「……ん!!!rん!!!!!」
_その声と同時に目を覚ました。
 「ピッ…ピッ…」という音が繰り返し鳴っている。
 
 
 
 …に…ちゃん…?
 …なんでいるの?
 
 目の前には、今まで見たこともない兄ちゃんの顔があった。
その顔は今にも泣きそうで、焦っている。そしてどこか愛おしい。
 
 眉間にシワを寄せてこんな必死な表情をするなんて、兄ちゃんらしくないな…と思いつつ、俺は今の状況がまだ飲み込めていない。
 
 だから、今の状況を少し整理してみる。
 
 今俺はふかふかなベットの上にいて、周りを見る限り白色が多い。
 腕には包帯が巻かれている。
 俺から見て、この部屋の右角にはインテリアとして小さな木が置いてあって
すぐ左側には窓がある。その近くの橙色の椅子に、母さんと父さんが座っている。
 母さんは下を向いたまま哀哭していた。
父さんは母さんの背中をさすっている。
 
 __なんとなく分かってきた。
 ここは病室だ…。
 
 
 
 あれ、今兄ちゃんに見てもらえてる…?
 
 
 「…ぁえ、」
 母さんと父さんが俺の声に視線を向ける。
 
 「、?…なんで…?」
 「…おれ……」
 
 出しづらい声を無理矢理押して、途切れ途切れな単語で言葉を紡ぐ。
 
 その瞬間、俺の頬に刺激が走った。
 
 え___?
 
 俺がきょとんとしている間に兄ちゃんは喋り出す。
 
 「…バカ”ぁ……なん”でッ……ヒグッ」
 「…し”の”ぅ”と”ッ…す”んだよッ」
 「バカ…ッ」
 
 
 兄ちゃんが泣いてる…?
 初めてだ。こんな兄ちゃん…知らない
 初めて見る感情。そして見てもらえたという何よりの嬉しさに口角が上がった。
 
 
 _でもまだ、だめ。
 演じろ。
 
 
 
 
 
 「あれぇ…俺死ななかったんだ…!」
 「運つかっちゃったぁっ…」
 
 
 そうだ…この感覚だ。自分の外側にもうひとりの”おれ”をつくる感覚。思い出してきた。
 
 兄ちゃんが顔を上げる。
目を見開いて__驚いている顔だ。
 
 
 「兄ちゃん…ごめんね?」
 「心配かけちゃった?へへ」
 「俺は大丈夫だから!泣かないでぇー😢…?」
 
 笑って…
 
 
 「凛?お前…誰だよ…」
 
 
 
 
 
 
 ………………え?
 予想外の言葉に俺は焦った。
なんて応えよう。
 
 「な、に言ってるのぉ?にーちゃん。」
 「にぃちゃんの弟だよ…」
 
 あれ、、ちゃんと笑えてるかな…
 
 母さんはまだ、泣いている。
 「冴…凛は、きっと今起きたばっかりで頭が混乱しているんだ。」
 「そっとしてあげなさい…」
 
 __父さん?
 
 「俺と母さんは外に出るから…しっかりと凛の面倒を見てあげるんだぞ、冴。」
 
 
 
 ガラガラ。バタン。という音が響く。
両親は病室から出て行った。
 この病室には、完全に俺と兄ちゃんだけになった。
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続きぷりーずч(゜д゜ч)