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💡がメカニックを始めたのは。捏造。特定の視点はありません。
ご本人様とは関係ありません。
『伊波ライは真面目な子だった。』
伊波の小さい時を知っている人間は恐らくみんなそう思っているだろう。伊波の親はかなり教育熱心で、一言で言えば厳しかった。小学生の時から毎日毎日勉強三昧で、友達と遊ぶ猶予なんて無かった。一人で遊ぶ事も許されてはいなかったが。しかし幸運な事に、友達には大変恵まれていた。それでも誰かの一番になるなんて事は出来ていなかったけれど。
一人で勉強以外にすることと言えば、機械いじりくらいだった。伊波がたくさん試みて唯一許された遊びとも言い難いもの。そうして遊んでいた伊波が楽しそうな顔をしていたかと言えば肯定はできない。勉強をしたくない、そんな気持ちが積もり積もって。それでもできることはなくて。地獄のような空間。
「ねぇ、母さん…」
「口を開くくらいなら勉強しなさい。前のテストだって社会100点取れなかったのに。反省してるの?してないわよね。」
「父さん、成績表」
「次もオール5、維持しろよ。」
「オレ頑張ったのに…褒めてくれないの…」
「うるせぇぞ!」
そう言って伊波の体を殴る、蹴る。
ああ、またか。伊波はこの自分への嫌味のマシンガントークにはもう慣れていた。母は甲高い声でヒステリックを起こし、父は伊波に対し手を上げる。痣だって沢山できて、大人になった今でも痕が残っている。そんな過酷な状況で育ってきた。普通の家庭に比べればかなり酷かっただろう。でもこれは他と何ら変わりないと思い込むようにして生きてきた。
そんな時の唯一の逃げ道であった機械いじり。ホントは好きじゃなかった。だから今、伊波は言うのだ。
「オレ、メカニック辞めたい」
「だからね、ホントにしたかったんじゃない」
「ホントは全然楽しくなくて。機械いじって逃げてただけで」
「もうこれに意味は無いから。だからもう…」
「違うだろ、今のお前は」
否、今の伊波には一緒に遊んでくれる仲間がいる。確かに昔は好きとはお世辞にも言えなかった。しかし今はどうだ。仕事としてメカニックをし、誰かに喜んでもらえることに喜びを感じている。
「たしかに、オレ本当は機械いじり大好きなのかも」
今度は、大きな笑顔で。