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学校につくと案の定注目された。でもこの人もどこか近づきがたい雰囲気を持っているからか近づいてくる人はいなかった。でも女子からは冷たい目で見られた。きっと羨ましがっているのだろう。だから嫌だったのに。でも彼はそんなこと気にする素振りはなく私に笑顔でどうでもいいことを話していた。教室につくと入る前に彼は足を止めた。
「名前、聞いてもいいですか?」
「愛玲奈」
答えると彼は涙を流した。
「え……」
急に泣き出して私はどうしたらいいかわからなくて戸惑っていた。私が泣かせたみたいになっていて周りの視線が痛い。
「ごめんなさい、またあとで」
そう言って彼はどこかへ走っていってしまった。どこに向かっているのか、道はわかるのか心配になったけど追いかける勇気はなかった。
教室にはいるとクラスの全員が私をチラチラ見ながらコソコソ話していた。ずっと私のことを相手にしていなかったのにちょっとしたことですぐに噂の的にするのは人は成長しても変わらないのかと思った。
ホームルームが始まり転校生が入ってきて、もちろん彼だった。
「初めまして、羽有琉井須です」
珍しい名前だと思ったけど私もなので人のことは言えなかった。どこか私たちは似ているところが多いように感じたけど気のせいだと思うことにした。きっと偶然だ。
ホームルームが終わると続々と彼に集まっていった。でも彼は全員の言葉を無視し、私のところにやってきた。
「俺の名前珍しいでしょ」
「は、はい」
「エレナさんも珍しいですよね」
「はい」
「俺のことルイスって呼んでくれませんか?」
自分はさん付けをするのに私には呼び捨てで呼んでくれなんて距離の詰め方が変だと思ったけどあまり気にしないことにした。断る理由も特にないので承諾した。
「いいですよ」
ルイスは私が承諾する度にすごく嬉しそうな顔をする。それが少し可愛いと思ってしまったのはきっと勘違いだ。
「あと敬語もやめてほしいんです」
「わかった」
「いいんですか!?」
「うん」
本当は承諾するつもりなんてなかったけどルイスの笑顔が見たくて、承諾したら笑顔になってくれると思ってつい承諾してしまった。ルイスに振り回されている気がするけど悪い気はしない。
「ルイスも敬語やめてよ」
「ごめんなさい、それは嫌です」
承諾されると思っていたから拒否されたことに少し驚いたがルイスにも嫌な理由があるのだろう。私だけタメ口なのは少し申し訳なさがあったからルイスにもタメ口で話してほしかったけど嫌ならしかたない。
「ごめんなさい……」
そんなに謝らなくていいのに。でもきっとルイスにとって私が言ったことを拒否してしまった罪悪感があるのだろう。
「ううん、大丈夫」
そう言うとすこし申し訳なさも含んだ笑顔をした。ルイスの笑顔はどこか安心する。
今日の学校生活は休み時間になる度にルイスが私のとこへ来ていろんな話をした。学校が初めて楽しいと思った。
「帰りましょう!エレナさん」
「うん」
ルイスも部活に入らないらしい。でも私に入っているのか入っていないのか聞いてから判断したようだからもしかしたら私に合わせたのかもしれないと一瞬思ったけれど都合のいい妄想はやめよう。
「エレナさん、公園に行きませんか?」
「公園?」
「オススメの場所があるんです」
どうせ復習以外にやらなきゃいけないことはない。それにルイスともう少し一緒にいたかった。
「いいよ、行こう」
承諾するとやっぱり笑顔になり、ルイスの笑顔につられて私も笑顔になった。
「やっと笑ってくれた」
「え?」
ルイスの瞳が潤んでいるように見えたけどきっと気のせいだ。
ルイスのオススメの場所に行く最中、ルイスは興味深い話をしてくれた。