テラーノベル
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『見つけた』
低く響く声。
『やっと見つけた』
その瞬間。
保管区の温度が一気に下がった。
職員たちの顔から血の気が引く。
ひび割れた空間の向こうで、黒い闇がゆっくりとうごめいていた。
主任「全員下がれ!」
主任の怒鳴り声が飛ぶ。
職員たちが一斉に避難を始める。
だが、こさめだけは動けなかった。
なぜなら。
闇の奥から伸びてきた黒い腕のようなものが、真っ直ぐこさめへ向かっていたからだ。
🍍「こさめ!!」
なつが叫ぶ。
その直後。
ガキィン!!
金属音が響いた。
黒い腕が途中で弾かれる。
こさめの前に立っていたのは、すちだった。
いつの間に抜いたのか、銀色の細い剣を片手に構えている。
🍵「下がって」
穏やかな声。
けれど目は笑っていない。
黒い腕が再び襲いかかる。
すちは片手で剣を振った。
一閃。
闇が切り裂かれる。
空気が震えた。
こさめは思わず目を見開く。
🦈「す、すご……かっこよ」
📢「感心してる場合じゃない」
後ろからいるまに襟を掴まれる。
🦈「わっ」
📢「逃げるぞ」
🦈「でも!」
📢「今のお前はなぜか狙われてる」
なつも駆け寄ってくる。
珍しく笑っていない。
🍍「こさめ」
🦈「はい」
🍍「絶対に俺たちから離れるな」
その言葉に、こさめは小さく頷いた。
その時だった。
闇の中から笑い声が聞こえた。
?『相変わらず邪魔だなぁ』
すちの眉がわずかに動く。
?『監査局の犬さん』
空気が凍った。
職員たちがざわつく。
だが、すちは平然としている。
🍵「誰だ」
?『忘れたの?』
闇が揺れる。
?『まあいいや』
?『今はその子を返してもらいたい』
その瞬間。
全員の視線がこさめへ集まった。
こさめ自身も意味が分からない。
🦈「返す……?」
誰に?
何を?
そもそも自分は誰なんだ。
すると闇の声が笑った。
?『可哀想に』
?『何も覚えていないの?』
ぞくり。
胸の奥が痛んだ。
頭の中で何かが引っかかる。
知らないはずなのに。
その声を聞いたことがある気がした。
?『君は――』
🍵「言わないで」
すちが遮った。
今まで聞いたことのない冷たい声だった。
闇が笑う。
?『隠しても無駄だよ』
?『一年も持たない』
?『未来はもう失われた』
?『いずれ全部思い出す』
空間のひびがさらに広がる。
まずい。
誰もがそう思った。
だが次の瞬間。
こさめの胸元が淡く光り始めた。
🦈「え……?」
職員証じゃない。
制服の内側。
心臓の辺り。
柔らかな青い光。
闇がぴたりと動きを止めた。
?『……なに?』
初めて声に動揺が混じる。
光はどんどん強くなる。
暖かい。
懐かしい。
なぜか涙が出そうになる。
すると――
こさめの脳裏に、一瞬だけ景色が浮かんだ。
青空。
どこまでも続く白い雲。
誰かの手。
優しく頭を撫でる感触。
『未来を預けるね』
知らない声。
なのに。
どうしてこんなに悲しいんだろう。
?『っ……!』
闇が後退した。
明らかに怯えている。
?『あり得ない』
?『まだ残っていたの‥?』
🍍「こさめ!」
なつの声で我に返る。
気づけば光は消えていた。
闇もひびの向こうへ引き始めている。
?『また来るね』
最後にその声だけが響いた。
?『今度こそ迎えに行くよ』
そして。
ひび割れた空間はゆっくり閉じた。
静寂。
誰も喋らない。
全員がこさめを見ている。
こさめは困ったように視線を泳がせた。
🦈「……えっと」
沈黙。
🦈「こさめ、何かしました?」
📢「してない」
即答したのはいるまだった。
📢「少なくとも本人はな」
🦈「じゃあ何だったんですか今の」
🍵「それを調べるのが仕事だよ」
すちが剣をしまいながら近づいてくる。
その表情はさっきまで以上に真剣だった。
🍵「こさめちゃん」
🦈「はい」
🍵「今日から君は保護対象になる」
🦈「ほご?」
🍵「単独行動禁止」
🦈「えっ」
🍵「監査局預かりだね」
🦈「ええっ!?」
こさめが悲鳴を上げる。
なつが吹き出した。
🍍「終わったな」
🦈「何がですか!」
🍍「すちに管理される」
🦈「嫌なんですけど!?」
🍍「残念だったな」
いるままで笑っている。
こさめは半泣きになった。
🦈「普通に働きたいだけなのに……」
しかし。
その言葉を聞いたすちは、ほんの少しだけ表情を曇らせた。
まるで。
「普通」がこさめにはもう許されないと知っているように。
そしてその夜。
監査局の極秘資料室で。
すちは一人、封印指定された古い記録を開いていた。
そこに書かれていた名前を見た瞬間。
すちの瞳が大きく揺れる。
🍵「……まさか」
記録の日付は、遺失物センター創設以前。
数千年前。
そして資料には、こう記されていた。
**『人類の未来 管理者候補 第零号』**
その下には。
新人職員こさめと全く同じ顔の少年の写真が貼られていた。
コメント
1件
わあ、第4話、面白かったです!すちさんの剣さばきがかっこよくて、一瞬で空気が変わるところがすごく良かった。それにこさめの胸元の青い光といい、「未来管理者候補 第零号」の記録といい、伏線が一気に動き出した感じですね。数千年前の写真がなぜ今のこさめと同じ顔なのか…気になりすぎます。「普通でいさせてほしい」って願いがもう叶いそうにない切なさも伝わってきました。続きが待ち遠しいです。
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