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※死ネタ

※曲パロ

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※微恋愛要素


ありがとう少女レイ


蝉の声が、耳にこびりついて離れない。


あの夏の日、君は、オレの髪を遊んだあと、いつもの別れのように笑顔で「じゃあね」と言った。

だから、オレも、「またね」って、返した。

君はそれに応えることなく、笑顔のまま、踏切へ歩き出した。

警報機が鳴り、遮断機がゆっくりと、下がっていく。

君は、降りきった遮断機を跨ぎ、こちらを振り返った。


「ネス、──────」



目が、覚めた。


夢を、見ていた。

あまりはっきりとは覚えていない。

ただ、何か寂しい。


朝から蝉の声が聞こえる。


枕の横に、あるものが見えた。

1つは白いクマのキーホルダー。もう1つは…なんだろう、白いクマの胴体部分と同じ形をした、緑色の___

こんなもの、持っていたか…?


そんな時、家のインターホンが鳴った。

そうだ。今日は、1つ上の友人と遊びに行く約束をしていた。

まだ時間はたっぷりあるというのに、きっとオレが寝坊しないか心配したのだろう。

部屋着のまま、玄関へ向かう。


「…はい。」

「よっ、ネス!早く来ちまった!」

「…支度するから、その間暑いだろうし、上がりな。」

「おっ、いいの?んじゃ、お邪魔しま〜す。」

「はいはい、適当にくつろいでて。」


くだらない話をしながら、支度をする。

「…そういえばきたみん、今日どこ行くの?一昨日『遊びに行こうぜ!』って言われて、特に予定もないから了承したけど。」

「…あー、あいつのとこだよ。」

「…あいつ?」

「…俺らの、親友。」


「…あ、」


途端、息が詰まる。

目の前が真っ暗になる。

オレは、お、れは、

あいつを、


「―ス、ネス!」


「あ、ごめ、ごめんなさ、」

「落ち着け。大丈夫。ほら、ゆっくり息して。」


そう言って彼は背中をさすってくれる。


「…ごめん、オレまた、」

「ううん、俺こそごめんな。」


「…今日も、あいつの夢見たんだ。」

「うん。」

「夢の中で、そこでだけ、会うあいつは、毎年、笑ってるんだ。」


「…この日が終わると、オレは、いつも忘れちゃうのに。」


「毎年、この日だけは、夢の中に現れて、キーホルダーオレのとこに置いて。」


「あいつは、オレのことを、許さないんだろうな。」

「ネス」

「この日だけは、7月20日だけは、忘れるなって。」


「僕は、お前のせいで死んだんやぞって。」


瞬間、彼に包まれる。


「ネス、大丈夫。俺は、俺だけは、お前のした事も、あいつがどう思ってたかも、ちゃんと、分かってるから。」

「きた、み」

「俺だけは、お前のそばにいるから。」


「…ありがとう。」

「ううん。いいんだよ、俺たち、親友だろ?」



墓地に着き、ネスには水を取ってきてもらう。


「…なあ、かい。」

「お前、ずるいよな。」

「キーホルダーに呪いかけてさ、ネスのことずっと苦しめてさ。」

「…ネスが望めば、俺はいつでも祓ってやるから、覚悟しとけよ。」

「…ネスは、お前にずっと囚われてんだよ。」

「もう、5年経つんだ。…5年も、ネスは苦しんでる。」

「…お前のせいで、ネスはいつまでもまっすぐ俺の事見てくれないんだよ。」


「…きたみん〜、持ってきたよ。」

「おっ、ありがとうな。」

「…さっき、何の話してたの?」

「ん〜?ネスがまだホラー苦手って話とか、虫出ると俺に電話して助け求めてくる話とか。」

「ちょ、恥ずいからやめろってぇ!」

「あははっ!」


蝉が、遠くで鳴いていた。

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