テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
7,359
28
🦈「……え?」
それは、こさめ自身の声だった。
なつが数回まばたきする。
いるまは額を押さえた。
📢「最悪だな」
🦈「何が!?」
📢「新人が特級案件の中心になった」
🦈「だから何が!?」
📢「面倒だ」
🦈「説明してください!!」
すると周囲が一気に騒がしくなった。
「どういうことだ!?」
「人類の未来の所有者が新人!?」
「あり得ない!」
「システム故障じゃないのか!?」
職員たちのざわめきが広がる。
だが主任は冷静だった。
主任「静かに」
その一言で全員が口を閉じる。
主任は端末を確認する。
顔色がどんどん悪くなっていく。
主任「……故障ではありません」
誰かが息を呑む。
主任「所有者候補として正式に登録されました」
「そんな」
🦈「どういう意味ですか?」
こさめは主任を見る。
主任も困惑していた。
主任「通常、遺失物には所有者情報が記録されています」
🦈「はい」
主任「だが今回の『人類の未来』には持ち主が存在しなかった」
🦈「……」
主任「しかし今、初めて反応が出た」
主任は言う。
主任「お前が未来に触れている可能性がある」
意味が分からない。
こさめはただの新人だ。
世界を救う英雄でもなければ、選ばれた存在でもない。
どこにでもいる普通の職員。
なのに。
なぜ。
🦈「こさめ、何もしてないです」
ぽつりとこさめが言う。
?「本当に?」
不意に聞こえた声。
振り返る。
そこには見知らぬ男が立っていた。
黒いコート。
遺失物センターの制服ではない。
その瞬間、空気が変わった。
周囲の職員が一斉に姿勢を正す。
なつですら顔をしかめた。
🍍「げ」
🦈「げ、って何ですか」
📢「面倒なの来た」
いるまも露骨に嫌そうな顔をする。
男はゆっくり近づいてくる。
靴音だけが響く。
そして、こさめの目の前で止まった。
?「初めまして」
男は静かに微笑んだ。
優しそうな顔立ちなのに、どこか近寄りがたい。
🍵「監査局特別調査官、すちと言います」
🦈「監査局……?」
🍍「神様直属機関」
なつが小声で説明する。
🍍「センターより偉い」
🦈「えっ」
🍍「めちゃくちゃ偉い」
こさめは慌てて頭を下げた。
すちは軽く手を振った。
🍵「そんなに緊張しなくていいよ」
そう言う声は穏やかだった。
けれど、その瞳だけは鋭かった。
まるでこさめの奥の奥まで見透かしているみたいに。
🍵「君がこさめ?」
🦈「は、はい」
🍵「一つ質問するね」
すちの視線が真っ直ぐ向けられる。
🍵「君は本当に、自分が何者か知らないの?」
ぞくり。
嫌な予感がした。
こさめは首を傾げる。
🦈「何者って……」
🦈「普通の職員です」
🍵「そう」
すちは少しだけ目を細めた。
🍵「なら大問題だね」
問題?
次の言葉に、その場の全員が凍りついた。
🍵「君は君の職員記録が存在しない」
沈黙。
こさめは聞き間違いかと思った。
🦈「……え?」
🍵「履歴がない」
すちは端末を見せる。
そこには確かに、何もなかった。
空白。
真っ白。
🍵「入社記録なし」
🍵「出生記録なし」
🍵「学歴なし」
🍵「経歴なし」
🍵「戸籍情報なし」
🍵「存在証明なし」
一行ずつ読み上げられる。
🦈「そんな……」
こさめの声が震える。
だって覚えている。
学校に通った記憶もある。
家で過ごした記憶も。
友達も。
日常も。
全部。
ちゃんと覚えている。
なのに。
🍵「君という存在だけが、世界の記録から抜け落ちている」
すちは静かに告げた。
🍵「あり得ない話」
なつが眉をひそめる。
🍍「偽造じゃないのか」
🍵「違う」
🍍「誰かが消した?」
🍵「それも違う」
すちは首を振る。
そして。
🍵「最初から存在しない」
その言葉が落ちた瞬間。
こさめの頭が真っ白になった。
存在しない?
自分が?
そんな馬鹿な。
だが誰も笑わない。
冗談ではないからだ。
するとその時。
第五保管区の奥から、パリン、とガラスが割れるような音が響いた。
全員が振り返る。
保管棚の一角。
そこにあった空間が、ひび割れていた。
まるで世界そのものに亀裂が入ったみたいに。
職員たちが青ざめる。
「まずい」
「未来崩壊が始まってる!」
「もう!?」
すちの表情が初めて険しくなる。
🍵「一年も持たないかな」
その亀裂の向こうには。
真っ黒な何かが蠢いていた。
光も音も飲み込む闇。
そして、その闇の中から。
誰かの声が聞こえた。
『見つけた』
低く。
不気味な声。
『やっと見つけた』
ぞわり、と背筋が凍る。
その声は明らかに――
こさめへ向けられていた。
コメント
1件
読み終えた感想です。 「最悪だ」3話、一気に世界観が広がってすごく引き込まれました。こさめの存在記録が一切ないという衝撃、そして未来の崩壊と謎の声…設定の奥深さにワクワクしてしまいます。これからどう繋がるのか、伏線が気になって仕方ないです。面白かったです!