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「 黄金川くんっ! 」
低い位置から明るい声が聞こえる。
「 おはよっ!おーい!!聞こえてる? 」
『 あっ!はざす!! 』
「 返事しないから無視してるのかと思ったじゃん! 」
むすっとした表情で俺の事を見つめる。
彼は作並浩輔。
同じバレー部の同学年、リベロ。
年は同じだが、頭の良さも、バレーの技術も彼の方が上だ。
だからなのか、同学年なのに敬語が混じってしまう。
『 ゴメン、眠くてボーッとしてた! 』
サラッと嘘をつく。本当は昨日の事考えてたのに。
「 …本当に? 」
そんな嘘も彼にはバレバレで、いや、バレてなくても揺さぶりをかけてくる。
本当にそうなの? と、分かっていてもいなくても。
それに引っかかって
『 ウソ! 昨日の事、考えてた… 』
サラッと、本当の事を言ってしまう。
「 昨日の事…?ああ、あれね。 」
さっきまでにこにこと話しかけてきていた彼の表情が一気に暗くなる。
そんな彼に少し怯えてしまう自分がいた。
『 さっ、さくなみくん…? 』
「 ん?なーに? 」
『 あっ、いや、どうしたのかなって、 』
「 どうもしてないよ。 」
絶対何も無い人の表情ではなかった。
「 ねえ。今日の夜、空いてるよね。 」
『 えっ…と、今日は親いるから、どっか行くかも… 』
言い切る前に、胸元に違和感。
彼は俺の胸ぐらを掴んで言い放つ。
「 予定、ないでしょ? 」
彼の目を見て、声を聞いて、俺の胸ぐらを掴む手の力を感じて、
『 なっ、ない、ですっ、 』
言ってしまった。
予定入ったらどうしよう。
友達との予定?
夜遅くに?
コンビニに行く?
ついでに行けばいいよね?
考えすぎてゴチャゴチャだ。
頭が痛くなってくる。
「 朝練、遅れちゃうね。 」
『 う、うす、 』
そう言って手を引っ張る。
先程までの力はなかった。