テラーノベル
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ホストクラブの清掃、まずは新人ホストが所属する箱「Top Rough(Laugh)トップ ラフ)の
清掃を終えた愛大(まな)と漆慕(うるし)。
「よし。じゃ、次行こうか」
「はい」
と次の店舗に向かう2人。次の店舗は新人ホスト兼方言だったり個性が強かったりするホストが所属する箱
「Unique 1nveder(ユニーク インベイダー)」の店舗に入る2人。
「さあぁ〜て。ここはぁ〜っと」
店内を見渡す愛大。店内のテーブルには飲みかけの、飲み物が少し入ったグラス、アイスペール
シャンパンクーラースタンドの上のシャンパンクーラーに入ったシャンパンの空き瓶など
つい先程まで飲んでいたような痕跡があった。
「まあまああるなぁ〜」
と呟きながら店内を歩く。するとVIP(ビップ)ルームと呼ばれる場所のドアが閉まっていた。
「ん?」
と思いドアを開ける愛大。中を見てドアを閉める。漆慕の元へ行く愛大。
「円鏡(まるきょう)さん」
「ん?」
「VIPルームで誰か寝てます」
「あぁ〜…」
と言いながらVIPルームに行く漆慕。ソファーに寝ていた人の肩をトントンと叩く。
「おぉ〜い」
「んんん〜…」
「起きて」
「んん…んん」
と言って起きた男性。
「福くん、昨日アフター行ったの?」
「んん…。あ、漆慕さん」
「おはよ」
「おはようございます」
彼は岡井(おかい)壱福(いっぷく)。
ホストクラブ「Unique 1nveder」で、源氏名「福」としてホストをしている。
「昨日アフター行ったの?」
「行きました」
「んで帰るのがめんどくさくて?」
「店で寝とりました」
「あれ?2部は?今日はなかったの?」
「いえ。2部もありましたけど、2部はVIP使わないんで」
「あぁ〜。でも店で寝てうるさくなかった?」
「イヤホンで音楽聴きながら寝とったんで」
「なるほどね」
頭を抑える壱福。
「ま、VIPなら寝ててもいいよ。見たところ、福くんが使ってるグラスだけだし」
「他んなキッチンに移動させときました」
「あ、ありがとね」
と言いながら座る漆慕。
「最近は?どお?」
「最近っすか?」
「ナンバー1、2を行き来してるらしいけど」
「あぁ。そうなんです。康太(こうた)くんとナンバー1、2ば争いよって」
「福くんもやっぱRun’s On1y行き目指してんの?」
「まあぁ〜…。正味先輩と行きたいんすけど…」
「あぁ、海野くん?」
「そっす。先輩がおんなじ店におるんで、自分はまだいいんすけど
康太くんな先輩がRun’s On1yに行っとーんで、自分より昇格欲は強いかもです」
「そうなんだ?タバコ吸ってい?」
と漆慕が言う。
「あ、どうぞどうぞ」
「ありがと。福くんも吸いたかったら吸っていいからね。どうせ清掃するから」
「うっす。ありがとうございます」
と言ってテーブルの上に置いていた電子タバコを吸う壱福。
「漆慕さんは紙なんですね」
「あぁ。うん。やっぱ紙のほうが美味い」
「ホストやっとーと電子になりません?」
「あぁ。ホストのときは電子タバコだったよ」
「あ、やっぱそうやったんすね。漆慕さんは「Run’s On1y」でナンバー5だったんですよね?」
「うん」
「なんで辞めたんすか?」
漆慕はタバコを吸い、煙を吐き出して
「なんかぁ〜…。いろいろめんどくさくなって」
と答える。
「面倒、ですか。まあ、たしかに、ライバル関係とか先輩後輩とかいろいろありますけど」
「そうなんだよねぇ〜。ま、今「Run’s On1y」で知ってる人、一希さんくらいしかいなくなっちゃったけど
当時オレがいたときの一希さん以外の人との付き合いがめんどくさくてね。
今もう自分の店構えてる人ばっかだけど」
「そんな大変だったんすね」
「ま、オレは人付き合い苦手だからね」
と微笑む漆慕。
「どこがっすか」
と笑う壱福。愛大は店のソファーに座ってスマホをいじっていた。
すると店の出入り口からレジ袋を下げた男性が入ってきた。男性は愛大を見てペコッっと頭を下げる。
