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【砂鉄side】
あれから数ヶ月経ってる。
なのに、あの時からずっとチョモの様子がおかしい。
あの日は、珍しくチョモが朝から出かけていて、何も言わないで行ったから結構自分がパニクっていたのを覚えてる。
…あの日はチョモは何も教えてくれなかった。
ピピピピッ ピピピピッ…
「…ん」
目覚めたのは朝の10時頃。
そして、チョモに起こされたのは7時やそこらへん。
早めに起きようと、タイマーをかけていたのを忘れていた。
1度起こされてから、3時間は寝ていた事になる。
「…起きるかぁ」
そう言って起き上がったその時。
玄関側から、勢いよくドアを閉める音がした。
そのまま壊れるんじゃないかってぐらいに。
閉める音がしたってことは、チョモが外へ出たか、オレが起きる前から外に出ていたか。
どちらにせよ、オレは何も聞いてない。
しかも、こんな朝っぱらから出ていくことが危険だってわかってやってるなら、医者行って来いって言いたいぐらいだ。
オレは着替えずそのまま飛び出し、チョモの所へと急いだ。
「チョモッ?!」
「…ッ」
「チョモ…?」
またいつもの散歩だろうと思って、怒りも含めた意味で大声を出したが、様子を見るに普通じゃなかった。
どこか怯えたような、でも確かに目の奥は焼け付いてるような、どうも言葉で表せない表情をしていた。
…それと、なにかを隠しているのは確信した。
「…チョモ。…どこに行ってきた?」
その質問は、いつもの説教じゃない。どこで、どうなったらチョモは、そんなふうに苦しんでるのか。
そう聞きたかった。
けど。
「…別に。いつもの散歩だよ」
そうやって暗い顔で言われる。明らかいつも通りではなかった。
いつも明るくて、みんなに好かれるアイドルチョモ。そんなふうに、YouTubeのテロップが出てもおかしくないくらいに、本当に彼は明るいヤツだったんだ。
そこまでくると、流石のオレでもチョモを一人にできない。
オレは、さっさと部屋にこもろうと、目の前を横切るチョモの腕を掴んだ。
「なぁ、!」
「っ!なんだよ」
「なんで“そういう時”に限って隠そうとすんだよ」
「はぁ?」
チョモは、何言ってんだよと言わんばかりに顔を顰め、オレの手を振り払う。
「…別になんも無いって。ほんと、気にしすぎだよ」
いつまで経っても言う気配がないチョモの態度に、少し違和感を覚える。
というか、言わないと判断してるというよりかは、言ってはいけないと、強く誓って隠しているというか…。
見れば見るほど、チョモの言動一つ一つに違和感を覚えてしょうがない。
「…ごめん。なんもないのは嘘だけど、これだけは話せない」
オレが急に黙り込んだからか、少し慌てて修正した。
そのまま部屋に向かって歩いていく。
何年も一緒に居る、ましてや、お互い被害者同士なのに、そんな奴にさえ話したくないことなのかと、当時は思った。
けど、もしそれが逆だったら。
そう、もしも、オレという人間だからこそ言えないのだとしたら?
数ヶ月前、どこで何をしていたか今でもさっぱり分からない。
だけど、もし、そうなんだとしたら…。
オレは、いつもなら絶対に使わない頭をぐるぐる回転させまくった。
…ほんの少しだけ、心当たりのあるものが。
ただ、これは本当にちょっぴりの心当たりと、半分以上想像でできた“お話”だ。
そんなの認めたくないし、信じたくない。自分の予想があってたなんて思いたくない。
…チョモ。
お前はいつからアイツのことを“桐山さん”と名前呼びしだした?
1年前、 チョモが、ハマりやすそうなボロボロの人間見つけたって言ってたよな?
そいつはずっと“鈴木”と関わってきて、チョモを知らないまま、楽しそうに、笑って生きていた。
その笑いは本物だと彼は言ったんだっけ?
…なぁ?
チョモはいつから楽しそうにアイツの話を、まるで土産話みたいに語るようになった?
掘り返せば掘り返すほど、奇妙な“お話”が出来上がっていく。
「…」
チョモを一番に裏切ったのは?
チョモが信じていたものは?
「…っ、チョモ!!」
オレは、ついに我慢の限界で、口を割った。
チョモが、部屋に向かおうとしてから、数秒経った時だった。
「…え?…なに?」
きょとんとしているが、どこか焦りを隠せてないその表情。
「…チョモは、今日…」
その言葉を聞いたからか、チョモは、少しだけ口角を下げ、目をピクっと見開かせる。
「……桐山って奴に会ったんじゃないのか?」
その瞬間、チョモは、ありえないくらい目を見開いた。
「…違う!!そう”じゃない”っ!!会っただなんてっ!!会うわけないだろ?!!ふざけてんのか!…会いたくない…あんなやつ。もうこれから一生見たぐもな”いっ!!」
「?!?!…え、チョモ、」
なんだ??どうしたんだ??オレがいけなかったのか??何があった???
言葉が出てこない。何をしたらいい?どんな言葉をかければいい???
「っ!、気持ち悪い”んだよクズ!!!な”に幸せ気取ってんだクソッ!!お”前だって人信じれてねぇんだろうが!!!」
髪の毛を自分でぐしゃぐしゃに掻き回し、その場で崩れ落ちて、止められない暴言を言いまくる。
「ッチョモ!!落ち着けって!!」
そんなオレの声など、ろくに届かない。
ただ、落ち着くまでゆっくりそばにいてやることしか出来ない。
数分後、やっと落ち着いてきたチョモは、息を切らしてこちらを見た。
すぐ目をそらして、再度床を見る。
「チョモ…ごめん。オレが悪い」
オレは、崩れて蹲っているチョモの背中を擦りながら言った。、
でも、自分が悪いだなんてちっとも分かってなかった。
ただ、罪悪感で押しつぶされそうだから、謝るしか道がなかったって言った方が正解だ。
それでもチョモは、うんうんと頷き、息を切らしながら、
「…砂鉄は悪くない」
なんて言う。
まだ聞きたいことはあった。むしろ、聞きたいことが増えてしまった。
でも、聞く勇気なんてどこにもなかった。
それよりも、また自分がやらかしたらどうしようという不安感を抑えるだけで精一杯だ。
「…はぁっ、、」
息を整えたチョモは、スっと立ち上がって、何事も無かったかのように無言で部屋に向かった。
それを見ているだけの自分。
…何をしたら、チョモをあそこまで壊れさせる??
なんで、チョモは異常なほどアイツに執着する?
結構アイツはいつもチョモを苦しませてるだけじゃないか。
ずっと苦しんでるっていうのに。
…ねぇ
本当に
チョモは生まれてきて良かったの?