月と太陽、誰を照らし何処へ消える
あらすじ必読
結構長くなってしまいました。
【side👯】
人間という種族はどこまでも嫌いだ。多分私がそいつらを好きになることは一生ないだろう。だって人間共は、多種多様の種族である獣人を”動物の血が入った劣った人間“だと、まるで自分達が高貴で純血な人間だからと勘違いして私らみたいなのはみんな下に見て優越感に浸っているんだろうから。別に獣人だって、特定の動物のみに限った遺伝子ばかりを持っているわけじゃないし、中には魔法が使えたり、人間の姿に完全に溶け込める獣人だっている。そして何より獣人は人間とどの動物の遺伝子を組み合わせるかによって、身体的特徴に有利な差が出たりする。犬と人間の獣人なら嗅覚には優れる。そして私達の国は兎と人間の獣人を民族とする国家だ。魔法が使えるか使えないかに限らず、ここで敵国と戦っている味方はすべて兎と人間の血を半分ずつ受け継いでいる者。兎は逃げ足が早い分、孤立して生きていくには弱い。だから我々は集団戦法を用いる。でも決して、”味方同士“だから安心していられるわけじゃない。
「おい、ぺこら。今日もこっちの戦線を担当な。」
「は、はいぺこです…。」
「……お前は比較的この中じゃ”役には立たない“。」
「ッ………!」
「お前が顔をしかめるのは無理ねぇ、なんせここは魔法部隊やその他の特殊隊員が集まってできている戦争組織だ。魔法が使えないお前は囮としか役に立てる方法はねぇ。」
「わ、分かりました……。」
ガチャン。
静かに部屋を出て、海軍基地の外側に出る。ぺこーらにあの場所は合わなさすぎた 。
”味方同士“でも決して安心できないのは、獣人という世界の秩序的な立場の他、獣人の中でも魔法が使える人と使えない人の大きく二つのチームに分類できる要素があるから。まず、魔法が使えて、獣人特有の動物の運動神経の力も同時に使える……”優勢遺伝チーム“。このチームは比較的世間からはまともな目で見られるし、優秀という立ち位置をもらえる。こういう人は社会からの援助も分厚いから科学者とか、学者とか、自営業とかそういうのに強い。後、運動神経の抜群さや魔法が使えるメリットを通すとするならば、特殊部隊、軍の管理、軍における指導者とかもこちら側が有利。獣人社会では立場が上。そして上があるなら下がある。
それが世間から獣人であることを憎まれ、魔法も使えない”劣勢遺伝チーム“、名前だけでも希望がないことは分かって欲しい。そして、そのうちの1人がぺこーらってわけ。獣人自体のそもそもの存在を否定する純血人間側の国と獣人側の国が対立してて、ついに獣人側が境遇に我慢できなくなって、人間側の国を攻撃。これがぺこーら達の国とその憎ったらしい人間の間で行われている戦争。そしてぺこーら自身の立ち位置の問題で敵の注意を引くだけの囮作戦を今さっき命じられたばっかり。
「お〜笑使えねーウサギちゃんってわけ?笑」
「これから囮作戦に出動するって聞いたんだけど…お前がその兵士か?笑」
あーいやだ。兎の獣人という共通な起源を持つはずなのに、“魔法を使えるor使えない”かで使える側も人間側の立ち位置になってしまう。
「っ……!!」
トタトタトタッ………
「おーいお前が圧かけるから逃げちまっただろ。」
「しょーがねぇ、弱い奴は何も言えないんだ。逃げるしか術はない。」
ぺこーらは言葉の圧に耐えきれずに逃げようとした最中でも、うっすらと聞こえる口に
何も言い返せない立場だけど無性に腹が立ってしまう。
あーあ…もう死のうぺこか。
ザーッ…ザバァァン…
戦艦が波を激しく打ち付ける音がする、そして数百メートル、いや数千メートル先に人間軍の艦隊が見える。そう、まさにぺこーらが乗っている戦艦は囮だ。これが先頭を指揮ってこちら側へ敵の注意を引いて牽制すれば、他の護衛艦が相手を十分に攻撃できる。そういう戦法も時には大事。乗っているのが非魔法使用者のみなだけで外側から見れば普通の戦略だ。なんで魔法が使えないだけで囮として死んでいかなきゃいけないのが不満だったけどこれは見方を変えれば…
「ぺこーらみたいな“役立たず”はここで死ねるってこと…ぺこよね。」
だったら良いかもしれない。囮を利用する側からしたら相手の注意を引いて攻撃を集中させられるし、“役立たず”に集中放火を浴びせれば簡単に“処理”できる。そういう論理だろう。
「そろそろだ!囮戦艦!もっと前へ出ろ!!」
ぺこーら以外の乗組員が必死に叫ぶ、囮には優秀な指揮官も付けれないし、結局は自分でどうにかするしかない。どうせ“役立たずは死ぬ”運命なのだから。
「て、敵艦が来たぺこ………!」
“ダメだ”。死ぬ勇気がない、なさすぎる。なんでこんなに怖いんだ?散々利用されてボロボロだし、周りもそういう人間だって散々分からされてきたじゃないか。なんで
こういう時こそ、”楽に死にたい“なんて思えない?????
