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珍しい人からメールが届いた
同期の小山田さんから届く
個人的な社内メール
タイトルのないそのメールに
妙な胸騒ぎを覚えながら
恐る恐る開封する
鈴木さんの件聞いてる?
鈴木さん、クビになるっぽいよ——
要点だけを突いた短文の
その強烈なインパクトに
一瞬固まってしまった
人事部の小山田さんは
いち早く鈴木さんの状況を察知したのだろう
恐らくはそれ以前から
先日ランチを一緒にした時も
それとなく状況は知っていたに違いない
予想はしていた事だが……
鈴木さんには
同期女子の中では最も親近感を感じていた
後に夫の浮気相手と知る事になるが
私にとってはそれなりに親しかっただけに
何とも言葉にならない
そうなんだ……
それって最近噂になってる購買部の疑惑が要因?
返す言葉に戸惑いながら
恐る恐る小山田さんへ返信する
わざわざ事前に伝えてくれたのだ
同期女子のよしみあっての事だろう
愛想笑いの傍観者だった私も
その輪の中には居たのだ
小山田さんからの返信メールは
まるでチャットのように
直ぐに返ってきた
担当の取引先と癒着してたみたい
お金と契約が絡む事だから……
クビで済むかどうかも分からない
相手側の取引先も同じような状況みたい
社としての信頼にも関わる事だし
少なくとも今後うちとの取引は無いでしょ
あっちも損害ヤバいと思う
——純也の事だ
「……」
やはり
純也も解雇は免れないのだろうか
それどころか
損害賠償を請求される可能性すらあるのかもしれない
純也は
どうなってしまうのだろうか
そして
私は
どうなってしまうのだろう
私達に
未来はあるのだろうか
私に宿った
私達の子は……
私は
決断をしなければならない
リュカにも
これ以上迷惑を掛けられない
もうその時が来て久しく
時間の猶予など
もう残されていない
にも拘わらず
分かっていて尚
決断できない自分が憎い
***
案の定
純也は私より先に帰宅していた
あの日以来
ずっとそうだ
それでも
自身の状況については
何も私に話してくれない
にも拘わらず
以前に比べれば
余計な話は多少するようになった
だが
その言葉の節々に
嫌味や
詮索が感じ取れ
余計に嫌悪感が増してしまう
夫婦の会話が増えるのは
良い事のはずなのに
その一般論は
私達には当てはまらない
純也とて
私と居る時間は快適ではないはず
にも拘わらず
私の帰宅時間の遅さや
休日の外出に
やたらと口を挟もうとする
ただでさえ妊娠により情緒が不安定
言葉の節々の
些細な事が
私の嫌悪感を刺激して止まない
居ても立っても居られず
自宅という空間から
逃げ出したい衝動に駆られる
***
結局
リュカに返信出来ぬまま
週末を迎えてしまった
休日出勤して会う誘いにも
回答出来ていない
リュカも
深追いはして来なかった
今まで楽しみだった
リュカと会える絶好の機会
その折角の誘いすらも
私は無下にしてしまった
未だ純也の眠る土曜日の朝
気だるい体を奮い立たせ
気だるい体でキッチンに立つ
こんな状況に至っても尚
主婦の務めを放棄出来ず
朝から純也の食事を作る
務めでも何でもない
ただの私達の習慣
それを理由にとやかく言われたくない
それだけの為に
朝から純也の食事を作る
作った料理をラップで覆い
作ったそばから
朝食を作り置きに変える
自宅に居ても針のむしろ
居ても立っても居られず
ただただ
この空間から逃げ出したい一心で
私は朝から自宅を飛び出した
#独占欲
#ワンナイトラブ
#溺愛