最後のページを閉じると、あたしは本をそっと元に戻して、ふっと微笑んだ。
本は今も、本屋の棚にひっそりと入れられていた。
今も置いてあってよかったなんて、ちょっとだけ思ったあたしは、もしかしたらまだアイドル時代のように、売り上げとかってことにこだわってたりするのかもね。
今は、売れるなんていうこととはまるで関係のない、アイドルでもなんでもないただのあたしは、
もう誰にも、本屋にいたって、気づかれはしないけれど。
本屋を出ていこうとする後ろ姿に、
誰かが、声をかける。
「もしかして、七瀬リオさんですか?」
気づかずに、出ていくあたし。
多くの人たちがひしめき合う街の雑踏の中、人の波にまぎれたあたしは、もう見つけることはできない。
街を行き交う、たくさんの”あたし”たち
そう、あたしは、あなたでもある。
ひとりのアイドル「七瀬リオ」が過ごした10代は、
自分を「あたし」と呼ぶ、
あなたにも、どこかかぶるようなところがあるはず。
あなたは、あたし。あたしは、あなた。
全ての、あたしたちの今を映し出す
それが、「REAL」──
END──
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