愛大もペコッっと頭を下げ返す。その男性はVIPルームに直行した。
「壱福ー」
と言いながら中に入ると漆慕がいて
「あ、漆慕さん。お疲れ様です」
と挨拶する男性。
「あぁ、海野くん。お疲れ様」
彼が先程、漆慕と壱福の話の中で出てきた海野くんという人物。
名前は国生(こくしょう)海風(うみか)。そして源氏名が「海野(うみの)風(かぜ)」
海風もまた、ここ「Unique 1nveder」でホストをしている。
「あ、そっか。清掃か」
「そうよー。あ、VIPは清掃入れないから、そのまま寛いでていいよ」
「って、オレらが掃除する羽目になるんじゃ…」
と海風が言う。すると漆慕はタバコを灰皿に押し付けて立ち上がり
ニッコリ笑ってなにも言わずにVIPルームを出た。
「…あれが、Run’s On1y元ナンバー5」
「しかも一希さんがナンバー1 ん素質があると過去に1人だけいたて言いよったそん人」
「えっ!?そうなんすか!?」
「そうばい」
「…そりゃー変な魅力があるわけだ」
「わかる」
なんて壱福と海風はVIPルームで話していた。
「お待たせー」
漆慕がVIPルームから出てきてソファーに座る愛大に話しかける。
「遅いっすよー」
「ごめんごめん」
「じゃ、今度は逆で。私がキッチン行きます」
「うん。オレホールね」
「うっす」
と「Unique 1nveder」の店舗の清掃を終えた2人は最後の店舗「Run’s On1y」に向かった。
愛大と漆慕が清掃を行う3店舗、「Top Rough(Laugh)」「Unique 1nveder」「Run’s On1y」は
「Run’s On1y」をトップに据えた「On1yグループ」という系列店で
どの店舗もそこそこの規模を誇るが「Run’s On1y」の広さ、豪華さは桁違い。
入り口から絢爛豪華で、ナンバー1から5までの写真が大きく、豪華な額に入れられて飾ってある。
そんな廊下を抜けた先、まるでダンスホールのような空間に
ソファーがズラッっと並んであり、その前にはテーブル。何テーブルあるんだ。というほどである。
そんな広さを2人、いや、キッチン1人にホールが1人なので
実質1人で掃除しなければいけない。そりゃー時給もいいわけである。
「もう慣れましたけど、円鏡さん、ここのナンバー5だったんすよね」
愛大が言う。
「そうだねぇ〜」
「スゲェ〜」
「別にすごくないって。じゃ、ホールやるから、キッチンお願いね」
「うっす」
と掃除を始めた。
「Chee hoo!!」
会社では風天(ふうあ)がオフィスチェアの背もたれに思い切り寄りかかり
天井に向かってため息を吐き出すように言った。
「なにターフーって?」
と海が風天に言う。
「いや、仕事終わりーっていう掛け声。シルフィーの海の映画でアノアイ族のマッチョが叫んでるの知らん?」
「知らん。もうここ最近シルフィー映画なんて見とらん。逆に風天見てんの意外なんだけど」
「たしかに」
同意する陽子。
「彼女っすか?」
と言う将子。
「いや?オレも見てないけど」
と言う風天に、みなコケる。
「は?」
「いや、WEWでさ?そのアノアイ族の声優を勤めたelectricなbossがリングに上がったときに
Universeが叫ぶのよ、そのセリフをね?」
「あぁ。プロレスか」
「なあ海も見ようぜ?んで、いつかアメリカに観に行こう!生で!」
「まあ…」
「そのために有給貯めよう!」
「そのために…。なんか…嫌だな…」
なんて話して仕事を終え
「じゃ、お先です!」
「お疲れ様です!」
とオフィス全体に言ってエレベーターに乗った。
そして福のいるPR、宣伝部のある階で降り、チラッっと見たが
まだ仕事中っぽかったので、会社を出てカフェに入った。
「一旦お疲れ」
「ん。お疲れ」
とプラスチックの蓋がついた紙コップのコーヒーで乾杯をする2人。
海はコーヒーを飲むが、風天はプラスチックの蓋を外してふーふー息を吹きかける。
「最近どうよ」
コーヒーを息をかけて冷ましながら海に問いかける風天。
「は?」
「山津野(やまつや)さんと」
「…ん?」
コーヒーを飲んでから
「いや、特に」
