テラーノベル
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僕は、昔から気になってる人がいる。 太陽みたいに優しい笑顔、誰にでも優しくて、困ってる人は必ず助けるでもちょっと天然じみた人。 その姿を見て、僕は彼に一目惚れしてしまった。
坂野高校。
春の終わり、校舎裏の桜はもう大半が散っていた。
「中野!何してるんだ?」
教室のドアが開くなり、光が差し込んだように空気が変わる。
その中心にいるのは、相沢蒼真·クラスの太陽みたいな存在。誰とでも仲が良くて、いつも笑っていて、誰にも嫌われない、完璧な男子。そして、僕の幼なじみでもある。
佑月はその光を、教室の隅の席からそっと見つめていた。
「……うるさいよ、相沢」
佑月は視線を逸らし、ノートに視線を落とした。ペンを持つ指が、ほんの少し震えているのに気づかれたくなくて。
だけど、相沢はそんな態度には全く動じず、迷いなく佑月の隣の席に腰を下ろした。まるでそこが自分の指定席かのように、自然に。 相沢が近くにいると何故か目をそらしてしまう。心臓も早くなるし、顔もなんか熱いし…
(なんなんだろう。この気持ち…)
「なぁなぁ!佑月!佑月?」
「聴こえるか?おーい!」
俺は、席を立ち上がり教室を出た。
「え、ちょ!待ってよ。佑月!」
「ついてこないで」
「…」
「まったく……あいつは何考えてるんだか」
早歩きで廊下を歩いていると相沢が頭の中に思い浮かんできた。
寂しそうな顔。あんな相沢の顔を見るのは始めてだ。
胸がギュッとしてて苦しい。
「この気持ちってなんなんだろう…」
佑月は小さくつぶやいて、窓の外に視線を向けた。
日差しの強さが廊下を照らしていて、まるで世界だけが眩しく進んでいくようだった。
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