TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

俺はそのまま、飲まず食わずで三日間、ただそこにへたり込んでいた。

頭の中は空っぽで、心に残ったのはただの絶望だけだった。


何も考えたくなかった。


考えれば考えるほど、父さんの笑顔や、村の人たちの温かい笑い声が思い出され、その度に悲しみが押し寄せてきた。


涙ももう枯れ果てて、ただ目の前の景色をぼんやりと見つめていた。


正直、俺もこのまま死ぬんだと思っていた。父さんや村のみんなと一緒に。


でも、四日目だったか、ふと気がついた。


……どうして俺は、まだ生きているんだ?


それまでぼんやりとしていた意識が、急に現実に引き戻された。疑問が頭の中に広がっていった。


何かの意図があって、俺は生かされたのか?


わざわざ俺を見逃した理由があるのか?


そもそも、何故こんな辺鄙な村を襲ったんだ?


次々と疑問が湧いてくる。


知りたかった。理由を、あいつの意図を、すべてを知りたかった。


そして――


あいつを見つけ出して、俺が味わった痛みと絶望を、そのままあいつに味わわせてやりたかった。

ぐちゃぐちゃにして、何もかも壊してやりたかった。


そこから始まったんだ。俺のくだらない復讐劇が。


あの時、もしそこで諦めていれば……


全てを忘れて、ただ静かに暮らしていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。


……まあ、今そんな話をしても仕方がない。

後々全てわかることだ。


話の続きをしよう。




----------------




数日が経過した。


あの村にいては、何も始まらない。


そう悟った俺は、父さんから貰った剣を持って、一番近い国であるフローレンス王国に滞在する事にした。


金はほとんど持っていない。

旅の途中で食料を少し買っただけでも、財布は軽くなってしまった。


これからあいつを追うためにも、金が必要だった。俺は自慢できる物は腕っぷししかなかったため、冒険者をやりながら追跡を進めることにした。


まずは、冒険者登録を軽く済ませ、街を歩いてみることにした。

初めて見る外の世界は、

華美な装飾の建物が立ち並び、見慣れない文化や人々の活気で溢れていた。


昔の俺なら、こんな異国の光景に胸を踊らせていたかもしれない。

けれど今は、目に入るものすべてがただの背景にしか見えなかった。

楽しむ余裕なんて、あるわけがない。


宿に入り、一息ついたあとで、俺はあいつについて調べることにした。


過去の文献や古い本を読み漁り、街の人々にも聞き込みを続けた。


情報は案外簡単に集まった。俺の村を襲った化け物。


その名は――ヘラクレス=ヴィクトリア。


五界覇神の第三位であり、この世界の何処かを放浪しているらしい。


五界覇神が分からない人の為に説明しよう。その存在は至ってシンプルだ。


「最強」、この言葉に尽きる。

本気を出せば軽く国を一つ消せる、そんな存在だ。


五界覇神は強大すぎて、何をしても罪には問われない。法の外の存在だ。

小さな村一つ消えたところで、誰も何も言わない。


ヘラクレスは、黒の髪をしていて、長髪、

高身長の男、という事だけがわかっている。


これだけの情報では、到底見つけることは不可能だ、と思うだろう?


実は、そんな事はないんだ。黒の髪と言うのはとてつもなく珍しい。

というか多分、黒髪のやつなんてヘラクレスしかいないと思う。


そして何より、俺は実際にあいつの顔を見ている。生涯、忘れることは絶対にないだろう。


犯人を特定できたが、俺に叶う相手ではない。その時の俺は、幼かったがそれぐらいは理解出来た。


では、どうするか。

強くなる他ないだろう。


そして、その日を境に、俺の途方もない修行が幕を開けた。

この作品はいかがでしたか?

25

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