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~読む前に注意事項~
花吐き病のお話になります。
苦手な方はそっと閉じて下さい。
吐く花に関してあるくくりで纏めてるので、その花は大きさ的に吐けないだろう等の疑問は頭の中からポイッてしていただければ幸いです!!
ちょっとだけ、黒橙の要素あります。
それでは大丈夫な方はお進み下さい!!
紫side
「うぇっ…ごほっ…ごほっ…」
仕事から帰ってきてからずっとトイレから出れない。
吐き気が止まらず、便器の中には紫色の大量の花。
まさか自分が都市伝説じゃないかと言われている花吐き病になるとは思わなかった。
診察した医師もビックリして、過去にあまり症例が無いからと慌てていた。
花吐き病は「嘔吐中枢花被性疾患」といって、片思いを拗らせるとなってしまう病気だ。
症状は文字通り花を吐く。吐く花は人によってそれぞれらしい。
根本的な治療方法はなく自分が思いをよせている相手と両思いになれば完治する。
両思いにならなければ死を待つだけ。
俺の場合、片思いの相手はめめだが、めめは康二と付き合い始めた。
もう叶わない恋をしてしまった俺には死を待つという選択肢しか残されてない。
幸い、この片想いもこの病気もまだ誰にも知られてはいない。
隠し通さなきゃ。
まだ命が尽きるまでに時間はある。
その時がくるまでに色々とやっておかなきゃ、俺が居なくなっても皆が困らないように。
「でなぁ~めめがぁ~」
撮影スタジオから戻り、楽屋に入ろうとしたら、康二の楽しそうな声がきこえてくる。
どうやら、めめとのことを惚気けてるようだ。
「だから、やめろって」
めめの声もする。やめろって言いながらもまんざらでもない言い方。
ずっと好きだから解る。
今、楽屋に入りたくないなぁ…
「うっ…っ…」
吐き気がする。
このままじゃ花を吐いてしまう。
見られるわけにはいかないので、急いでトイレへ向かった。
「うぇ…ごほっ…ごほっ…はあっはあっ…」
便器の中にどんどん溜まっていく、紫色した小さな花。
数は前回よりも多い。
確実に叶わない片思いは自分の体を蝕んでいく。
「はあっ…はあっ…うっ…うぇっ…」
治まらない吐き気。そろそろ楽屋に行かないとまずいのに。
「ふっかー?ふっか居る?」
照の声だ。
バレないように声を出さないように
だめだ……我慢出来ない……
「うえっ……うぇっ……ごほっ」
「ふっか!体調悪いの!?大丈夫!?」
その声は後ろから聞こえて、それと同時に背中を優しく摩られる感覚。
ヤバいっ……鍵を閉めるの忘れてた……
絶対……バレた……終わった……
黄side
最近、ふっかの様子が変だ。
その理由はめめと康二が付き合ったからだ。
ふっかは目黒に片思いをしている。
本人は誰にも気付かれてないと思ってるみたいだけど……
俺は気付いてる。
好きな人のことは解っちゃうよ。
よく見てるから。
俺はふっかに片思いをしている。
「うぇ…ごほっ…ごほっ……」
そして拗らせ「嘔吐中枢花被性疾患」になった。
通称「花吐き病」
診察した医師によると非常に珍しい病気ではあるが、最近、同じ症例の患者が居たらしく、その患者と吐く花の種類が違うがそれ以外の症状は同じだと言われた。
俺が1番最初に吐いた花は黄色い花だった。
俺以外に片思いを拗らせてる奴が他にも居るのかなんてその時は思っていた。
「照、ふっかは?まだ、楽屋に戻ってきてなくて。てっきり一緒に戻ってくると思ってたのに」
撮影スタジオから楽屋に戻ると、阿部が心配そうに声をかけてきた。
「ふっかなら、俺より先にスタジオを出たけど……」
「えっ、そしたら30分以上戻って来てないことになるよ!ちょっと変じゃない?」
「俺、探してくる!俺とふっかはこの後の仕事ないから大丈夫!撮影は俺で終わりだから解散で。後は各自動いて。ふっかが見つかったら連絡するから!」
「大丈夫かな」と心配の声を上げるメンバーに向かってそういうとふっかを探しに楽屋をあとにした。
今日は見る限り体調不良な感じはなさそうだったけど……
ただ、目黒と康二が一緒に居るのをわざと見ないようにはしていたな……
楽屋に入るのが辛くなってしまったのだろうか……
どこから探そう、体調不良だとしたらトイレを探した方が良いかとトイレに向かう。
「ふっかー?ふっか居る?」
今日、このスタジオを借りてるのは俺らだけで、後はスタッフさんだから使う人は限られている。
躊躇せず、個室のドアに向かって呼びかけてみる。
何も応答がない。
他のところを探すかと踵を返すと、個室から苦しそうな声が聞こえてきた。
慌てて個室の前に行くと使用中の表示がされてないことに気付きドアを開ける。
そこにはふっかが居て、顔を便器の方に向けて蹲っていた。
すぐさま声をかけて背中を摩ってやる。
その時見えてしまった、便器の中にある大量の紫色した小さい花が……。
これって……俺と同じ病気……