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コユキの問い掛けに勇気凛凛で自信満々に答えたのは、中二病な破壊神、シヴァであった。
「コユキ様が出るまでも無い! ここはこのシヴァに任せてくれれば良い! なんだったら先に進んでもらっても結構! なあにすぐに追いつく故、どうぞどうぞ、ここより先に進んでもらって大丈夫なのである!」
ああ、また出た、このくだり、フラグを立てよう立てようトラップを踏もう踏もうとしている感じが否めない、恐れ知らずの馬鹿が言う言葉であった。
「流石(さすが)に置いては行けないわよ、それに何も一人で戦う事無いじゃないの、皆で力を合わせれば良いじゃない、さっきみたいに」
「なるほど、確かにそうでしょうがこの程度の小物、このシヴァめにお譲り下さい、先に行くのがフラグっぽいならどうぞ距離を取ってご覧ください」
ニヤリと笑って返すシヴァ、いつの間にかフラグを理解していたのみならず、適時に使いこなし周囲やコユキをドキドキさせてしまうとは、常にこちらの認識を超越してくる辺り、流石に『破壊神』である。
「で、でも――――」
シヴァに向けて手を伸ばし、さらに言い縋ろう(すがろう)とするコユキの肩を善悪がつついて言葉と動きを止めさせた。
「何よ善悪?」
善悪は周囲に聞こえない様に小さな声で耳打ちをした。
「モラクスとラマシュトゥ、アヴァドンが魔力切れ直前でござる」
「え……」
驚いて三人の姿を確認すると、一見平気そうな風情で佇んでいる様であったが、注意深く観察してみるとモラクスの顔色が今一つ優れなかったり、ラマシュトゥの息遣いが荒くなっていたり、アヴァドンの膝がガクンガクン大笑いしていたりと、結構辛そうである事に気が付くのであった。
そして、本人たちも気が付いていないだろうが、善悪とアスタロトの二人から少しづつ聖魔力と魔力が供給されている事も……
善悪とアスタロトはコユキに向けて、同時に目を瞑って(つむって)見せる。
ここの所ちょいちょい聞かされる悪魔のプライドってやつだろう、コユキは気が付かなかった自分を恥じていたが、すぐさま切り替えて自らも魔力供給に参加する事に決めるのであった。
しかし、やり方が分からなかった為、既存のスキルの中から一番近いと思う技を最小威力で起動する。
「『聖魔飛刃(ファルシオン)』」
シュバッ! ザクッ!
「ギャ――――っ!」
「あ、あれ?」
「ア、アヴァドン! クッ、『再生雨(エピストロフ)』」
「コユキ様! 一体何のつもりです!」
その身に大きな裂傷を受けたアヴァドンは倒れ込み、すんでの所でラマシュトゥの回復スキルが彼の命を繋ぐ。
二人の力が更に削られてしまった。
居た堪れ(いたたまれ)なくなってしまったコユキは、モラクスの非難の声に答えたのであった、天邪鬼(あまのじゃく)に……
「なんかボーっとしてたから気合を入れてあげただけじゃないの! は? なんか悪いの? まさか文句でもあるのかしら?」
「い、いえ……」
善悪は思うのであった。
――――こりゃあ、嫌われるのも当然でござる
と。
思ったままでラマシュトゥに近づいて行った善悪はさも申し訳なさそうに声を掛けた。
「ラマシュトゥ、なんかここの魔力を吸収しすぎて食傷気味(しょくしょうぎみ)なのでござるよ、申し訳ないでござるが少し貰ってくれまいか?」
「え、は、はい?」
ラマシュトゥは両手を膝について苦しそうにしていたが、善悪の発言の意味が理解できずにハテナを浮かべたまま取り敢えず返事をした。
「良かった、助かるのでござる」
善悪はラマシュトゥの小さな背中に手をつくと、聞き覚えの無いスキルを口にした。
「魔力リバース」
瞬間、魔力切れ寸前だったラマシュトゥの体内に魔力が流れ込み、燃料ゲージ(イメージ)が一気にマックスを指したのである。
このスキルはトシ子とアスタロトにしごかれた善悪が手に入れた元気な玉のパクリ、いや類似スキルの魔力チャージをたった一人で改良した物であった。
発想のきっかけは、
『オラの作った元〇玉、オメエが撃つんだ、クリリ〇オメエなら出来る! 』
的なセリフから思いついたらしい、流石は善悪、オリジナリティに溢れている。
兎も角、自分が取り込んだ周囲の魔力や生命力を、自分の聖魔力とは混ぜずに隔離し、触れた相手に譲渡するという聞いた事も無いスキルなのであった。
思いがけず魔力を共有されたラマシュトゥは元々大きな双眸(そうぼう)を限界まで見開いて呆然(ぼうぜん)としながら口にしたのである。
「ま、マラナ、タ…… ありがとう、ございます……」
善悪は彼女に振り向く事なく困ったような表情を浮かべつつ言葉を続けるのであった。
「重ね重ねで申し訳ないのでござる~、まだまだ魔力過多みたいだから、モラクスとアヴァドンにも協力して欲しいのでござるぅ、ゴメンね、本当にゴメン! でござるよぉ」
言いつつそれぞれの背に触れて魔力を補充していった善悪、元気を取り戻したアヴァドンが思わず叫ぶのである。
「おお、力が、魔力が漲る(みなぎる)! これなら、これなら吾輩もシヴァ兄上と共に、あの骨と戦える――――」
その叫びを遮ったのは魔神アスタロトであった。
「止めておけっ! 今は与えられた魔力を自分の回路へと流し続け馴染ませることに集中するのだ、活躍の場所はまだまだ先にある、判るだろう? さあ、シヴァの戦いを見守るとしようでは無いか! どうやら本気を出す様だぞ? 」
「……はい、頑張れシヴァ兄上っ! 」