肩を震わせ、縮こまっている小さな背中が見えた。
そっとその背中に手を添えると伝わってくるのは手前の冷たい体温で、何があった?と聞いても首をふるばかり。話してほしい、教えてほしい。何が手前を苦しませて、いたぶって、傷つけているのかが知りた。
優しく肩を撫でると手前は俺の手を振り払った。
そして恨みと憎しみを孕んだ目で俺の濁りがなく清らかな目を睨んだ
長いまつげを揺らしながら手前がまぶたを落とすとつぅーと静かに音を立ててコンクリートの床に落ちる
「ほっといて」
その言葉に、どれだけの皮肉と訴えが込められていたか俺には到底計り知れないが、俺が太宰の涙を拭い、優しく口をふさいで抱擁する権利と資格はないのだと痛いほど判った。
俺は太宰に背を向け、帽子を少し深く被りコツコツと足音を立ててその場から離れる。太宰の嗚咽の声も段々と小さくなり、次第に聞こえなくなった