でもそんな本音とは裏腹にすれ違った敵艦は囮戦艦に攻撃を仕掛けた。別に特別抵抗するわけでもない、ただ無駄な労力を使うだけなのに───────。
気づけば海の中にいた、ほんのちょっぴり左足が痛いし、腕の火傷を海水が刺激して痛い。呼吸も難しいし、肺に水が入ってはもがいて苦しんでを繰り返す。
なんでこう”楽に死なせてくれない”んだろう。こんな……………こんな………
ぺこーらみたいな奴らなんかずっと役に立たないのに………
──────なんで死ぬのが苦しい?
「ん……………?」
え…?ぺこーら……“なんで死んでない“ぺこ?
「ちょっ…ここは……」
体を起こして見ると人がそこに1人。
???「あ、今起きた?」
「っ…てめぇ誰ぺこか。」
ぺこーらの身に何が起きてるのかは肉声で分かったはず。おそらくぺこーらは囮作戦の戦艦で戦っていて戦艦は沈没、そして敵国の奴らが海へ野放しにされたぺこーら達を『捕虜』としてつれていった。あの時に交戦していた敵国の兵の内、ぺこーらを見張るように指示されてここにいるのがこの女なんだろう。
???「そんなに怖がらなくたっていいんですよー」
「そんなの無理ぺこ。第一に敵対勢力の人間様の言いなりにはなりたくないぺこだし。」
???「えー残念♡もうちょっと心開いてくれたって良いのに〜♡」
まじでなんなんだこの執着さは……。
「…心開いてほしいならまずは名前から名乗るのが筋じゃねぇぺこか…。」
???「あっ!そうでしたね、失礼失礼〜…」
マジでこの女はなんなんだ…。
???「私の名前は────」
「マリンです。」
「…マリンぺこか。」
「呼び方は本当になんでもいいですよ、マリンとかマリちゃんでも!」
「最後のはなしぺこね。」
「えーーーーーーーガーン」
「なんで最初っから馴れ馴れしいぺこか、こっちはあんたら“人間”なんか“信用してない”ぺこ。」
「……え…そ、そういう考え方?なんですかぁ…」
「…考え方もなにも、あんたら“人間”が押し付けてk………」
グゥーー(お腹鳴る音(?)
「……あっ……。」
「っふ…wお腹鳴っちゃいました?笑」
「……っるせ…//」
「んじゃ、パン持ってきますね〜」
スタスタッ…(🏴☠️退出
「っは!?おい…!マリン!どこ行くぺこ!?」
「パンを取りに行ってくるんですー!(遠くから)」
「そ、そうぺこかー…」
「(……持ってきてくれるんだ。)」
「持ってきましたよ〜」
「半分ってことは……誰か食べたやつってことぺこか?」
「いや?私のやつから半分ちぎって取ってきた。食べなよ。」
「……毒とか盛られてねぇぺこよな?」
「いやいや…!そんなわけないじゃないですかマリンそんな人間じゃないですし…!」
「まぁさんきゅーぺこだけど…あんたは食べなくてもいいぺこか。」
「えーっと…!私はさっき食べたので大丈夫ですよ!ほら!…その…」
「…?」
「い、いつになったら“タメ”で話せますか……?」
「……パンくれたし……もう特別タメでいいぺこ。」
「……!!」
「…食べ終わった?」
「うん、ちゃんとしたご飯、久しぶりに食べた気がするぺこ。」
「……どうりでぺこちゃん職業軍人の割には細いわけだ。」
「……え?」
「ほら、えーっと…人間の私が言うのもあれなんだけど…獣人には魔法が使える階級と使えない階級があって、そこの人は敵艦の囮とか…担当するんだよね?で、魔法が使えない人にはちゃんとしたご飯をあげるわけにはいかないから……」
「……んで…」
「え?ぺこら?」
「なんであそこでぺこーらを死なせてくれなかったぺこか…!泣」
ギュッ(🏴☠️に抱きつく
「ちょっ!?ぺこちゃ…いきなりそんな…!」
「ぺこーら“なんて”ッ…役に立たない獣人なのに“ッ…泣グスッ」
「…役に立たないって誰が決めたんだよ?」
「……ッ“でも”ッ…(涙声)」
「ぺこら、お前は一体“誰のために”戦ってんだよ。」
ポンッ(👯の肩を支える?
