あれは街が浮かれ出す季節…。
この世界にはない憎き文化、クリスマスの日だった。
ベットで平日の疲れを癒やしてた休日の朝のことだ。
テテロン、テテロン、テテロン
それまで静かだった部屋に着信音が響き渡る。
俺は半分回っていない頭でそれが着信であることを知り、
その電話の主が部長であることに気づくと応答ボタンを押した
「はい……ヤマザキです…」
「おい、お前今どこだ?」
「家ですけど…なにか…」
「馬鹿野郎!お前!」
「今日は出勤の日だ!」
「え、だって今日休日で…」
「も、もしかして…休日出勤ですか?」
「そうだよ、なんでシフト表見てないんだ?」
「すいません…でも先週見たときは確かに休みで…」
「は〜」
「山崎君」
「はい…」
「このご時世、仕事があるというだけで恵まれたことなんだよ?」
「工場の稼働状況によっては急遽人手が足りなくなることもある」
「そういうことも考慮して毎日シフト表の確認をするのが」
「社会人として最低限の努めだと思わないか?」
「そうですね…」
「やけに不満げじゃないか」
「君は会社に文句があるのかね?」
「い、いえ…」
「まあこうして君と話してる時間ももったいない」
「12時までに工場に来てくれ…」
「え、12時ってあと…」
「12時までに工場に来てくれ」
部長の念を押すような声ははい以外の回答を言わせなかった。
「はい…」
ガチャ!!
工場からかけていたのだろうか、
受話器を叩きつける音で電話が切れる。
「マジか…」
「今日休日出勤とか知らないし…それに…」
俺はスマホのロック画面に映る日付に目を向ける
「クリスマス…か…。」
「そりゃね!俺は独り身ですよ!!31にもなって彼女の1人もいない哀れな生き物ですよ!」
「わかってる!どうせ出勤しなかったところで1人で過ごすよ?」
「でもさ…でも、せめてフライドチキンを買って…コーラ買ってのんびりする…」
「そのくらいしてもいいじゃん!許してくれよ神様!なあ!」
「1人だけ誕生日で幸せになりやがって…。」
一通り誰もいない部屋で叫んだので、俺は工場に向かうことにした。
ブロロロロロ
特に使いみちのない金で買った車で工場まで向かう。
30分ほどの通勤路だが、少し山に差し掛かったところで
俺はミスをしてしまったんだ。
「マジ急がないとな…」
その時道路の真ん中に影が見えた。
「え!?人!?」
そう思いハンドルを右に切った瞬間、
車はガードレールを突破し崖を落ち始めていた。
そして…
人生でうけたことのない強い衝撃。
薄れゆく意識の中で…
こんな人生、やり直したい…
と思ったんだ…。
そしたら…
コメント
1件
普段小説読まないけど、これは読みやすかったです😳