jmside
本当に飲みすぎていたらしく、
吐き気と頭痛で、足元が覚束なくなってふらふらしてしまって、
いつのまにかすぐ近くにあった公園のベンチで、へたり混んでいた。
夜の寒い中、
チカチカと点滅する蛍光灯の光を眺めて、ひとりぼっちでぼうっとしていると、
今日あった嫌なことがどんどん頭に思い浮かんでくる
もちろん全部辛かったけど、
なによりも、さっきのバーでの出来事。
柄でもなくあんな怒鳴ってしまって、
お気に入りのバーも、もう通いにくくなったし、
親友だと思ってたテヒョンとも、会いたくなくなった。
5年ぶりに会ったグクには、
酒に酔ってべろべろで、店の中で大声を出すなんて言う悪態を見せてしまう
自分のあまりに散々な一日に、
苦笑いが漏れると同時に、
涙がぽろりと零れた
🐣「もう、、やだ、、、、泣」
誰もいないことをいいことに、
目を閉じて、こてんとベンチに横になってしまう
でもそうしたところで、
仮にも社長の身分で、
何が悲しくてこんな寒いとこでひとりぼっちなんだと余計に悲しくなった
いつの間にか雪がしとしとと舞い降りてきていて、頬に感じるその冷たさに、
無意識に、グクの温かい笑顔が思い出され、
恋しくなってしまう。
まだグクのこと、全然忘れられてなかったんだな、、
僕、ずっと無理してただけだったんだな、、
目を閉じたまま、胸がきゅっと痛み、
そんな自分に呆れた
今、この寒空の下で、
少し落ち着いて考えてみれば、
久しぶりに会った親友が、
会いづらくなっていた大事な人と引き合わせてくれた、
ただそれだけの事だった。
もういい歳した大人なんだから、
いくら気まずい関係とはいえ、久しぶり、
と挨拶して、他愛ない話をすることくらいの対応はしても良かったはず。
それなのにそれが出来ないのは、
自分がまだ未熟で、彼のことを忘れられていないからに他ならない。
自分から別れを告げたくせに、5年経っても執着し続け、動揺してしまった自分に情けなさしか感じなかった。
僕とグクは、大学のサークルで出会った仲。
初めて会ったのは、新入生歓迎会で、たまたま隣に座ったっていう、よくあるシチュエーションだった。
僕はその時3回生で、
彼は新入生。
初めは可愛い二個下の後輩でしかなかったけれど、
さり気ない小さな、価値観とか好みが似ていて、どんな話題でも話が合ったり、
定期的に危なかっしい行動を起こす僕を、全力で引っ張って抑えてくれたり、
酔い潰れると、背負って家まで送り届けてくれたり、
すぐ泣いてしまう僕を全身で受け止めてくれたり、、
そんな、グクが持っていた、優しさとか温かい包容力に惹かれてしまうまでに、そう時間はかからなかった。
自分が同性愛者だと言うのは、前々から自覚していてコンプレックスだったが、
これほどまでに好きになってしまったのは初めてで、
でも、
イケメンで、高身長で、友達も多く、女子にもモテていて、、
自分と同じとはとても思えないグクを、巻き込みたくはないと、
自分の気持ちを必死で抑えていた。
それなのに、
彼と出会ってから、
9ヶ月くらいが経った冬休みのこと。
あの日のことはよく覚えている。
電車が止まるほどの大雪の中、
なぜかグクは1人、
泣きそうな顔で、僕の住むアパートの前に立ち尽くしていた。
そんな、ぐっしょりと雪でずぶ濡れになったグクを、バイトから帰ってきて見つけた僕は、
慌てて彼を家の中に引き入れ、
冷えきった体をお湯で絞ったタオルで拭いて、セーターに着替えさせた。
すると、
そこまでされるがままになっていたグクに、
急に腕の中に引き寄せ、ぎゅっと抱きしめられたのだ。
その必死で僕を求めるような抱擁の強さに、思わず動揺してしまった瞬間、
僕は同性愛者なんです。
ずっと隠してきたのに、あなたと出会ってしまってから、毎日あなたが好きすぎて苦しい。
僕と付き合って欲しい、誰よりも、どんな物よりも、大事にするから。
そうやって告白された。
結局、なにがきっかけだったのかは今でも分からないけれど、
願ってもない、その嬉しすぎる告白に、
僕は断るはずもなく、その日はそのまま、
今まですれ違っていた愛を確かめ合うように
