夕暮れの庭園。
ハイネが散歩していると、木陰の奥で何かがゴソゴソ動いていた。
「……誰ですか?」
「うわっ!? わっ、わっ……は、ハイネ!?!?!?」
飛び出してきたのは、明らかに不審な挙動のレオンハルト。
「なにしてたんですか」
「な、なんでもない!!! その、ちょっと、風通しのいい場所に座ってただけだ!! 決して……ハイネが通るの待ってたとか、そういうのじゃ……!」
「全部言ってしまってるじゃないですか」
「う、うぐ……」
耳まで真っ赤になって俯く彼に、ハイネは小さく笑う。
「で、何の用です?」
「……っ! あー……えっと! えっと、僕、前から言いたいことがあるんだ!!」
その瞬間、レオンハルトの目に火がついたような気がした。
「……父上だって! 兄弟だって! みんなハイネにずるいことばっか言ってさ! 僕だけ……僕だけいつも何も言えなくて!! だけど!! だけど今日は絶対言うって決めたんだ!!!」
思い切り両手を握りしめる。
「僕、ハイネのことが……大好きだ!!」
「……レオンハルト王子」
「は、恥ずかしいけど、でも本気で言ってるんだ! 昔は全然素直になれなかったけど……今は、ちゃんと気づいてる!! 先生はすごいし、かっこいいし、たまにむかつくけど、でも、すっごく……あったかくて……!」
そのまま言葉に詰まり、視線が揺れる。
「僕、お前に相応しいとか、そういうのはまだ分かんないけど……でも、ちゃんと向き合いたい。僕だって…… ハイネの隣に、いたい……!」
いつもは強がりで、負けず嫌いで、
でも今はただまっすぐに――想いをぶつけてくる。
「だから、笑わないで、ちゃんと考えるんだぞ……!」
そう言ってレオンハルトは、顔を真っ赤にしたまま駆け出していった。
風が通り抜ける。
ハイネは、残された空気の中で、そっと呟いた。
「……ずるいですね。みなさん、ほんとに」