「………ッ……」
「分からないなら、“ここ”で探せばいいんじゃない?」
「ッ…!……マリン……」
「肩に力入れすぎぺこ…!!!!」
バシッ(🏴☠️のお手手強制引き剥がし技(?)
「うわっ‥!ごめん!!」
「あんたはぺこーらと逆で力強すぎぺこ!!」
「はー?これくらい普通だろ!!てかさっきのシーンはあたしのかっこよさを引き立たせるところだったろ!力の入れすぎで雰囲気ぶち壊すな!!」
「意味わからねぇぺこよ…!あんた1人で漫才やってろぺこ!」
「ちょっ…w漫才じゃねぇしw」
「あふぁふぁふぁふぁふぁ…w」
「んーっと…そろそろ行くか〜…」
「え?もう夜ぺこだけどどこに行くぺこか?」
「…たばこ。」
「え、なんで吸ってるぺこか。嫌いなイメージあるぺこなんだけど…?」
「ほんとはそうなんだけど、あたしのところ、“吸わないとぶん殴られる”からさ。」
「そ、そうぺこなんだ………。」
ガラガラッ…(🏴☠️退出
……“人間”側のこと、何にも知らなかったから意外だな…。もしかして、
意外といい奴…?
「よし、もう寝るぞぺこちゃーん」
「え”なんであんたの隣ぺこか?」
「いやいや、捕虜と一緒に寝るっていうのが決まりだから。“こっち”の。」
「はぁ…意味わからないぺこねぇ…。」
「あ!どうせなら恋バナする?」
「はっ?恋バナ…?何ぺこかそれ。」
「”恋愛話”、好きな人〜とか好きなタイプ〜とか話すんだよ。」
「へぇー、ぺこーらはそういうのわからないぺこ。」
「まぁまぁこれから分かるかもしれないだろ〜?ニヤニヤ」
「何ニヤニヤしてるぺこか!!早く寝ろぺこ!」
「痛ってぇな!蹴るなよ!」
「あんたがきめぇ話ばっかりしてくるからぺこだろ。」
「まっ、あたしもそれっぽい人いないんだけどねw」
「じゃあもうほんとに寝るぺこよ。」
「おやすみ♡My Sweet Rabbit♡」
「きもっ。」
「うわーんひどーい…!」
相変わらずうるせぇ奴ぺこだな。マリンは。でも……なんて言うんだろう。
敵同士なのに、なんだか落ち着く。ぺこーらはマリンのこと、どう思いたいんだろう。
マリンは……こんなぺこーらのことを───────
どう思ってるんだろう。
【Side🏴☠️】
ぺこらを『捕虜』として保護してから1ヶ月が経った。私が初めて見たぺこらは今みたいに感情表現が豊かだとか、健康的にご飯も食べれるとかそういう状況ではなかった。保護して初日、私は本人に直接聞いてみることにした。どうやら兎の獣人には魔法が使える階級と使えない階級があるらしくて、使えない側はそれなりに酷い処遇を受けたらしい。
例え徴兵された兵隊でも魔法が使えなければご飯は“生のにんじん1本だけ”だったり工場で軍需品の製造の手伝いを長時間させられたり、優遇される側のサンドバックにならされたり。
一番酷いのは指揮官や上官が、絶対に生きて帰れるとは思えない囮作戦を実行させるありえないことをさせられたらしい。そしてその最悪な“囮作戦”に出撃させられたうちの1人が ぺこら。
これを詳しく語るには私の視点も必要で、あの時私は囮作戦用の戦艦が獣人王国軍の艦隊を先頭切って進んでいたのを見た。隣にいた指揮官が「撃て」と声をかけて、私、戦艦の乗組員の全員はぺこらの乗っている戦艦めがけて集中砲火を浴びさせた。他の敵艦隊が私の他の艦隊と交戦中だったのもあってか、抵抗の余地もない”囮戦艦“は大破して沈没。ところが損害を受けなかった部分もあったらしく、そこから海の水面には鉄の破片と塊、火と煙、死体に紛れて、溺れていた人が見えた。私は救命ボートに乗って、もがき苦しんでいた3人のうち、ぺこらをボートに急いで乗せた。そしてその日は基地に戻って『捕虜』の管理をするために私達は先に撤退した。そして私がぺこらを『捕虜』として面倒を見るよう指示を受けた。
確かに、今は“人間”と“兎の獣人”は戦争をしていて、それはお互いに嫌っているところもあるかもしれない。けど──────
“あの時”だけは違うのかもしれない。
***
「ぺこらただいまー」
