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📖 第十七章:「熱と距離」
夕方。
○○は凛の家へ向かう途中、足を止めた。
目の前には、明かりのついたコンビニ。
○○:(……このまま行くの、ちょっと)
少し迷ってから、中に入る。
温かい空気。
並ぶ商品。
○○は店内をゆっくり見て回る。
○○:(風邪……だよね)
ドリンクコーナーで立ち止まる。
スポーツドリンク。
ゼリー飲料。
のど飴。
それから――
○○:(……これ)
肉まん。
少しだけ考えて、ひとつ頼む。
○○:(……食べれるかな)
袋を受け取って、小さく息を吐く。
○○:(……よし)
――凛の家の前。
インターホンを押す手が、少し震える。
ピンポーン。
少しの沈黙。
足音。
ゆっくり、ドアが開く。
凛:「……誰」
少しかすれた声。
ドアの向こうにいたのは、いつもと全然違う凛。
髪は少し乱れていて、目も少しぼんやりしている。
○○:「……あ」
言葉が詰まる。
○○:「……プリント、届けに来た」
凛は一瞬きょとんとして、
凛:「……お前……」
少しだけ目を細める。
凛:「……なんで」
○○:「……先生に頼まれて」
凛はドアにもたれかかる。
凛:「……そっか」
声が弱い。
いつものぶっきらぼうさが、ほとんどない。
○○:「……大丈夫?」
凛:「……まあ」
全然大丈夫そうじゃない。
ふらっとよろける。
○○:「……っ」
思わず一歩近づく。
○○:「入ってもいい?」
凛は少しだけ考えるみたいに間をあけて、
凛:「……好きにすれば」
そのまま背を向けて、ゆっくり中へ歩いていく。
――部屋の中。
静か。
人の気配が、ほとんどない。
○○:「……一人?」
凛:「……ん」
ソファに座る凛。
少しだけ息が荒い。
凛:「……親、仕事」
○○:「……そっか」
○○は袋を差し出す。
○○:「……これ」
凛:「……なに」
○○:「……ちょっと買ってきた」
凛は袋をのぞく。
凛:「……肉まん?」
○○:「……食べれるかなって」
少しの沈黙。
凛はぼんやりした顔で○○を見る。
凛:「……優しすぎ」
小さく、そんなことを言う。
○○:「……別に」
目を逸らす。
凛は少しだけ笑うみたいに息を吐く。
凛:「……ありがと」
その一言が、やけに柔らかい。
○○の胸が、少しだけ熱くなる。
○○:「……薬、飲んだ?」
凛:「……飲んだ」
○○:「……ちゃんと?」
凛:「……たぶん」
頼りない返事。
○○は少しだけ近づく。
○○:「……ほんとに?」
凛は目を細める。
凛:「……うるせ」
でも声が弱い。
少しだけ、いつもより距離が近い。
凛:「……なんか」
○○:「……?」
凛:「……ふらふらする」
そう言って、少し体が傾く。
○○:「……っ」
反射的に支える。
距離が、一気に近くなる。
凛の体温が、はっきり伝わる。
○○:(……熱い)
凛はそのまま、少しだけ寄りかかる。
凛:「……悪い」
でも、離れない。
○○:「……いいよ」
心臓がうるさい。
凛の呼吸が、近い。
凛:「……冷た」
ぽつり。
○○:「……え」
凛:「……お前」
ぼんやりしたまま、そんなことを言う。
顔が一気に熱くなる。
○○:「……なに言ってるの」
凛:「……わかんね」
少しだけ、笑う。
いつもより、ずっと無防備。
凛:「……ちょっとだけ」
○○:「……?」
凛:「……このまま、いい?」
ほとんど甘えるみたいな声。
○○は一瞬固まる。
でも、
○○:「……うん」
小さく頷く。
凛はそのまま、少しだけ力を抜く。
○○の肩に、体重がかかる。
静かな部屋。
時計の音だけが響く。
○○:(……近い)
でも、嫌じゃない。
むしろ――
○○:(……もっと)
そう思ってしまう自分に、少しだけ驚く。
凛:「……なあ」
○○:「……なに?」
凛は目を閉じたまま、
凛:「……昨日の」
心臓が止まりそうになる。
凛:「……ちゃんと、考えてる」
小さな声。
○○は何も言えない。
凛:「……だから」
少しだけ間。
凛:「……逃げんなよ」
昨日と同じ言葉。
でも、今はもっと近い。
もっと、弱い声。
○○:「……逃げないよ」
凛:「……なら、いい」
それだけ言って、
少しだけ体を預ける。
呼吸が、少し落ち着いていく。
○○は動けないまま――
ただ、その体温を感じていた。
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ファーまって、三途の川がはっきりと…
201