コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
うなぎを食べた後、一時間ほど私の働いているクラブの話や竜一さんが萬田くんの舎弟として働き始めて色々とやらかした話など、色々と他愛もない話をした。そんな話をしているうちに私の心は軽くなっていた。
ふと時計に目をやると時間は21時を回っていた。
「あ、わしそろそろ事務所に帰らんと!おっちゃーん!今日もうなぎうまかったわー!ごちそうさんー♪」
時計を確認した私のちょっとした仕草から、そろそろいい時間だという事を察してくれたのか、お会計の声かけてくれた。
それに今こうして気分が晴れているのも竜一さんが強引にでも私を食事に誘ってくれたおかげだ。
竜一さんのそうした優しさがひしひしと身に沁みた。
ありがとう…。
「おじさんの焼いたうなぎ、ほんっまに美味しかったです。ごちそうさまでした!」
「おーう!竜一はともかく、こんなべっぴんさんにそない褒めてもらえたらワシもやりがいあるわ〜!また食べに来てやー!」
「ちょ!おっちゃーん、それはないでー!」
「冗談やがなぁー!笑。竜一もいつもありがとうなぁ!銀次郎さんにもよろしゅう言うといてぇ。」
「もう、冗談きついでぇー。 へい!また兄貴と食べに来させてもらうわ!ほなまたぁ!」
「おっちゃん、ごちそうさまでした♪」
「毎度ー!またお願いしますぅー!」
ガラガラガラ…!
お店を出る頃には、さっきの憂鬱は何処かに吹き飛び、自然と笑顔になっていた。
竜一さんから聞いたさっきの話が影響しているのか、人の暖かさをひしひしと感じた。
「竜一さん、ほんまにありがとう!ごちそうさまでした。」
「かまへんかまへーん!桜子ちゃんのおかげでええ夜になったわ!そや、桜子ちゃん家この辺なんか?」
「うん、この近くやからすぐ帰れる。」
「そうかぁ…。それでも夜のミナミは物騒やからな。これ!足代や!取っとき。」
「えぇ!?そんな事までしてもらわんでも私だってお金にはそこまで困ってないし、大丈夫やて!」
「ええんや!萬田金融の舎弟が女の子に足代も持たせんと帰らせたなんて話が出回ったらうちの看板に傷が付いてまうやろ?何も気にせんでええから、はよ取っといて!」
「えぇ…。じゃ、じゃあ遠慮なくいただきます。竜一さん今日は何から何までありがとうね。」
「また近々、事務所で顔合わせなあかんことになるんやから!そんな改まって感謝せんかてええ!それより!肩代わりした後輩の借金しっっっかり払わんとまた兄貴が怖いでぇぇ!」
「ほんまやな…。私も人の借金肩代わりするなんてほんまにアホやわ…笑」
「ほんまやで、桜子ちゃんみたいなお人好し早々居てへんわ!笑」
「私もホストにハマって男に散財した後輩とアホさ加減で言うたらあんまり変わらんのかも…笑。でも、あの子が萬田くんとこから借金してたから私はまた萬田くんと再会できたんかな…。」
「ん?もしかして、桜子ちゃんあない怖い兄貴に会いたかったんかぁ?」
「え?い、いや!別にそういうわけじゃなくて…!」
「えー?ほんまかぁ?笑」
「ほんまやってば!竜一さん、今日はほんまにありがとう。今日はもう遅くなってしもたしそろそろ帰るわ。後日、必ずお金返しに行かせてもらうって萬田くんにもよろしく伝えといて。」
「そやな!兄貴にもしっっっかりと伝えとく!早めに返しにくるんやでぇ…そやないと兄貴もっと怖なるからな!笑。 ほな!気ぃつけて帰りやー!」
「分かった…笑。ありがと!ほな、また!おやすみなさい!」
そう言って桜子は竜一に手を振りながらタクシーに乗り込んだ。
バタンッ
ブォーーーン………
帰りのタクシーの中。
流れていく外のネオンをぼーっと眺めていると、今日起こった事がまるで走馬灯のように思い出された。
竜一さんは面白いし素敵な人だった。
調子がいいだけの人かと思ったけど、根は真面目ですごくあたたかい人だという事も伝わってきた。
そして、その竜一さんに慕われている萬田くんの謎めいた人柄がなんとなく分かったような気がして、 萬田くんのことを少しだけ知れてどこか嬉しい自分が居た。
小学生の時と変わってるようでお互いあんまり変わってないのかもしれない…。
そんなふうにさえ思えてきた。
私やっぱり萬田くんのこと…
いやいや、何を考えてるんや私は!
久々に会えて浮かれてるだけ!
しかも他人の借金肩代わりしている身、そんな事言ってる場合じゃないんや!
今日はジェットコースターみたいな急展開の連続で疲れてるからおかしくなってるんや!
しっかりしないと!
そう自分に言い聞かせる。
とりあえず残りの260万早く用意して返しにいこう。
それを返し終わったら私はもう萬田くんと会う事も無くなるって事か…。
それでいいんよね
でも…