コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「海(うみ)、今日の部活体験って行く?」
高校に入学してから三週間経ち、ドキドキワクワクな高校一年生たちは新たな生活にもずいぶんと慣れてきた。
例の葦くんともなんとなくつるむようになり、今では「海」と、下の名前で呼ばれるようになった。
ひとまず最初の一週間時点でボッチは回避できたことが嬉しい。よかった。
そして今週から始まったのが部活体験期間だ。
来週いっぱいまであり、元々決めていたので早くから部活に入るものや、帰宅部志望のもの、そしてなんとなーくどこかの部活には入ろうと思うけど体験に行くのも面倒くさいし諦めかけてる俺、一つのクラスにもこんないろんな奴がいる。
「せっかくだし行こうよ、漫研とか将棋部とかのゆるい文化系もあるみたいだしさ!」
「言っておくが僕は別にオタクじゃない。中学の時はバレー部だった。」
身長も低いしクッソ疲れる運動部にはもう入りたくはないが、なんとなく雰囲気から文化部だと思われたのが癪で言い返す。
ほ〜れ腕のこの筋肉を見てみろ、お前のようなモヤシノッポとは違うんだぞ〜
身長は高いが運動する人間ほど筋肉がついていない葦は、中学の頃は学内でサボり部と名高い科学部だったらしい。
「でも高校こそはしっかり部活やりたいな〜って…」とかなんとか言っているが、それなら尚更趣味とは違う文化部見に行ってどうする。
しょうがない、ここは俺が一肌脱いでやる。と机の奥で早速ひしゃげていた部活紹介のプリントに目を通す。
野球部、甲子園地域予選決勝経験アリ!
水泳部、県大会優勝!
セパタクロー部、セパタクロー
こういうのでよくセパタクローがネタにされるの多いな。いや、俺もどういった競技かは知らないんだけれども。
それにしても流石人気高なだけあってスポーツにもかなり力を入れているらしい。
運動部は無理だ、怠けの権化である俺には耐えられない。
文化部はどうだろう。
「あっ今日お菓子作りあるみたいだよ!行かない?」
提案されたのは家庭部、お菓子を作ってお茶したり希望者は手芸コンテストに出ます。
ちょうどいい緩さなのではないかこれは。行こう
「行こうぜ葦。」
「やったぁ!」
家庭部と聞くとどうも可愛らしい女の子が多いイメージではあるが、男子校から共学になったこの学校は女子数が少なく、家庭部の部長紹介にも短髪イケメンさんが写っていた。
四階まである校舎の四階、旧校舎の一番奥にある被服室が家庭部の活動場所だった。別にちゃんとした部室もあるらしいが、元々二つの部活を統合した際に増えた荷物が占拠しているらしく、主な活動場所はこの被覆室と調理室になるらしい。
「2人も来てくれて嬉しいよ。俺が家庭部の部長を務めている伊藤むじな。でこのゆるふわギャルが副部長。」
「ご紹介預かりましたギャルこと六野琴葉(むつのことは)で〜す。」
綺麗に整えてある爪でギャルピースをする六野さんはすぐ興味を失ったのか手元の携帯に戻った。
「琴葉は2年、俺が3年ですぐに部活を辞めちゃうことになるから次期部長はこいつな。」
短髪爽やかイケメンのむじな先輩はニカっと涙袋を見せて笑う。綺麗な二重だ。
「てか葦くん?って新入生代表でスピーチしてたコだよね?近くで見るとやっぱイケメンだわ。 」
スマホが一区切り付いたのか六野さんは髪の毛をいじりながら葦に近付く。
必然的にすぐ隣で棒立ちになっている俺にも近付くわけで、あっいい匂い!
甘い香りを纏った六野さんは葦をふむふむといった具合でじっくり眺め、妖しく笑う。
「前髪、ちょっと切ってもいいんじゃない?」
はらり、葦の前髪を払った六野さんはそのまま俺たちの後ろにある扉から「じゃあね〜」と帰って行った。
「距離感近くてごめんな……悪いやつではないから安心してくれ。」
固まっている俺たちにむじな先輩が「ゴメン!」のジェスチャーをしながら肩を叩く。
「あとは……まあその他諸々の部員たちだ。」
「ちょっとむじなパイセンヒドい!」
「オレのこと省略しないでよ!」
ブーイングがあったが、他の部員は今日は三人。
女子が1人と男子が2人と、やはり男率高めだ。
「じゃあ琴葉ちゃん帰っちゃったし、ごめんね〜」
そう言いながら1人の女子も帰って行った。男100%
「我が部の女子は基本2人以上いないと帰る習性なんだ。」
苦笑いしながらむじな先輩は言った。
その後は予定通り簡単なクッキーを作り、雑談しながらちょっとお茶してその日はお開きとなり、「また来ます」と言って帰路に着く。
電車で葦と別れても、六野さんのあの匂いが鼻から離れなかった。
ーーーーーーーーーーーーー
「引っ込み思案な僕に優しい…」みたいな先輩、欲しい〜〜〜〜〜という欲望で作ったキャラクターこと六野琴葉さんは、これからも私の欲の都合でたくさんイイ女枠で登場します。よろしくお願いします(???)