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若井が韓国語の勉強に行くから今日は僕1人で元貴の所に行くことになっていた。
少しだけ気が重いのは若井がいないからなのか、元貴と2人きりが少し気まずいからなのか···。
「だめだめ、そんなこと考えちゃ」
一駅歩いているとパン屋さんを見つけて元貴が好きそうなのと若井が好きそうなのをちゃんと選んでたくさん買って元貴の家に向かう。
きっと、喜んでくれる。
元貴も若井も。
きっと、うんまぁーい、って言ってりょうちゃんも一口食べてって嬉しそうな若井の顔が想像出来て1人でふふって笑ってしまう。
「元貴ー?お邪魔しまぁす」
寝てるといけないし、と預かっていた合鍵で入って机に突っ伏している元貴を見て起こさなくてよかったとブランケットをかけようとしたその時、目に入ったのは真っ白なテーブルに投げ出された白い腕と、広がる赤いものだった。
なに、これは···?
···血?
「元貴!元貴!?」
強く揺さぶると長い睫毛が揺れてゆっくり目が開いて、僕に焦点が合う。
「良かった···元貴、僕のことわかる?気持ち悪いとかない?」
「···りょうちゃん、うん、平気··· 」
血は少し乾いているし、出血は止まっていて、元貴は大丈夫そうだと少しほっとする。
お薬とかをまとめてある箱からガーゼを見つけ出してそっと押さえた。
元貴を支えてソファに移動してもらってテーブルを拭くと改めて実感したその量の多さに手が震える。
元貴はぼんやりとソファにもたれて静かにしていた。
元貴が元気になったなんて思い込んで僕は何を見てたんだろう。
もっと早くここに来てあげたらこんなことにはならなかったかもしれないのに···。
僕は元貴の隣に座って彼を抱きしめた。痛みが苦手な彼がまさか自分でこんなことするなんて思わなかった。
「ごめん···ひとりにして···」
「···独りは嫌だった」
「うん、うん。ひとりになんかしないから···」
「本当に?俺、りょうちゃんが友達とかメンバーとか、そんな関係なのが苦しいんだ···ちゃんと俺だけのものでいてほしい。そうすれば離れていくことはないよね?」
「離れないよ···けど···」
このままの関係は不安なの?
だめなの?
「好きなんだ」
「え···」
「寂しさからこんな事言ってるんじゃない。りょうちゃんのことが好き。だからこの先もずっと一緒にいてほしくてお願いしてる」
元貴は僕に抱きついたまま、はっきりとそう言った。
元貴の気持ちを聞いて嬉しくないわけじゃない。
でも···僕の気持ちは···?
その時、ぎゅっと服の胸元を掴む元貴の腕が目に入る。
そこは 少しだけ血が滲んでいた。
見つけた時の元貴がフラッシュバックする。本当に···もしかしたら、と思ったあの時の気持ちは思い出したくないほどのものだった。
深呼吸をする。
自分が決めたことを言葉にする為に。
「···元貴は僕と付き合いたいってことでいいの?その、恋人として···」
「そう、そうだよ···!」
「···わかった、付き合おう」
元貴が、望むなら。
それで貴方が幸せなら。
それでいいと思えたから。
「これからよろしくね···っていっても付き合うってどういう感じなのかわからないけど···」
「それはきっとこういう感じ」
目の前で元貴がにこっと幸せそうに微笑んだと思うと次の瞬間、唇に元貴の唇が触れて···キスしているんだと考える。
2.3回繰り返し軽く口付けられてさっきまで友達だった相手にこうされているのになんだか自然と受け入れてしまっていた。
「りょうちゃん···なんかあんまりびっくりしないんだね。もしかして慣れてる?···若井としてたりして」
「そんなわけないでしょ!···僕はそういう冗談は···嫌いだよ」
若井とキスなんてあるはずない。
でもなんでその名前を聞いただけでこんなにも動揺してしまうんだろう。
「わかった、ごめん。···若井には付き合ったことどうやって言う?」
「それは···僕が言う。あと、若井の前では今まで通りにしてほしい。気まずくなりたくないから。それに、もう自分を傷つけるのはやめて···」
「···いいよ」
元貴の嬉しそうな顔とは裏腹に僕は若井のことを思って心が苦しかった。
けどこれ以上元貴に傷が増えるのを見るのは自分が苦しいより、もっと苦しかった。
コメント
5件
り💛ちゃんの気持ちは♥️くんにはどう見えてるのか、気になりすぎます。嘘なのか、本心なのか。 でも優しい💛ちゃんだから、きっと嘘でないんだろうな🥺
うー⋯わ。優しさ故に茨の道を選んだ感じか。辛っ!辛すぎるわ⋯⋯