テラーノベル
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初めて口付けした日から
一年が経った。
ひとつだけ、私は兵長に
不満を抱えていた。
「兵長。」
「なんだ」
「なんだじゃありません。」
わかりやすく膨れてみせる。
「わざとですよね?」
「何がだ」
「手を出さないのがです。」
兵長は作業する手を止め、
眉をひそめてこちらを見る。
「私には、兵長が意図的に
キスから先をしないように見えます。」
矢継ぎ早に言葉を続ける。
「どうしてですか?
私にはそういう魅力がないですか?」
「私、ずっと頑張ってるのに…」
「おいおいおいおい、待て待て」
言葉を遮るように兵長が言った。
立ち上がり、壁の方へ追い詰められる。
「…っ、兵長?」
「…お前な。」
嘆息し、言葉を続ける。
「…俺がどれだけ
我慢してると思ってやがる」
「…へ?」
思わず間抜けな声が出る。
「…お前に魅力がないから
抱かねぇわけじゃねぇよ」
兵長はまっすぐ私を見据える。
「…じゃあなんで?
我慢する意味がわかりません。」
「俺たちは兵士だ。
壁の外に出りゃいつ死ぬかわからねぇ。
そんな状況でお前の体に何かあって
危険に晒すわけにはいかねぇ」
「…兵長は私がそんなヤワだと
思ってるんですか?
兵長に抱かれた途端浮かれて
周りが見えなくなると」
「そういうことを言ってるんじゃねぇ」
「…明後日、壁外調査がありますよね。
今回死ぬ可能性だってある。
死ぬ覚悟なんてとうの昔にしてるけど…」
兵長の服の裾をきゅっと握り、
言葉を続ける。
「…だからこそ、
兵長に抱かれないまま
死ぬのは嫌です」
「…兵長、お願い」
声が震える。
お願い、拒まないで。
「…お前の覚悟は伝わった」
願いとは裏腹に、
兵長は私の肩に手を置いて言った。
「…だったらなおのこと今は抱かねぇ」
そしてこう続けた。
「”死ぬ覚悟”なんてするな。
“生き延びる覚悟”だ」
「…何がなんでも死ぬな。生き延びろ。
そうしたらお前を抱く」
約束だ、と兵長はまっすぐ
私の目を見て言った。
なんだか言いくるめられてしまった
ような気がして、
まだ不満の色を残した私の表情を
悟った兵長は、
「…チッ。それまではこれで我慢しろ。」
私の腕が引き寄せられ、唇が重なる。
ちゅ、ちゅ、とついばむように
離れては触れる。
「…ん、ふっ…」
離れるたびに息が漏れる。
ようやく離されると、息を整えて言う。
「…兵長。こっちはキス初心者なんです。
そういう刺激の強いやつをやる時は、
事前に申告してください…」
「刺激の強いやつだと?
馬鹿言え。 お前は今しがた
俺に抱かれようとしてたんだぞ」
息一つ切らさず兵長は
呆れ顔で言う。
ぐうの音も出ない。
「…約束ですよ。」
「あぁ、無事だったら抱いてやる」
「それもだけど…
蓮
75
#リヴァイ兵長
さらん
4,937
無事に帰ってきてください。」
「俺が死ぬわけねぇだろ。
一個旅団並みだぞ」
「ぶっ…w自分で言うのやめてください」
真顔で冗談を言う上官の横顔を眺めながら
私は覚悟を決め直した。
コメント
1件
ふわっ…!この番外編、めちゃくちゃ良かった…!「死ぬ覚悟」じゃなく「生き延びる覚悟」しろって言う兵長、強くてかっこよすぎるでしょ…。抱く約束を壁外調査後に先延ばしにするのも、彼なりの責任感と優しさなんだなって伝わってきてグッときた。キスの後の照れ隠しっぽい掛け合いも最高に甘い…!健気に迫る主人公も可愛くて、続きが気になりすぎる🔥