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床に転がった小さな鍵を、誰も拾おうとはしなかった。 ――「1人分」
みんな、誰が生き残るのか…ーー
🇰🇵「ひとり……」
北朝鮮が青ざめた顔で呟いた。
🇰🇵「じゃあ……俺たちの中の、誰かひとりしか外に出られないってことかよ」
中国が腕を組み、冷ややかな声で答える。
🇨🇳「そういうことアル。……最初から“仲良く全員で帰れる”なんて、あり得なかった」
🇰🇵「ちょっと待ってください!」
北朝鮮は思わず声を荒げる。
🇰🇵「そんなの……誰を見捨てろって言うんだ!?」
🇫🇷「見捨てるんじゃなくて、選ぶんだろうさ」
フランスが不気味に微笑んだ。
🇫🇷「誰が“残るか”って話だよ」
その軽口が、さらに場を凍らせる。
ロシアがじっとフランスを睨みつけた。
🇷🇺「……笑いごとか?」
🇫🇷「違うよ」
フランスは肩をすくめる。
🇫🇷「ただ……おかしいでしょ? 全員で出口を探してるのに、鍵は“ひとり分”しかない。つまり、マスターは最初から僕らに“選ばせる”つもりなんだよ」
その言葉をきっかけに、誰もが口をつぐむ。
言い争いはしたくない。だが、避けられない。
***
イギリスがゆっくりと前に出て、鍵を拾い上げた。
金属の冷たさが手に伝わる。
🇬🇧「……まずは冷静になりましょう」
彼の声は低く落ち着いていた。
🇬🇧「マスターの狙いは、我々を互いに疑心暗鬼に陥れること。ここで喧嘩をすれば、思う壺です」
🇰🇵「けどよ……!」
北朝鮮がなおも反論しようとする。だが中国が肩に手を置いた。
🇨🇳「落ち着け。……ブリカスの言う通り、今は情報が足りないアル」
重苦しい空気の中、フランスだけが静かに笑っていた。
その視線は、イギリスの手の中の鍵に釘付けになっている。
🇫🇷「……イギリス、君が持つんだ?」
🇬🇧「ええ。預かるだけです」
イギリスは答えながらも、一瞬だけフランスの目を見返した。
***
探索を続ける一同。
だが会話は減り、足音だけが白い廊下に響く。
🇰🇵「なぁ……」
唐突に、北朝鮮が不安げに呟いた。
🇰🇵「もし……本当にひとりしか出られないってなったら、お前ら……どうするんだ?」
ロシアが短く答えた。
🇷🇺「俺は……守りたい奴がいる」
その視線の先に、北朝鮮自身がいることを、誰もが察した。
🇷🇺「俺は別に構わない」
ロシアの声は低く、だが確かな響きを持っていた。
🇷🇺「俺が残るから、それでいい」
その言葉に、北朝鮮は目を見開いた。
しかし中国は、何も答えずに前を向いたままだった。
***
――その様子を、ほんの少し離れた場所から眺めていたイギリス。
唇がわずかに開き、一瞬だけ歪む。
(本当は…どうなんでしょうね)
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