と言う海。
「おもんな」
「なんだよ」
「デート行ったり」
「してねぇな」
「つまんねぇ〜…」
と背もたれはないが、後ろにもたれかかるように、でも倒れないようにそり返る風天。
「てかこれこそ酒の席で話す話だろ」
「あ。それもそうか」
「今気づいたのかよ」
「いやぁ〜福が遅いもんで。こちとらもう仕事上がって飲んでる気分だから」
「まあ、気持ちはわかる」
一方の福は
「市野くん。広告バナーのデザイン上がったって?」
「あ、いえ。デザインの微調整とかで明日の朝くらいにってことなんで、明日出社して確認しようと思います」
「あ、そうなんだ。じゃ、誰か」
「あ、舞千(まち)くんも来てくれるらしいんで」
「あ、そうなの真壇田(まだんだ)くん」
「そっすね。こいつも一緒に」
「は!?ふざけんな。休日出勤誰が付き合うか!」
「あ、私も明日確認しなきゃならないことがあってMD studio行くから寄ろうか?」
「え、芦条(ろじょう)さん来てくれるの?おい、芦条さん来てくれるってさ(小声)」
「うるせぇよ(小声)」
と仕事をしており、後輩が仕事を終えオフィスを出た後
「じゃ、自分も失礼します」
と福もオフィスを出た。エレベーターに乗りスマホを確認する。
すると風天からカフェにいるとLIMEが入っていたので、会社を出てそのカフェに向かう。
風天がスマホをチラッっと見る。
福「今カフェ前に着いたけど、中入ったほうがいい?」
とLIMEが来ていたので
「福着いたって。行こうぜぇ〜」
と海に言う。
「ん」
2人でゴミをゴミ箱に捨てて外に出る。すると風がガードレールのポール版
ガードポールに寄りかかるように腰かけていた。
「おつぅ〜」
と風天が手を挙げる。
「お疲れ」
海も福に声をかける。
「2人ともお疲れ」
「じゃ、行くっかー」
と3人で電車に乗り、海の家の最寄り駅前で降りた。
「ここっす!」
となぜか風天が「じゃーん」というように紹介する。
「命頂幸(しょく)って読むんだ?」
「めっちゃいいお店だから、ささ」
と引き戸を開ける風天。
「いらっしゃいま、おぉ!風天!」
といつも通り勝利が迎えてくれた。
「ういぃ〜」
「お!海もいんじゃぁ〜ん」
「うっす」
その後ろには勝利は見たことのない人もいた。福である。
「えぇ〜っと」
と言う勝利に
「あ、3人ね」
と言う海。
「おぉ」
と言いながら福にペコッっと頭を下げる勝利。福もペコッっと下げ返す。
「カウンターでい?」
と言う風天に
「あ、いいよいいよー」
と勝利に言われてカウンターに横並びに座る3人。
「とりあえずビール、でいいよな?」
と風天が海と風に確認する。2人とも頷いたので
「3と枝豆と唐揚げ、をお願いしまっす!」
と風天が勝利に言う。
「オッケー」
と言ってキッチンに注文を伝え、ビールを3杯入れて
「ほい、ビール3杯!」
と言って3人の前に出した。
「ありがとー」
「さんきゅ」
「ありがとうございます」
「んじゃ!とりあえず」
風天がジョッキを軽く上げる。
「乾杯!」
「乾杯」
「かんぱーい」
カキンッ!コキンッ!っとジョッキがあたる音がしてからビールを飲む3人。
「うんまっ」
「…はあぁ〜…生き返る…」
「…ふうぅ〜…」
三者三様だが、3人とも共通して美味しそうである。
「えぇ〜っと。先輩?」
と勝利が言う。
「んや?」
と風天が言った後
「同期」
と答える海。
「マジで!?」
と驚く勝利。
「なにそんな驚いてんだよ。あ、福が老けてるから?それともオレらが若々しすぎ?」
と笑いながら言う風天に
「いや、しっかりしてそうだから」
と答える勝利。
「いやぁ〜、それほどでも」
と照れる福に
「クレパスけんちゃんか」
とツッコむ風天。
「いやぁ〜まさか海と風天の友達に、こんなしっかりした社会人がいるとは」
と言う勝利に
「「どういう意味だ」」
と声を揃える海と風天。すると従業員が枝豆と唐揚げを届けてくれた。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
それぞれ店員にペコッっと頭を下げる。
「福、気をつけろよ」
「ん?」
