴はもう限界だった。
その様子を、教室の入り口で一部始終見ていた杏奈が、
小さく呟いた。
「あ〜(察)青春ジャン」
その日の昼休み 1-A教室
昼休みになると、いつもの4人が集まった。
タク、翼、勇人、真琴の机を4つくっつけて、
弁当を広げるのが最近の定番になっていた。
翼が自分の弁当を開けながら、
ふと隣の真琴を見た。
「あれ? 真琴、今日は食べないの?」
その一言で、真琴の顔が一瞬で真っ赤になった。
(……やばい)
なんてことない。
「アキと今日は一緒に食べるから」って言えば済む話なのに、
口がうまく動かない。
「え、いや……ち、ちがくて……その……」
しどろもどろになる真琴を見て、
勇人が「ん?」と首を傾げ、
タクは口元を緩めてニヤニヤしている。
その時だった。
教室の入り口から、大きな声が響いた。
「真琴ー‼️
迎えに来た‼️
行こうぜ‼️」
アキだった。
B組の制服のまま、にこにこしながら手を振っている。
真琴は椅子から飛び上がるように立ち上がった。
「ア、ハイ、イク……!」
声が裏返っていた。
翼と勇人が同時に顔を見合わせた。
二人の目が「え……?」と大きく見開かれる。
タクが、まるで助け舟を出すように、
さらっと言った。
「真琴、今日はアキと食べるんだって」
真琴はもう限界だった。
顔を真っ赤にしたまま、
そそくさと弁当箱を抱えて教室を後にする。
その後ろ姿を、
翼と勇人が唖然とした目で見送っていた。
「……仲良くなったんだ……」
勇人がぽつりと呟く。
翼もまだ状況が飲み込めていない様子で、
「う、うん……なんか、急に……」
と小さく頷いた。
タクは二人を見て、
小さく笑いながら言った。
「ほら、食おーぜ。
食べ終わったらバレーやるんだろ?」
「あ、うん……」
「だな……」
翼と勇人はまだ少し混乱したまま、
でもどこか嬉しそうに弁当を食べ始めた。
真琴の変化が、
二人には素直に嬉しかった。
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