テラーノベル
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シェアハウスでの撮影は、いつも通り賑やかに進んだ。今回の企画は、メンバーがペアになってお互いの秘密を暴露し合うという、なかなか攻めた内容だ。ゆあんはたっつんと、えとはもふとペアになった。
撮影中、ゆあんはたっつんとの軽快なトークを繰り広げながらも、視線は度々えとの方へと向いていた。えとともふのペアは、終始笑いが絶えず、特にえとがもふの秘密を暴露する時の、少し困ったような、でも楽しそうな表情に、ゆあんの胸はきゅんとした。
(えとさん、どんな秘密持ってるんだろうな……俺には、見せてくれない顔なのかな……)
そんなことを考えていると、ふいにじゃぱぱがゆあんに耳打ちした。
「ゆあんくん、えとさんのこと、気になる?」
ギクッとして、ゆあんは思わずじゃぱぱの顔を見た。じゃぱぱはニヤニヤと笑っている。
「な、なんのこと……?」
「とぼけんなよ。ゆあんくん、えとさんが他のメンバーと話してる時、いつも目で追ってるぞ。分かりやすい」
図星を突かれ、ゆあんは顔を赤らめる。じゃぱぱは、そんなゆあんの様子を楽しそうに見ていた。
「ま、頑張れよ。でも、シェアハウスだからな、慎重にな。変なことになったら、みんなにも迷惑かけるし」
じゃぱぱの言葉は、ゆあんの心に重くのしかかった。そうだ、もし自分の気持ちでこの平和なシェアハウスの空気が壊れてしまったら? それだけは絶対に避けたい。
一方、えとも撮影の合間に、のあに相談を持ちかけていた。
「のあさん、私、やっぱりゆあんくん脈ないのかな……」
「どうしてそう思うの?」
「だって、いつも私から話しかけてばっかりだし。それに、何か話してても、すぐにじゃぱぱくんとかたっつんくんとかに呼ばれて行っちゃうし……」
「せやな、ゆあんはじゃぱぱと俺とは特に仲ええからな。」
後ろで飲み物を飲んでいたたっつんが、関西弁で口を挟んだ。
「ほらね! やっぱりそうなんだよ!」
えとは、たっつんの言葉に意気消沈する。
「でも、えとさん。ゆあんくん、クールに見えるけど、意外とシャイなところあるんですよ? もしかしたら、えとさんのこと、すごく意識してるからこそ、あんまり話しかけられないのかもしれないですよ?」
のあは、えとを励ますように優しく言った。その言葉に、えとの心に小さな希望の光が灯る。
「そ、そうなのかな……?」
「うん。そういうの、男の子ってあるみたいですよ」
のあは、確信めいた口調で頷いた。たっつんも「まぁ、俺ら男はそういうとこあるかもしれんなぁ」と同意している。
その夜、リビングではいつものようにメンバーが集まり、雑談に花を咲かせていた。シヴァが新しく買ったゲームの話をし、ひろとどぬくが楽しそうにそれに耳を傾けている。なおきりは、最近凝っているというコーヒーを淹れてくれていた。
ゆあんは、ソファーの端に座り、動画の企画について考えているふりをしながら、えとの様子を伺っていた。えとは、るなとのあと女子トークに夢中になっている。楽しそうに笑うえとを見ていると、ゆあんの胸は温かくなる。
(あんな笑顔、俺だけに向けてくれたら、どんなに嬉しいだろうな……)
すると、隣に座っていたうりが、ゆあんの様子に気づいたのか、声をかけてきた。
「ゆあん、なんか悩みごと?」
うりは、メンバーの中でも特に察しが良く、ゆあんも時々個人的な相談をすることもあった。
「いや、別に……」
ゆあんはとっさに否定したが、うりはにこやかに笑い、さらに問いかける。
「えとさんのこと?」
ゆあんの心臓が、再び跳ね上がった。うりも気づいていたのか、と驚きと同時に恥ずかしさがこみ上げてくる。
「な、なんで、うりくが……」
「だって、分かりやすいからな。ゆあん、えとさんのことになると、いつも目が泳いでるし、ちょっとソワソワしてる」
うりの言葉に、ゆあんは観念したようにため息をついた。
「やっぱり、俺、そんなに分かりやすい……?」
「ああ。それで、どうなんだ? 気持ち、伝えないのか?」
うりのまっすぐな瞳に、ゆあんは戸惑った。
「それが……もし、今の関係が壊れちゃったらって思うと、怖くて……」
ゆあんの言葉に、うりは少し考えるそぶりを見せた。
「そっか。でもな、ゆあん。何も行動しないままだと、何も変わらない。それに、えとさんだって、ゆあんのこと、まんざらでもないと思うけどな」
「えっ!?」
うりの思わぬ言葉に、ゆあんは目を見開いた。
「どういう意味ですか?」
「それは、ゆあん自身で確かめてみろ? 俺からは言えない。でも、ひとつだけアドバイスするなら、行動すること。勇気を出してみな」
うりは、そう言ってニヤリと笑った。ゆあんは、うりの言葉の真意を測りかねながらも、その胸に小さな希望の炎が灯ったのを感じていた。
同じ頃、えともリビングの隅で、のあとさらに深い恋愛トークを繰り広げていた。
「私、どうしたらいいんだろう……ゆあんくんのこと、諦めた方がいいのかな……」
「なんでそんなこと言うんですか! まだ何もしてないのに!」
のあは、えとの弱気な発言に少しばかり呆れたような顔を見せる。
「だって、ゆあんくん、いつも何を考えてるか分からないんだもん」
「何考えてるかわからないって、私、知ってるんですよ。ゆあんくん、意外と天然なところとか、優しいところ、いっぱいあるんですから」
のあの言葉に、えとはドキリとする。
「えとさん。もし、ゆあんくんもえとさんのこと好きだったら、どうしますか?」
のあの問いかけに、えとは想像してみた。もし、ゆあんが自分と同じ気持ちだったら……。それだけで、胸が熱くなり、顔が赤くなるのを感じた。
「そ、そしたら……どうしよう……」
えとが言葉に詰まっていると、今度はうりが二人の会話に加わってきた。
「えとさんも、恋の悩み?」
「うり!?」
二人は驚いてうりを見た。うりは面白そうに笑っている。
「俺、さっきゆあんと話してたんだ。ゆあんも、意外と悩んでるみたいだよ?」
「ゆ、ゆあんくんが!?」
えとは信じられないといった表情でのあとうりを見た。
「うん。なんか、関係壊れるのが怖い、みたいなこと言ってた。でも俺、思ったんだよ。両思いなのに、お互い片思いだと思ってるって、一番もったいないんじゃない?」
うりの言葉に、のあとえとはハッとした。
「もったいない……」
えとは、うりの言葉を心の中で反芻した。確かに、もし本当に両思いだったら、このまま何もしないのは、あまりにも勿体ないことだ。
「えとさん、今だよ。勇気を出すのは」
のあが、えとの背中をそっと押した。
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