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ぷりん
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はる☻
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#💤
い ず み
326
えぬつ
100
冷えた空気が肌を刺すような、どこか季節の感覚すら曖昧になる部屋。
カーテンの隙間から漏れる微かな光だけが、ここが昼であることを辛うじて教えていた。
ベッドの縁に腰掛けた俺は、自分の胸元に手を当てる。
トクン、トクンと、心臓は確かに動いている。
なのに、どうしてこんなにも息苦しいんだろう。
肺の奥がカラカラに乾いたみたいで、どれだけ吸い込んでも酸素が身体に行き渡らない気がする。
「 ……っ、あれ…… 」
喉から掠れた声が零れた。
呼吸の仕方が、わからない。
息をどう吸って、どう吐けばいいのか。
肺を動かすための正しい手順が、頭のなす術もなくスポーンと抜け落ちてしまっている。
ただパニックだけが膨れ上がり、視界がぐにゃりと歪んだ。
「 舜太 」
低くて、けれど酷く甘やかな声がした。
気付けば、いつの間に戻ってきたのか、柔太朗が俺の目の前に立っていた。
その整った顔には、冷たさなんて欠片もなく、ただ愛おしさを煮詰めたような蕩ける笑みが浮かんでいる。
柔太朗は俺の震える両手を優しく包み込み、自分の胸板へと引き寄せた。
「 ほら、ここに手を当てて。俺の心臓の音、聞こえる? 」
「 ……じゅう……っ 」
「 大丈夫だよ。俺はここにいる。どこにも行かないから 」
柔太朗の体温が、ゆっくりと俺に伝わってくる。
トクン、トクン。
一定の、落ち着いたリズム。
それが俺の狂いかけた鼓動に同調するように響いて、張り詰めていた恐怖が少しずつ溶けていく。
ああ、そうか。
俺は、この人の音に合わせて生きているんだ。
柔太朗が呼吸をしていれば俺も息ができるし、柔太朗がここにいなければ、俺の身体は動かす方法を忘れてしまう。
そんなの、人間としてどうかしようなんて、もうとうの昔に思わなくなっていた。
「 ……なぁ、ずっと、おらんようになったら、俺、どうなるん……? 」
震える声で尋ねると、柔太朗は愛おしそうに俺の額に自分のそれを重ねた。
ひんやりとした冷たさと、微かに香る甘い柔軟剤の匂い。
それが俺の全世界のすべてだった。
「 ならないよ。だって、俺が離さないもん 」
柔太朗の指先が、俺の濡れた目元をゆっくりと拭う。
その瞳に映る俺は、ひどく怯えていて、同時にこの男なしでは一歩も歩けない無力な生き物だった。
それが情けないはずなのに、心の底から安心してしまう自分がいる。
外の世界がどうなっているのか、もうどうでもよかった。
友達がどうしているか、仕事がどうなったかなんて、この部屋のドアの外の、遠い宇宙の出来事のようだ。
俺を縛る鎖なんて、最初からここにはなかった。
あるのはただ、柔太朗の視線と、その手から零れ落ちる拒絶できないほどの愛だけだ。
「 ……じゅうがおらんかったら、俺、ほんまにただの空っぽやわ…… 」
自嘲気味に呟いた俺の唇に、柔太朗がそっと自分のそれを重ねる。
それは酸素を分け与えるような、優しくて逃れられない口づけだった。
「 それでいいよ、舜太。俺だけを見て、俺だけに溺れていればいい。他には何もいらないから 」
甘い囁きが頭の芯を痺れさせる。
肺の奥に新しい空気が満ちていく。
柔太朗の匂いを含んだ空気が、俺を生かしている。
どうせもう、ここから抜け出す気力なんて残っていない。
このままこの男の狂気に絡め取られ、溶かされていくのが、今の俺にとって唯一の生きる意味だった。
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