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言葉を失ったバストロに重低音の声の主、ジャイアントボアのヴノ爺さんは、大きな顔から突き出された、それだけで巨大な竜種である紅竜ジグエラの数倍有ろうかという鼻をヒクつらせながら愉快そうに大声で言う。
『ブフォフォフォォー♪ バストロも成長途中じゃっ、細長い目で生暖かく見守ってやるとしよう、儂等にラタトスクの糞(フン)でも盛られたら、事じゃからのぉ! ブフォフォフォ、ブーフォフォフォフォオォォッ!』
「うぐぐぐぅっ!」
更に低く唸ったバストロでは無く、抗議の声は洞窟の最奥近くに歪(いびつ)に張られたテントの中から届けられた、レイブ少年の物であった。
「もーうぅっ! うるさくて眠れないよぉっ! ヴノうるさすぎ! 明日起きれなくても僕のせいじゃないからねっ!」
「ギャァーッ、グギャギャァッ!」
『おっとぉ、こりゃいかん』
『あらあら』
洞窟の深い闇の中に大きな鼻を隠したジャイアントボアと同時に、首を伸ばし洞窟の外に向けた紅竜の姿を尻目に、折角見つけてきたチャートだった砂に瞳を落とし、深い溜息を吐くしかなかった魔術師、バストロであった。
いつもと大差ない夜は、いつも通り、それきり声も無く更けて行くのであった。
翌朝、昨夜の発言を言質(げんち)にして、二度寝を決め込もうとしていたレイブだったが、そう来る事などお見通しだったバストロの大声で叩き起こされたのである。
「レーイーブーゥ、まさか昨夜の一吠えで眠り続けるつもりじゃないよな? もしもそうだったら今朝のご飯は本当に抜きだっ! それでも良いならゆっくりお休み? 因みに昼もどうなるかは判らんぞおぉっ!」
薄手の寝具、そこら中に幾らでもウロウロしている狼ベースのモンスター、マッドウルフのなめした皮を跳ね飛ばしながら慌てた声で答える。
「ちょっ! もう起きてたしっ! 何だったら早く起きたいなぁ、そんな感じで出て行くタイミングを計っていたのにぃー、そんな矢先に起こしに来るんだもんなぁー、ヤになっちゃうよ、本当ぅ!」
そう言いながらテントから出てきたレイブのメヤニ塗(まみ)れの両目と押さえ切れずに慌てて噛み殺した欠伸(あくび)を見ながらバストロは言う。
「そうか、それは疑ってしまって申し訳なかったな、んじゃ早速働いて貰おうか? 準備は万端なんだよな?」
「ふあぁー、も、勿論だよ、おじさ、師匠! あれだよね? いつもと一緒で遠掛けの後で水汲み、それで良いんでしょぅ?」