「口ん中火傷したら、向こう1週間くらい、人生がつまんなくなるからな」
「あぁ〜。風天、この唐揚げで火傷してめっちゃ落ちてたから」
と言いながら枝豆を食べる海。
「もう最悪だったかんね」
「風天猫舌だもんね」
と言いながら枝豆を食べる福。
「あれ?同期ってことは、同い年?」
と勝利が会話に参加してくる。
「別に同期だからって同い年とは限んないけど」
と言う海。
「え、そうなの?」
「大学浪人とか留年とかあるでしょ」
「あぁ〜。え、じゃあ」
と福を見る勝利。
「いえ。海たちと同い年です」
と微笑みながら言う福。
「なんやねーん。てことは自分タメっす」
と自分を指指して言う勝利。
「あ、そうなんですね?」
「国和田勝利です。よろしくお願いします」
「あ、浮秋(ふあき)福です。こちらこそよろしくお願いします」
お互い自己紹介する勝利と福。そんな4人の様子を背中側から見る人が1人。
海綺(うき)である。愛大がトイレから帰ってくる。
「ねえ」
愛大に話しかける海綺。
「ん?」
「あれ」
と海綺が指指したほうを見る愛大。そこにはスーツ姿の男性が3人並んでおり
店主である勝利と仲良く楽しそうに話していた。
「ん?」
ピンとこない愛大。
「水貝井(みかい)さんたちだよ」
「嘘やん。3人おるやんか」
と言いながらビールを飲む愛大。
「嘘ちゃうて。横顔がそうやったもん」
「なんで大阪弁やねん」
確認するためそちらを見ながらタバコを咥え、火をつける愛大。風天が横を向いた。
「お。ほんまや」
「ほんまやろ?」
「だからなんで大阪弁やねん」
「そうだ。今日の昼さ、CALLの新曲上がっててさ」
と風天が海と福に向かって言う。
「あぁ」
「そうなんだ?」
ここで話に出た「CALL」とは「Cassos take ALL」というグループの略称である。
男性4人、女性3人のグループで、今や世界的に人気のグループとなっている。
「めっちゃ好きな部分あってさ。ちょ、聴いて」
と風天がスマホを操作して動画を再生する。
「もう日本の文化に興味はもうNO 世界を意識し、海外に迎合?Oh no…
消えゆく日本の良さ 嘆く海外 気づかず変えてくLoser 枯らす文化
オレたちはたしかに社会不適合 だけど心(ここ)にたしかに灯(あか)り灯(とも)る日本魂(Soul)
“は?お前ら、日本の文化大事にしてるとか言って、結局海外行ってんじゃん”?言っとけHater
覚えとけ、オレら最強のGrappler 掴んで離さねぇ胸ぐら
いわしてやる、奥歯、ぐわぐわ 光の速さで届けるMusic 天才も驚くDoppler
そして見せつける、我らの実力(Power) Haterの心すらも、Plunder, you know」
というところで止めた。
「どお?カッコよくね?」
「カッコいい…けど、…これアップされたのオレら仕事してるときじゃん」
と海が言い、ビクッっとなる風天。
「風天、仕事中に聴いてたんか」
「い、いやぁ〜…。なんといいますかぁ〜…」
「LIMEで皆口先輩に報告しとかねば」
とスマホを取り出す海。
「あぁ〜!今日少し多めに出す!だから許して!」
「しゃーない」
と盛り上がっている背中を見て煙を吐く愛大。
「知らん人おるな」
「おるね」
「合流しようか思ったけど、ちょ悪いよな」
「せやね」
「だからなんで大阪弁やねん」
と話していた。
「で、オレら同期の中で定番のやり取りがあって」
「もういいってそれ」
と笑う福。
「福の苗字が浮秋(ふあき)でさ?浮気に似てたから「浮秋〜浮気すんなよぉ〜」って毎回言ってんの」
と言う風天に、頷く海。
「彼女いるんすか?」
と聞く勝利に、ビールを飲みながら首を振り、口の中のビールを飲み終えてから
「それがいないんですよ。それなのに言ってきて」
と言う福。
「でもいいっすね同期。自分同期いないんで」
と笑う勝利。
「そうですか?」
「考えたこともなかったな」
「同じ時期に入ってきた人とかいないんですか?」
と聞く福に、なぜか風天が得意気な顔をして
「それがここ、勝利の店なのよ」
と言う。
「えぇ!?そうなんですか!?すご」
驚く福。
