テラーノベル
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壱月が、こそこそとなにかをしている。
そのことに気づいたのは、私と花斗をお風呂を出た後だった。
「壱月、お風呂どうぞ」
リビングにいる壱月に声をかけると、彼は開いていたタブレットを後ろ手に隠した。
「おう」
壱月はタブレットを持ったまま、廊下へ。
「壱月、それ持っていくの?」
「ああ。風呂の中でドラマ見るの。構わないだろう、別に」
「ふーん……」
絶対に言い訳だと思いながら、花斗に「先に寝ようか」と声をかける。
花斗と一緒に布団に入り、花斗が寝入っても、壱月は戻って来なかった。
*
それから三日。
一昨日アメリカのLAへ飛んだ壱月は、家に帰ればきっともうそこで夕飯を準備して待っているはずだ。
仕事を終え、保育園で花斗をピックアップしてから帰宅する。
すると、なにやら部屋内ががたがたと騒がしい。
「壱月?」
廊下からこっそり、リビングを覗く。花斗も真似をして、ひょこっとリビングに顔を出す。
「あ!」
花斗と同時に、驚きの声がもれた。
寝室と壱月の部屋の扉が、開いていたのだ。
壱月は寝室からひょっこり顔を出して、ため息をついた。
「もう、帰ってきたのか」
右手には工具、そして左手には木の板。なにかの組み立て途中らしい。
花斗がパタパタと駆けて行き、寝室を覗いた。
「わぁ!」
私も花斗を追いかけ、寝室を覗く。
「噓でしょ」
そこにあるのは、一台のベッドとおそらく組み立て途中である机。
「完璧に整えて、花斗が帰ってきたら『じゃじゃーん!』と、披露するつもりだった」
それで、壱月はもう一度ため息をもらす。
けれど花斗は、さっそくベッドの縁に腰かけ「ぼくのへや!」と声を上げた。
壱月は夕飯もきっちり作ってくれていた。
机の組み立ては壱月に任せ、私はキッチンで壱月特製のビーフシチューを温める。
皿に盛り付けフランスパンを切って添えれば、ただ温めただけなのになぜか一流シェフの気持ちになる。
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そんなシェフ気分をひとり味わっていると、壱月と花斗の会話が聞こえた。
「ママとパパは、こっちでねるの?」
「そうだよ」
「ベッド、ひとつしかないよ?」
「いいの、ママとパパはラブラブだから」
「ズルいー」
「ズルくないです、いいんです」
なにを話しているのだと、寝室へ向かう。
花斗と壱月はちょうど壱月の部屋の前にいる。
「ご飯できたよ」
と言えば、ふたりがこちらを振り返る。
その間に、壱月の部屋の中を覗く。
「え……」
絶句した。
壱月が使っていた机も本棚も、申し訳なさそうに隅に追いやられ、部屋の真ん中にはダブルベッドがひとつ、ボンっと置かれていたのだ。
『愛音と部屋を一緒にしたら、今よりもっと愛音と触れ合う時間ができるだろう?』
数日前に壱月に冗談交じりに言われたことを思い出す。
それから、コソコソとなにかを調べていたことも。
花斗の部屋だけじゃなくて、こっちもってこと!?
一緒に住み始めた時も、壱月はベッドにベビーチェアに、ひとりで全部手配してくれた。
初めてのふたりきりのデートの時も、ジョージさんのパーティーにお邪魔した時も。
その計画性と行動力は、ずっと前から尊敬していたけれど。
思わず立ち止まり、目をぱちぱちとさせていると、壱月にぽんっと肩を叩かれた。
「今夜から、よろしくな」
意味深な言葉に、胸がドキリと鳴る。
「ちょ、ちょっと壱月……」
「ほら、ご飯だろう? 冷めちゃう冷めちゃう」
壱月はわざとおどけて、花斗をダイニングへといざなう。
私は胸の高鳴りが収まるのを待ってから、ダイニングへと戻った。
コメント
1件
あああ第95話読んだよ〜!!😭💕 壱月がこっそり花斗の部屋を整えてて、しかも自分の部屋までダブルベッド仕様にしちゃうとか、計画性と行動力バケモノすぎる…!「今夜からよろしくな」の意味深発言に胸がきゅんきゅんしたよ〜💘 ラブラブなパパママに花斗の「ずるいー」も可愛すぎて悶えた。 この家族の未来、幸せすぎて泣ける…次の話も楽しみにしてるね🌸✨