side.Mz
「嫌〜な雰囲気……」
「スラムだからしょうがないだろ。目的地まで行くぞ」
「はぁーい」
げっそりした雰囲気のアモルを連れてスラムの道を歩く。スラムとだけあってガラの悪い奴らしか居ない。そいつらの目線の先にはアモルが映っている。本人もそれに気づいているらしく前髪の隙間からゴミを見るような目で睨みつけている。
「きしょ…僕男なんですけど…」
「汚い欲の塊だな…」
「さっさと終わらせて帰ろ…わっ」
「離れんなよ」
「ん…」
アモルの手を引いてさっさと向かう。別になんてことないけどアモルの身に何かあったら困るから。目的地に近くなる度重苦しい空気と血の匂いが強くなる。解体も同じ場所でやってるのかよ……。アモルも服の袖で鼻と口を覆って顔を顰めている。
「おう、そこの兄ちゃんや。ちいと寄ってかんかい?」
後ろから声をかけられた。ケルレウスが見せた顔と一致している。こいつか……。アモルが人売りをバレない程度に睨みつける。敵意を見せたら終わりだ。
「寄るって…どこに?」
「俺がやってる娼婦の店さ。兄ちゃんは特別に安くしておくよ。どうだい?悪い話じゃないだろう」
悪い話でしかねえだろ!!それで誘い出して女高値で売りつけるだろ!!お見通しなんだよ!!
そう思って黙ってれば人売りがアモルの姿に気づいて目を輝かせる。
「おい兄ちゃん、いい女連れてるじゃないか。こいつを俺が高値で買い取ろうか?どうせ兄ちゃん、金に困ってるだろ?」
騙されやがって、こいつ男だぞ。なんなら金にも困ってねぇぞ。そう思いながら用意したセリフを口にする。
「悪いけど、こいつはアンタにやらねぇよ。自慢の妹だもんで」
「兄様……」
咄嗟にアモルも合わせる。コンビネーション良すぎだろ俺ら。そう思いながら目だけを動かして一味の姿を確認する。バレないように囲んでいるつもりだろうが同じ刺青を入れているおかげですぐに分かった。
およそ10人。リーダー格と思われるやつは今俺に話しかけている奴だ。敵の人数だけバレないように待機しているフラヴスに伝える。10回マイクを叩けば1回叩く音が聞こえる。あとはこいつらが敵意を剥き出しにすればいい……。
「話はそれだけか?無駄話に興じる趣味はないんだ」
「待てよ、女は置いてけ。お前よりも俺の方がこいつを上手く扱えるからな」
「それはどうかな?たかが数分話しただけのお前がこいつを扱えるとは思えないが」
「チッ………」
舌打ちと共に人売りはアモルの腕を掴む。視界に映るアモルは口の端を持ち上げる。意図を汲み取った俺は叫ぶ。
「やるぞ、アモル!!」
「はいよー!!」
アモルが人売りの鳩尾に蹴りを一発入れたと同時に俺も周囲の一味をハンドガンで撃つ。慌てたように銃を構える一味は俺がすぐに撃てば倒れていく。アモルは撃てずにいた一味を回し蹴りで気絶させていく。
「ッんだテメェら!!」
「俺ら?お前らを始末しにきた奴らだけど?」
「あ、ちなみに見事に騙されてたっぽいけど僕男なんだよね〜。目腐っちゃってるのかな?」
「クソが……!!」
気絶させた奴らの喉笛をナイフで掻っ切りつつリーダーを追い詰める。一味は雑魚中の雑魚だったがリーダーはそうはいかない。でかい図体してるくせして無駄に素早い。なかなかハンドガンで捕まえられず銃弾は外れてしまう。アモルも応戦してはいるものの疲労のせいか動きが遅くなっている。ほんの一瞬、時が止まったように見えた。
「あ”がッ………」
「アモル!!」
「大人しくしろ!!お前が動いたらこいつが死ぬぞ!!」
蹴りを外したアモルの隙をついて鳩尾に拳を一発めり込ませたリーダーはアモルを人質に取った。その手には拳銃、アモルの脳天に突きつけられている。
「ゴミが……!!アモルを離せ!!」
「離せと言われてすぐに離すやつがいるか!!こいつは俺の性奴隷として一生働かせてやるからな!!」
この状況で俺は銃を撃つことはおろか動くことも許されない。頼みの綱は廃ビル上にいるフラヴスだけ。マイク通信はONになっているためこちらの会話は聞こえているためフラヴスは動けるが問題は人質に取られているアモルの方。フラヴスのスナイパーならヘッドショットを決められる可能性は高いがアモルも同時に大怪我を負う可能性がある。それは最悪の場合、死に繋がるだろう。
クソッ、どうにかしねぇと膠着状態になって何も出来ねぇ。チラリとアモルの方を見ると自由がある脚を構えていた。
「ねぇ、人売りさん。僕が素直に大人しくしてると思う?」
「はっ、流れは俺の手の内にある。大人しくする以外に選択肢はない」
「それは本当にそうか、なっ!!!!」
「がはっ!!」
アモルがリーダーの玉を蹴り上げ、力が抜けたところですり抜けてこちらに来る。
「ごめんねオルフェン、心配かけちゃって」
「ったく、隙見せてんじゃねぇぞ」
「えへへ」
悶えるリーダーを他所に俺はフラヴスに連絡する。
「こちらオルフェン。アモルは解放したからいくらでも撃っていいぞ」
『こちらフラヴス。…一発で仕留めれるから死体撃ちはオルフェンがやってね』
言い終わると同時にリーダーの脳天から血が吹き出す。アモルを人質に取った罰として俺もリーダーの玉を踏み潰してやった。「そんなにする必要ある?」とアモルは言っていたが必要しかないだろう。
ビル上からひらりと降ってきたフラヴスと合流して基地にいるケルレウスに報告を入れる。
「こちらフラヴス。撃破目標の殲滅完了、応答願う」
『こちらケルレウス。お疲れ様、帰っておいで』
「了解」
車の中で疲労が限界を迎えたのか寝てしまったけちゃを後部座席に寝かせて助手席に座る。数分で着くものの確かに歩きではきついものがある。
「けちち寝ちゃった?」
「ああ、普段前線張らない分の疲労だろうな。俺がヘマしたせいで人質に取られたし……」
「まぜちのせいじゃないよ。全部人売りが悪い。殲滅できたから大丈夫」
「そう…だな。明日はゆっくり寝かせてやるか」
「そうそう!!任務があったら休息をとる!!大事だよ〜!!」
失われた秩序を取り戻し、反社会的勢力を殲滅する。無関係の市民がもう二度と怒りと憎しみの涙を流さないように。今日も俺ら特殊殲滅部隊AMPTAKは夜闇を駆ける。
新曲良すぎて飛びそうです。
これとは別のシリーズものを書きたくてしょうがないです。
コメント
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オルフェンがカッコよすぎる!!あとフラヴスの「一発で仕留めるから死体撃ちはオルフェンがやってね」っていうちょとかわいい口調なのに一発で殺るところとかが良すぎる!!惚れてまうわ!!はよ続きが読みた過ぎてやばいっス!! AMPTAKの最新曲最高すぎますよね!!カッコイイ感じのラップで俺何回も数え切れないくらい聞きました!! 続き楽しみにして待ってます!! 長文失礼致しました!!