「いやいや。まあ、そんなこと…あるか」
「自画自賛かよ」
と笑う風天。それを見て笑う海と福と勝利。
「へぇ〜。いつ頃お店持ったんですか?」
という話を繰り広げ、食べ、飲み進めた。
「福ー、浮気する相手とかいねぇの?」
「いないって。浮気以前に彼女もいないって何回も言ってんじゃん」
「彼女はいなくてもいい感じの子とかさぁ〜」
「福割とモテるだろ。真面目だし、顔もそこそこ良いし」
「モテないモテない」
「同じ部署の子とかは?」
「後輩とか」
「いやいや。仕事以上の関係はないんだなぁ〜」
「福優良物件なのに勿体ないな」
「な」
「いやいやいや。てかそーゆー2人はどうなのさ」
「オレら?」
と言いながら自分を指指す風天と、軽く首を傾げる海。
「オレらはぁ〜」
と伸ばしながら海の腕を肘で突く風天。
「オレはなにもない」
突かれた海は速攻で答えた。すると福は
「じゃあ風天は?」
と風天に行った。
「おい」
と風が海に言うが、海は無視。
「オレが話したら話してもらうからな」
と小声で海に言う風天。仕方ないので風天が話すことにした。
「オレはー…。ま、ここで知り合った子と家具見に行ったりはした。でもマジでそんくらい」
「は?なに?風天、坂木田さんとデートしたん?」
「デートじゃねぇって」
「坂木田さん?」
と言う福の問いに答えようとしたら
「はい。坂木田です」
と声がして振り返る3人。するとそこには赤髪にピアスまみれの愛大がいた。
「おぉ!坂木田さん!」
「ばんはっす」
「おぉ。こんばんは。えぇ〜。坂木田さんです」
と風天が福に紹介する。
「あ、初めまして。泥好木(どろすき)と水貝井(みかい)の同期の浮秋です」
とペコッっとお辞儀をする福。
「あぁ、これはこれは」
と言いながら愛大も頭を下げる。そんな中、海は愛大がいるということは。と思い
後ろを振り返り、店内を確認する。すると案の定海綺がいて
海綺と目が合い、海綺がペコッっと頭を下げたので、海も頭を下げ返した。
「私のなんの話をしとったんすかー?」
「え?あ、あの出かけたときの話を」
「えぇ〜。2人だけの秘密ってゆーたのにー」
「言ってないでしょ」
「あ、バレました?」
「もしかして関西の」
と言う福。
「バリバリの大阪です」
「あ、そうなんですね。自分も静岡なんで、別に同じってわけじゃないですけど
東京出身じゃないんだーって」
「あ、そうなんすね。へぇ〜。
…いや、別に親近感ってほどちゃいますけど、たしかに東京人じゃないってのは、なんか」
と頷く愛大。会釈のようにペコッっと頭を下げる福。
「いや、オレも北海道人!」
とツッコみを入れる風天。その後は海、風天、福3人、海綺、愛大2人でそれぞれ飲んで食べた。
しかし愛大も風天も福も地元ではないため、終電前に帰るとなると自ずとお会計のタイミングも似通る。
結局5人でお店を出て、5人で駅へ。
「んじゃ、海に山津野(やまつや)さん、また!」
と風天が手を挙げる。
「海綺ーまたねー」
「じゃあね海ー。また飲もー」
と手を振る愛大と福に
「はい!愛大もまたねー」
と愛大に手を振って福にペコッっと頭を下げる。
海も風天と福に手を振って愛大にはペコッっと頭を下げる。3人は改札を通っていく。
「んじゃ、オレらも帰ろうか」
と言う海に
「はい」
と一緒に歩く海綺。
「なんかおひさしぶりな感じですね」
「あぁ〜…。そうかもね」
「お仕事お忙しい感じでしたか?」
「んん〜…。ま、忙しくもあり、忙しくなくもあった」
「なんですかそれ」
と笑う海綺。
「ま、社会人なんてそんなもんよ?」
「そうなんですか?」
「うん。あ、コンビニ」
と言う海に、その先を察して
「はい」
と言う海綺。そして2人でコンビニに入り、いつものように海綺と自分の飲み物を買ってコンビニを後にした。
「毎度すいません。ありがとうございます」
「いーえー」
飲みながら海綺の家に向かって歩く2人。
「今日一緒におられた方は」
「あぁ。福。オレと風天の同期でね」
「そうなんですね」
「入社当初は昼休憩の時間合わせて一緒にお昼食べてたりしたんだよね」
「今は違うんですか?」
