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(やっぱりそうか!)
パイモンは確信した。同時に体から血の気が引いていく。
(この蛍術師は、キャサリンが言っていた”最近妙に強くなっているファデュイ”の一人!だとしたら、オイラたちは…危ない!!)
自分が動かなければ。
腰を抜かしている場合ではないのだ。
不幸中の幸いか、パイモンは無傷だった。
動ける、いや、動く!
蛍術師は強化されているとはいえ、やはり弱い。自分の強さに自惚れている。自分がこの場の王だと思っているのか、空の目の前でファトゥスに認められた自分の速度を自慢している。空は苦しそうな顔をしながらも、必死につけ入る隙を探している。
しかし正面に向き合っているとなると難しいだろう。
ならばパイモンだ。
蛍術師は先刻の威圧でパイモンが完全に動けなくなったと思い込んでいるのか、こちらに興味も関心もないようだ。忘れ去っているのかもしれない。だからこそ今、動け。
空のために!
パイモンはそっと、宙に浮く。怖くないといえば嘘になるが、さっきまでの怯えは消えていた。
呼ばなければ。魈を!