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あるロボットと整備士
視点主『』
その他「」
キャラ崩壊注意
僕が初めて彼に出会ったとき、その損傷の激しさに思わず息をのんだ。
体のあちこちに残る銃弾の痕、ひび割れた液晶。
内部を確認すれば、砕け散った基盤は修繕もされないまま放置されている。
適切な処置を受けていないのは明らかだった。
むしろ、この状態でよく稼働していたものだとさえ思った。
僕がメンテナンスを施してからは、以前より多少は動けるようになったが、それでも完全な稼働には程遠かった。
そんな彼を憐れんで、僕は彼が少しでも自由に動けるよう、小さなチップを埋め込んだ。
人間のように思考し、行動できる──AIチップを。
人間に近づいたぶん、少し口うるさくなってしまったけれど。
彼のメンテナンスを始めてから、いくつかの季節が過ぎた頃。
彼に、除隊命令が下った。
適切な処置を受けられないまま、ボロボロの状態で無理に稼働していた彼の体には、不具合が頻発していた。
それでも、メンテナンスを続けていれば、まだ稼働できたはずだ。
引き留めようとした僕を、彼は静かに制した。
「いつかこうなると分かっていたんです。その時期が、少し早まっただけですよ」
悟ったようなその言い草に、僕はそれ以上、何も言えなかった。
「この際ですから、少し出稼ぎに行ってきます。状況が落ち着いたら、ご連絡しますよ」
そう言って、彼は軍を去っていった。
あまりにも呆気ない別れだった。
人間らしくなったと思えば、こういうところでは、ひどく機械じみている。
それからしばらく時間が経ち、僕は彼からの連絡に記されていた街を訪れていた。
指定された待ち合わせ場所で彼を待っていると、ひとりの人物がこちらへ近づいてくる。
その姿を見た瞬間、思わず体が固まった。
顔立ちは僕によく似ている。
それなのに、どこか整っていて──正直に言えば、僕よりずっと綺麗で、イケメンだった。
その人物は迷いなく僕の前に立ち、声をかけてきた。
「お待たせしました。時間が掛かってしまい、申し訳ありません」
声まで綺麗だった。
どこか自分と似た響きは感じるものの、こんなにも澄んだ声を、僕はしていない。
「すみません、こんな姿で。今、指名手配中でして。変装しないといけないんですよ」
『指名手配????』
馴染みのない言葉に、思わず聞き返す。
話を聞くうちに、どうやら彼はこの街でギャングになったらしいことが分かった。
事情を聞けば聞くほど、どうしてそうなったのか詳しく聞きたくなったが、それはひとまず置いておくことにする。
『えー……っと。とりあえず、元気そうで良かった』
「はい。お陰様で、騒がしい日常を過ごさせてもらってます」
楽しげに笑う彼を見て、思わず小さく笑みがこぼれた。
「どうかしましたか?」
『……いや』
『前よりも、ずいぶん人間らしくなったな、って。』
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