「うん。福だけ他部署でね」
「あ、そうなんですね」
「そ。ま、同じ部署で数年働くと後輩もできるし、休憩を合わせるってのもし辛くなってね。
だけど、ま、同期だし、仲良いし、ひさしぶりにエレベーターで鉢合わせて
そっから休憩合うときは連絡して一緒に昼食べて、んで、ひさしぶりに飲み行くかってね」
「会社の近くじゃなくて、わざわざあそこ(居酒屋「命頂幸」)にしたんですね」
「あぁ〜。風天が気に入ったらしくて」
「そうなんですね。金曜日ってほとんどあそこ(居酒屋「命頂幸」)に飲みに行ってるんですよね?」
「うん。だから海綺ちゃんも来ればいいのに」
「行きたいですけど、なんか今日みたいにお友達といらしてるのに私がいたら悪いじゃないですか」
と言う海綺に
「来たいは来たいんだね」
とクスッっと笑う海。
「そっ、そりゃー行きたいですよ」
「じゃ、1人のときはLIMEするから来れるときはおいで?」
「はいっ!」
と話していると海綺の家の前に着いたので
「じゃ、またね」
と言う海。
「あ、はい!ありがとうございました!」
「いーえー」
と言って帰っていった。一方電車組は、福と風天、愛大で分かれて、風天は愛大を家まで送っていくことに。
「いやぁ〜すいませんねぇ〜」
と言う愛大。
「いやいや」
「こんな可愛い子が暗い道歩くのは心配ですもんねぇ〜」
「そうなのよ」
「いや、ツッコんでくださいよ。ボケ殺しっすよ」
とツッコむ愛大。
「いや、別にボケになってないでしょ」
「お?泥好木さんは私がタイプなのかしら?」
「さあ?それはどうでしょう?」
「ちょっとー!誤魔化さないでくださいよー!」
と恋人でもないのにイチャついていた。
「飲み物でも買う?」
とコンビニを指指す風天に
「え。いいんすか?」
と言う愛大。
「奢らせる気満々」
「そんなことありませんやんかぁ〜」
「ま、オレは奢る気だったけど」
「なんやねん!優男か!」
「どんなツッコミなのさ」
ということで愛大が選んだ飲み物と自分の飲み物をレジに持っていった風天。
愛大は雑誌コーナーで、別に興味もないけどペラペラ捲っていた。
風天がレジ袋を持って出入り口に向かうのが傍目に見えたので
雑誌を閉じて元の場所に戻して、自分も出入り口に向かう。コンビニから外に出てから
「ほい」
と愛大が選んだ飲み物を愛大に渡す風天。
「ありがとうございます!」
ガバッっと頭を下げる愛大。
「なんか部活の後輩に奢った気分になるわ」
「たしかに」
ニカッっと笑う愛大。その八重歯が光る笑顔に、少しドキッっとする風天。
「はい。おまけ」
とレジ袋からタバコの箱を出す。
「いんすか!?」
「飲み物の20倍喜んでるじゃん」
「なんで20倍」
と笑う愛大。
「そんくらいだったから」
「え。でもマジでいいんですか?」
「いいよー。その代わり、どっか近くに喫煙所ない?」
「あぁ〜…。家(うち)しかないっすねぇ〜」
「…。あっ。なるほど?じゃ、いいや」
「すいません。駅過ぎたら、もう家直行でタバコ吸うんで、周辺の喫煙所知らないんすよ」
「まあ、オレも同じだから気持ちはわかる」
なんて話をして愛大の家まで送った。
「いいんすか?タバコ吸ってかなくても」
と自分の家を親指で指指す。
「あ、いいいい。大丈夫。ありがとう」
「そっすか…。ま、たしかにかたしてないんで、行くって言われても
ドアの前で鬼ほど待たせることになりますけど」
「大丈夫。帰って吸います」
と言う風天。
「じゃ、また飲もうね」
「はい!いろいろありがとうございました!また飲みに、あとまた家具屋巡りも付き合いますよ!」
「お?家具屋巡りハマった?」
「ハマってはいないけど…ま、楽しかったんで」
「ん。また誘う」
「待ってます」
またニカッっと笑う愛大の笑顔にドキッっとする風天。
「んじゃーねー」
「はい!お疲れっした!」
手を振る愛大に手を振りながら歩く風天。別に曲がる角じゃない角で曲がって
止まってワイヤレスイヤホンを取り出し、音楽を聴き、駅まで歩き出す。
「…」
と頭の中では元カノのことが少し思い浮かんで
「…ふぅ〜…」
と鼻から息を吐き出して家へと帰っていった。