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うるさいくらいドクドクと波打つ心臓の音
薄気味悪いリノリウムの床
無機質な天井は惨めな僕を笑っているように感じる。
頬をつねってみるが、ジンジンとした痛みと共に今の光景が現実である事を痛感させられる。
僕は今病院にいる。
そして目の前には、冷たくなった母がいる
出張先で車に轢かれたとの事らしい。
相手の車は逃走、今も行方は分かっておらず警察が捜査に当たっているとの事。
母の状態は見るに堪えないほど悲惨だった。
そんな状態の母を見ても僕は泣くことが出来なかった。
と言うより泣いてしまったらいけない気がした。
理由は分からないし、これからも分かることは無いだろう。
ガチャ
はっとして振り返ると、そこには警官が1人立っていた。
「今少しお時間よろしいですか?」
「はい、大丈夫です。」
警官が僕の横に腰掛ける。
「何か分かりましたか?」
警官は、ただ黙って母の遺体を見つめていた。
この様子から何も進展が無い事が分かった。
「そうですが…」
「…そういえば、現場に黒い薔薇が落ちてました」
「黒い薔薇…ですか?」
「ええ、少し形が歪だった事を除けば普通の薔薇でしたね」
「分かりました…ありがとうございます」
「引き続き頑張って下さい」
「今更ですが…お悔やみ申し上げます」
そういうと、警官はお礼をして去っていった
「僕もそろそろ帰るか」
立ち上がろうとしたが、足に力が入らない。
まるでここから離れたくないと言わんばかりに全く動かない。
僕だってこのまま、ここで現実を受け入れられないまま死にたい。
それでも、現実を受け入れないといけない。
嫌な現実を受け止め、進まないといけない。
思い切り足を離し、逃げるように病室を出た。
自分の荒い息遣い、リノリウムの床を歩く度コツコツとなる小気味よいリズム、周りの人達、全てが僕の事を嘲笑っているようだった。
自意識過剰ということは嫌な程分かっている。
でも、そう思わずには居られない。
親を2人失った高校生の精神状況が良くない事なんて誰が見ても明らかだ。
何故母は出張の事を僕に言わなかったのか
何故母のそばに黒い薔薇があったのか
どれだけ悩んでも意味のない事が頭の中でトグロの様に渦巻いている。
こんな事を考えていても答えがすぐに出る訳では無い。
「早く帰って寝よう」
僕は早足で病院を出た。
早くこの事件の真相が暴かれる事を望みながら