「マリンおかえ………って、どうしたぺこかその傷!?」
“あの時”っていうのは、もちろん私はぺこらを面倒見ないといけないけど、正規軍なわけで、戦場に駆り出されることもある。まさにあの時がそうで、朝から夕方まで戦場で戦った。その日はいつもより状況が悪かった上に獣人の魔法階級の軍がしぶとかった。そしてその魔法攻撃を直接、左肩に受けた。腕は無くなってはないけど、もげる様な痛みである激痛が全てを抉った。状況が状況なのもあって撤退をすることはできなかったので死に物狂いで耐えるしかなかった。それはぺこらの前でもフリをして隠し通そうとしたが、部屋に入って3秒でバレた。
「……ごめんっ、被弾しちゃったかも…(苦笑)」
「『しちゃった“かも”』って…してるぺこじゃん…!今包帯もってk……」
「い、いいよ…!ぺこら…!そこまでやんなくても……」
「ダメっ…!!!!(大声)」
「ッ!?」
私はバレようが手当てはしようとは思わなかった。ぺこらには心配・迷惑なんてかけたくなかったし。だからこそ、あの時ぺこらが今まで私には見せてこなかった本音?を吐き出そうとしたのか、大声で私に怒った姿は驚いた。
「マリン…!お前もっと自分のこと大事にしろぺこよっ!」
「だってこんな傷、しばらく残るだろうし、治らないし……」
「そういうことじゃねぇ…ぺこ…!!ほら…手当てするから来いぺこ…。」
「わ、分かったよ…」
でも私は自然と手当てをしようとするぺこらに強く当たろうとはしなかった。
疲れてて自分が何もしたくなかったっていうのもあると思うけど。
「…これで大丈夫ぺこ。」
「あ、ありがと……ぺこちゃんってこういうの早いよね。」
「……手当ても担当してたぺこだし。」
「あたし、ぺこらのそういうとこ“好き”かもしれない。」
「は?好き”かも”しれないって何ぺこか。」
「こっちの話…!w」
***
「懐かしいなー…あいつがちゃんと心開いてくれて良かった…」
コンコンッ(🚪
「ん?誰だろ…」
「はーい。」
思い出に浸っていると突然ドアのノック音が聞こえた。
最初はご飯を食べに行っていたぺこらが部屋に戻って来たのかと思ったけど、その予想は打ち砕かれた。
ガチャッ(🚪開
『マリン、俺だ。』
「どうしたんですか?夜に」
相手は上官だった。上官が来たということは作戦を練るのかそれとも戦況報告か……のどっちかだと思う。
『ちょっとな、作戦の話をしたくてな。獣人王国軍が思ったよりしぶといんだ。』
「そうですか…。」
『基地の準備室まで来てくれないか?』
「…分かりました。」
はぁ…また戦争の話か。私は死にたくないし、ぺこらのそばになるべく居てやりたいんだよ。
早く話を聞いて部屋に戻ろう。
〜準備室〜
『みんな集まったか?』
<「「おっす!」」
「はい。」
上官がみんなに声をかけるとみんなは元気に挨拶した。大体私の部隊は男の人がほとんどだけど、私を含めた数人は女の人。
『俺がお前らをここに呼んだ理由は…………』
『作戦を“共有”したくてな。』
<「作戦の“共有”?」
<「今からみんなで考えるんじゃないのか…? 」
その言葉にみんながざわつく。私自身もこの時なにか嫌な予感した。
『実は、獣人王国海軍と徹底抗戦しないといけなくてな、1週間くらいは基地に戻ってこれねぇかもしれないんだ。しかも戦う相手は“魔法を使う獣人部隊”だ。』
<「な、なぁ…獣人部隊って………」
<「魔法を使う獣人の部隊だ…俺たち人間には………」
<「“手も足も出ねぇ”」
「っ!?」
最悪な予感が的中してしまった。もしかしたら私はこの作戦で
”生きて帰ってこれない“
かもしれない。
『みんなには申し訳ない。戦争も長期化するにしてるし、そろそろどこかで決着をつけなければお互い疲弊してどちらかに大幅な戦力が削られる。もしそうなれば特殊能力のない人間側は一気に不利になる。だからお前達には”魂を削ってまで“戦うしかないんだ。』
上官の言葉でみんなは先ほどの元気さがどこかに居なくなってしまった様に表情が曇る。
