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セイカ軍——
今はその名を改め、ユイ軍と呼ばれている。
だが、主であるユイが指揮を執らぬ戦は、
勝利を重ねても多くの命を失い続けていた。
それでも兵たちの士気だけは、かろうじて保たれている。
(十八年前の、あの悲しみを……
二度と繰り返してなるものか)
その想いだけが、彼らを戦場へと立たせていた。
戦に勝ち、城へと帰還しても、
兵たちの身体は傷だらけで、鎧も心も擦り切れていた。
だがユイは、
その姿を労う言葉をかけることもなく、
私室から顔を見せることもなかった。
主の不在は、確実に兵たちの心の炎を弱らせていた。
それでも側近たちは、互いに声を掛け合い、必死に士気を繋ぎ止める。
「ユイ様は、必ずいつかこの悲しみを克服なさる!
セイカ様が築かれたこの軍を、再び率いてくださるはずだ!」
「それまで我らが耐え忍ぶのだ!
命尽きるその時まで!」
「おおーー!」
重なり合う雄叫びが、城内に響き渡る。
その声は、
閉ざされたユイの私室にまで、かすかに届いていた。
(ああ……また、来たのかい……)
ユイはただ、縁側から庭を見つめていた。
囀りながら寄り添う、二羽の番い。
同じ場所に立ち、
同じ景色を見ていたはずの存在は、
もう隣にはいない。
それでも鳥たちは、変わらず寄り添い、空を仰いでいる。
ユイはその姿から、目を逸らすことができなかった。