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無害な神様。
……?おや、こんなところに珍しい。君は……あぁ、なるほどね。
まだ僕を信じて祈ってくれてるんだね。有難いよ
僕は誰かって?見た目で分からない?神様だよ。
ふざけてるのかって……君ねぇ。
神じゃなかったら、服が布一枚で、宙に浮いてる変態じゃないか。
……失礼、言い方が悪かった。
でも本当なんだ。
羽もなければ糸もないのに浮いてる存在なんて、
神か、夢か、頭のおかしい何かくらいしかないだろう?
もっとも、
今の僕を見て「神だ」と思える人は少ない。
奇跡は起こせない。
雷も落とせない。
海も割れない。
できるのは――
こうして、君の前に現れて、
昔話をするくらいだ。
まぁ?昔なら、奇跡も起こせたし、カミナリも落とせたし、海も……われないわ。あれは無理。
でも、最近は神様を信じる人が減ってさ、力がないんだよ。
前までは、しっかり正しい方法で僕は崇められてきた。
しかし今はどうだ?
神様という言葉を使って人を騙して、利用して……
こんなの、僕が望んだ信仰じゃない。
祈りっていうのはね、
願い事を投げつける行為じゃないんだ。
「助けてくれ」
「叶えてくれ」
それだけじゃ、祈りとは言えない。
本当の祈りっていうのは、
自分が何を恐れていて、
何を失いたくなくて、
それでも前に進もうとする気持ちを、
そっと差し出すことなんだよ。
あ、それに昔、神は死んだって言われたもんね!!あれすっごく気にしてるからァ!!!しばらく拗ねたからぁ!!!
生きてるからぁ!!
……ほんと失礼な話だよ。
「神は死んだ」とか、
勝手に宣言されてさ。
死んでないし。
ただ――
呼ばれなくなっただけ。
祈られなくなって、
名前を呼ばれなくなって、
物語にも出てこなくなって、
気づいたら
「いなかったこと」にされただけ。
それを「死んだ」って言うなら、
人間だってそうじゃないか?
誰にも思い出されなくなったら、
存在してないのと同じなの?
……まぁ、
そういう意味では、
ちょっと危なかったけどね。
本当に、
消えかけてた。
でもさ、
君が今、僕を見てる。
それだけで、
「死んだ」判定は取り消しだろ?
ねぇ、知ってる?
神ってね、
「信じられた分だけ」
形になる存在なんだよ。
ほら、お化け信じるから怪奇現象が起こるのと一緒だよ。
あれ実際起きてないから、多分。
……多分、ね。
でもさ、人間にとっては
「起きたと思った」時点で、
もう“起きた”のと同じなんだ。
夜に物音がした。
暗闇で影が動いた。
誰かに見られてる気がした。
それが本当にあったかどうかなんて、
もうどうでもよくて。
「そうだと思った」
その瞬間に、
世界は少しだけ、
そういう形に歪む。
神も、幽霊も、呪いも、奇跡も。
全部それ。
誰かが強く信じると、
輪郭を持つ。
誰も信じなくなると、
薄くなる。
……消える。
昔はね、
僕の名前を呼ぶ声で
街が揺れた。
戦の前には祈られ、
嵐の前には供物を置かれて、
子供が生まれれば
「神の加護だ」って言われた。
今はどうだい?
検索すれば、
「存在しない」って書いてある。
図鑑には載らない。
物語にも出ない。
てか神が機械触るとはすごい時代だよね。
僕も触れると思ってなかったからさ。
ほら、君の家の近所にある図書館、
あそこで調べたんだよ。☆
え?
なんで家知ってるかって?
……そりゃ、神だから……?
いや、冗談冗談。
そんな万能じゃないよ。
たまたま、君がよく通る道に
僕の祠があっただけ。
……覚えてない?
ほら、あの公園の端っこ。
草に埋もれて、
誰も手を合わせなくなった石。
あれ、僕。
前はね、
あそこに行列できてたんだよ。
雨乞いとか、恋愛成就とか、
「テストでいい点取れますように」とか。
欲望まみれだけど、
ちゃんと信じてた。
今はさ、
ベンチの下にゴミ入れられて、
子どもに落書きされて、
犬に……まあ、うん。
うん。
結構ショックだったけど、
まぁ、神様の大きな器で許してあげましょう。
……って言いたいところだけどさ。
正直に言うと、
普通に傷ついた。
だって昔は、
供え物があったんだよ?
果物とか、花とか、
たまに変なの(なぜか乾電池)とか。
それが今じゃ、
空き缶とレシート。
供える文化、
どこいった。
でもね、
それでもあの場所を
離れなかったのは――
たぶん、
君が見てたから。
「まだ壊されてないな」
って顔で、
一瞬だけ視線を向ける。
拝まない。
祈らない。
でも、
“ある”って認識する。
それだけでさ、
神って、
意外と保つんだよ。
……安い存在だろ?
あ、でもお供え物には甘いの欲しい……
最近見ちゃったんだよ、マカロンってやつ……!!
いいなぁ!カラフルでさ、丸くてさ、
あれ絶対、神に捧げる形してるでしょ!?
してるよね!?してるって言って!!
昔はさ、
団子とか果物とかだったんだよ。
素朴で、噛みしめるタイプの信仰。
なのに今は何?
砂糖とアーモンドと
オシャレの塊じゃん。
信仰、進化しすぎ。
……あ、でも勘違いしないで。
別に「捧げろ」って言ってるわけじゃないからね?
たださ、もしだよ?
もし君が間違えて、
余ったマカロンを
ここに置き忘れたりしたらさ?
それはもう、
神として処理する義務があるよね。
仕方ないよね?
供えられたものを
放置したら腐るし。
腐ったら
衛生的にまずいし。
つまりこれは
世界のため。
世界平和のための
マカロン。
……何その顔。
疑ってる?
ひどいなぁ。
僕、雷も落とさないし、
呪いもかけないし、
ただ甘いものに弱いだけの
無害な神なのに。
あ、これ意外とパワーワードってやつかも?
やったぁ流行りにのれ……
てない?古い?
もぉぉ!最近の子わかんないよぉ!
まぁ、1回話を戻そうかな
さっきも言った通りさ、僕は信仰されている間、覚えられてる間だけ存在できるんだ。
今は科学とかで今まで起きてきた出来事が証明されてきて、神っていないのでは?ってなってるでしょ?
だから僕を信仰する人減っちゃってさ。
結構寂しい場所になっちゃったんだよね。
なのに、世間では神を利用して1儲けしようとしてるやつもいる。
たしかに、覚えてもらえているから存在はそれでも消えないよ。でも……そんな事されて生きるなんて、僕我慢できない。生き地獄だよ
ねぇ、君はさ?どうやったら僕がこの世から消えることが出来ると思う?
……なんでそんなこと聞くのかって、理由は言ったでしょ
………何をすればいいか、わかってるはずだよ
……そう?辞めない?ならいいよ
ごめんね!暗い話して、明るい話にしようか。ほら、マカロンの話
あ、またそれ?って顔した
だって食べたいんだもん!!!
……あ、もう行くの?
そっかぁ。仕方ないね。
じゃあ、気をつけて帰るんだよ。
転ばないでね。
空見上げたら、たまにでいいから思い出してよ。
「変な神いたなぁ」って。
あ、マカロン忘れないでね?
約束だからね?
忘れたら……
……泣く。静かに。
僕のこと忘れても泣くから。
マジで。うん。
じゃあね。
ばいばい。
おわり
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