”生きる努力“は何度でもできるかもしれないんだろうけど、相手を考えると100%生きて帰れる保証はない。
『本当に申し訳ない。作戦当日、みんなが出来るだけ生き残れるように願う。解散。』
みんなは一言も喋らずに準備室をぞろぞろと後にする。あんな言葉の後じゃあ何も言えなくなるのは必然だろう。それは上官も、私も同じだ。
「……ぺこらに謝らなきゃ…笑」
私はその日から乾いた笑いでしか笑えなくなった。
【Side👯】
マリンがこの部屋に来なくなってから2週間。あいつが部隊の招集から帰って来た時に元気のない声で「今度は1週間海で戦わないといけなくなった。」と言っていた。もちろんあいつは戦争に行くわけで、”戦死“だなんて考えを頭の中でよぎらせたくないけど、あり得ないわけではなかった。なんだろう、あいつに拾われる前は人間なんてただのクズだと思ってたのに。
今じゃあり得ないくらい仲良くなってしまった。分からないこともたくさん分かるようになったし。でも唯一分からないとすれば”恋愛“、”恋“のことについて。あいつは
「特定の相手にドキドキしたり、気になる子が別の子と話してたらなぜか自分が嫌な気持ちになったら それを”恋“って言うんだぞー♡」
って言ってたけど結局ハッキリとした定義が分かってない。
「だとしたらぺこーらがマリンに抱える“気持ち”も……恋ってことぺこ…?」
「…だったら……早く帰って来てぺこよっ…マリンッ………。」
コンコンッ(🚪
ドアをノックする音が聞こえた。
「もしかしてッ……マリンぺこか……!!」
ガチャッ(🚪開
「…え…」
相手はマリンでもマリンの上官でもなく、基地の配備兵だと思われる人物だった。
『…ぺこらという人物はお前か。』
「そ、そうぺこですけど………」
『お前宛にマリンから一通の手紙が届いている、読め。』
「………ッ……!」
”一通の手紙“、これは戦争の世界で何を意味するのかをぺこーらは知っている。
あまりにも早く“現実を突き付けられた”様な気がして、何か良くない気がして。ぺこーらは今にも溢れそうな涙を堪えて、けれども涙声で配備兵にこう聞いた。
「あのッ……!マリンはッ…今どこにッいるぺこ……!」
『マリンは──────────────────』
『“戦争で 死んだ”。』
「ッ…!?」
『…すまん、俺はこれから仕事がある…。』
ガチャンッ…(🚪閉
「ッ…なんでッ…泣グズッ…マリン“ッ……!!泣」
配備兵から間接的に渡された“一通の手紙”────これは
“遺書”だった。遺書はぺこーらの涙と強く握りしめたせいである意味ぐちゃぐちゃだった。
「マリンからの遺書……読まなきゃッ………泣」
『遺書』
ぺこらへ、これを読んでるってことはまず私はもう戦争で死んだんだと思う。
ぺこらとの出会いが、“戦場”だなんてほんとにこの世の中終わってるなーって思ったけど
私はぺこらと出会えて良かったと思うし、正直“好き”だった。ぺこらはあの時はどうしようも
ない人間嫌いだったのに、私には心を開いてくれて、傷の手当てもしてくれて、
夜、しょうもない話もちゃんと聞いてくれて…私は幸せだったと思う。
でもぺこらには私にとらわれないで幸せになって欲しい。約束だからな?
そして最後にまた言うけど、ぺこらのこと本当に好き、愛してる。
もし来世で会うことになったら、ずっと一緒にいたい。
バイバイ、ずっと愛してる。
マリン
「う“ッ………泣ばかぁ……泣まりんのばかぁぁぁぁ泣泣泣」
「ぺ”こ“ぉらのことが好きなら”っお“いてくな“よ”ッ泣ぁ“あ”あ“……泣」
ぺこーらは感情むき出しで大声でたくさん泣き叫んだ。
あれから数ヶ月後。
戦争は両国の首脳の話し合いによってどっちの勝敗も決まらぬまま戦争は終戦を迎えた。
ぺこーらは『捕虜』ということで戦争が終わってから王国に引き渡された。
戦争が終わったとはいえ、どこもかしこも荒地で戦争の荒廃が虚しく広がるだけだった。
それでも”人間“と 戦争をしたがる獣人達も居て、ぺこーらはマリンの存在しない世界で
泣き崩れることしかできなかった。
[END]