キスをし、体を重ねた
それを境に、ただの友人から、恋人同士になった僕らは、
偏見の目を無視して、
2人だけにしか分からない、幸せな日を過ごし始める。
色んなところに2人でデートに行ったし、
大学でもずっとくっついて離れなかった。
恋愛関係であることは隠して、
男同士だと言えば、親の理解も得やすかったのもあって、
付き合ってすぐに同居もした。
でも、
そんな夢のような日々が続いたのも、
たった3年きり。
それは、グクが大学を卒業する年のことだった。
原因は、
グクの芸能活動。
彼は、僕と付き合って1年半が経ったくらいに事務所に入った。
もちろん初めは、彼がスカウトされたことに
僕も大賛成で、1番に応援していた。
無条件に賛成できていた理由には、
芸能人、という立場なら、女の子との関わりも慎重になるだろうから、
余計に僕のことだけ見ててもらえるかなって思うのもあったし、
その頃に、テヒョンもその事務所に入っていて、この親友がいれば、
大事な恋人を、何かあったとしても、きっと守ってくれるだろうって安心できたことが大きかった。
顔も性格も良くて、努力家の彼は、
すぐに事務所のお偉いさんのお気に入りになり、色んな晴れ舞台を用意されて、
彼の人気は留まることを知らなかった
それを見ながら僕も、
こんな素晴らしい彼の恋人でいられることが誇らしくて仕方なかった。
でももちろん、
有名になればなるほど、グクを周りで監視する目は増える。
ある時何故か、
僕らが同居していて、
それはただの友達同士なのではなく、付き合っているのだということ、
彼が同性愛者であることが、公に出回った。
たちまち膨れ上がるように、SNSでの誹謗中傷が過激化し、
グクの身にも何度も危険が及んだ。
僕はそれを見ていることしかできず、
辛くて、あの頃は毎日、
もう終わりなのかとグクに隠れて泣いていた。
でもいつでもグクは僕が好きだと言って、
酷い目にあったことはなにも相談してこなかったし、
ひたすら僕を愛し続け、心配してくれた。
それはグクの優しさで、
僕はそれに感謝するべきだった。
どこがどう拗れたか、
明らかに僕のせいなのになにも言ってこないグクに、
僕の中で次第にいらだちが募ってしまった。
そして、グクと付き合ってちょうど3年が過ぎた記念日のこと。
ついに、
グクに対して殺害予告が出た
それでも
それでも彼は、僕の前で笑った。
僕が1番大好きだと言った。
来年も、再来年も、こうやって記念日を迎えたいって
優しく僕を抱きしめた。
そんな彼の曇りのない、純粋な、愛らしい笑顔を見ながら、
彼の腕に抱きしめられながら、
あの日、僕は静かに悟った。
この子の人生を邪魔しているのは僕なんだと。
彼には輝かしい人生が約束されていて、
僕はその中に居てはならない存在なのだと。
彼のたった一つの間違いが、自分なんだと。
だから僕は、その日から程なくして、
自分から、彼の元を離れたんだ。
“グクはもっと有名にならなきゃいけない。”
“そしていつか、僕ではない誰か、大切な人と幸せにならなきゃいけない。”
“だから僕はもう、グクとは二度と会わない”
と、
グクの溢れる涙を無視して
そう言い捨てて、
苦しさで引き裂かれそうな心を
必死で耐えながら、
3年もの間一緒に住んでいた、
彼の家を去った。
僕の初めての幸せな恋は、
こんな風に、
あまりにも呆気なく、
周りの偏見によって打ち砕かれたのだった。
公開話数100話突破🎉
コメント
15件
わぁぁぁぁぁ😭😭 涙が出てきた🥺🥺 主さんのストーリー神作過ぎます! 100話おめでとうございます!! 主さん凄いですね😳😳🥰🥰 もう主さん推しにする! これからも頑張ってください\(*⌒0⌒)♪
.˚‧º·(ฅдฅ。)‧º·˚..˚‧º·(ฅдฅ。)‧º·˚.中ですが、まずは💜㊗️✨100話✨おめでとうございます🎊🎉💜どの作品も素敵過ぎて、感謝しかないです🌹ホントにありがとうございます(ღ*ˇ ˇ*)♡。🐰🐣の過去、辛すぎるけど、その覚悟と別れのお陰で今があるんだよね、、うわぁ〜ん待てないよぉー˚‧º·(ฅдฅ。)‧º·˚.