テラーノベル
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昼休み。
チャイムが鳴ると同時に、教室は一気に賑やかになった。
机を囲んで笑い合う生徒たち。
廊下から聞こえてくる運動部の掛け声。
窓の外では、グラウンドを吹き抜ける春風が桜の花びらを運んでいた。
蒼は鞄から弁当を取り出し、小さく息をつく。
(新しい学校か……。)
緊張しないように笑っていたつもりだった。
それでも、胸の奥では少しだけ不安が膨らんでいく。
「蒼、一緒に食べよう!」
クラスメイトが明るく声をかける。
「ありがとう。」
自然に笑顔を返し、輪の中へ入る。
みんな優しい。
話も弾む。
それなのに――。
「蒼って頭いいんでしょ?」
「テストで一位取るんじゃない?」
「生徒会とか向いてそう!」
期待の言葉が次々と飛んでくる。
そのたびに、蒼は笑顔で「そんなことないよ」と返した。
けれど、その笑顔は少しずつ重たくなっていく。
窓際では、ひなたが一人でパンを食べながら、
その様子を静かに見ていた。
何も言わない。
ただ、蒼の笑顔が少しだけ
無理をしていることだけは気づいていた。
放課後。
校舎は部活動の声で賑わっていた。
蒼は人気のない廊下を歩き、そのまま屋上へ続く階段を上る。
重い扉を開けると、夕暮れの風が頬を撫でた。
「……疲れた。」
誰に聞かせるでもない、小さな独り言。
その瞬間。
「そんな顔、朝はしてなかった。」
低く落ち着いた声が背後から聞こえた。
振り返ると、屋上のフェンスにもたれかかるひなたがいた。
「びっくりした。」
「悪い。」
短いやり取り。
沈黙が流れる。
不思議と気まずくはない。
夕焼けに染まる空を、二人は並んで見上げていた。
「……転校って、大変だな。」
ぽつりとひなたが言う。
蒼は少し驚いて目を見開く。
「なんで分かったの?」
「分かるわ。」
それだけだった。
理由は語らない。
でも、その一言だけで、蒼の肩から少し力が抜けた。
「ありがとう。」
夕日が二人の影を長く伸ばしていく。
まだ始まったばかりの新しい学校生活。
この二人の出会いが何かを少しずつ変えていく
コメント
1件
第2話、読み終えました〜! 転校初日の"いい子"を演じる蒼くんの頑張りと、それを遠くから見ているひなたくんの静かな視線がすごく印象的でした。 「分かるわ」って一言だけで理由を語らないところ、二人の関係性がじわじわ伝わってきて好きです。最後の屋上の夕日、いいシーンでした🌇 これからどう変わっていくのか、続きが楽しみです!