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「――全く、どれだけバカップルなんですか貴方たちは!」
バスが最寄りの休憩所へと到着後、二人は仁王立ちの弓弦に捕まり、そのまま説教を受けていた。
「いや、あの……それはその……」
「言い訳なんて聞きません。大体、あんなところで盛るなんて言語道断ですよ。一体なにを考えているんですか。女性も同乗していたのに」
「……なんで俺まで……」
怒り心頭の弓弦の横で、ナギはうんざりした表情を浮かべていた。自分はある意味被害者だと言わんばかりの表情をするナギを睨み付け、弓弦は呆れたような溜息を吐いた。
「今回の件は蓮さんが一番悪いと思いますけど、小鳥遊さんだって同罪ですよ。本気で嫌なら抵抗出来たはずでしょう!?」
「ぅ……」
ド正論を返され、ナギはそれ以上何も言えずに黙りこんでしまった。確かに拒否しなかった自分も悪い。思い当たる節があり過ぎて返す言葉が見つからないのだろう。
「……全く、貴方たちは棗さんに悪いと思わないんですか? あの人が気付いた時どんな気分になるか想像してみて欲しかったですよ」
そう言って、弓弦は少し離れた所で東海たちと話をしている雪之丞へチラリと一瞬視線を送り、一度目を伏せてからもう一度二人に向き直った。
「イチャイチャしたい気持ちはわかります。でも、そう言う事は二人きりの時にして下さいよ」
「……はい」
「ごめんなさい」
項垂れる蓮に、素直に謝るナギ。反省の色を見せたことでひとまずは満足したのか、結弦はヤレヤレと肩を竦めた。
「……あのぅ、……お二人って付き合ってるんですか?」
ようやく弓弦のお小言が終わったとホッとする間もなく、ひょっこりと現れた銀次が後ろから声を掛けてきた。
その手にはペットボトルが二本握られている。きっと飲み物を買いに行って戻ってきたのだろう。二人に気を使い、少し距離を置いて佇んでいる。
「――あぁ、ええっと」
何といえば良いのだろうか? 正直に付き合っていますと言ってしまえばいいのか。
しかし、万が一銀次が同性同士の恋愛に対して嫌悪感を抱くようなタイプだった場合、今後のコラボに少なからず影響するかもしれない。
「あ、すみません。直球過ぎました? それか、警戒されちゃってますかね? 大丈夫ですって! マスコミに売ったりしませんから」
「っ、いや……そうじゃなくって」
「ん? それとも、なんです? もしかして、人に言えないような爛れた関係だったり? 昼ドラみたいな?」
「ちょっ……っその言い方はいろいろと語弊があるような……」
「いや、それはその……っ!」
蓮とナギが弁解しようと口を開いた刹那。
「二人は恋人同士ですよ。ちなみに私が証人です。まぁ、この人達の場合爛れた関係と言うよりお互い無自覚にいちゃついてる感じですかね」
「ち、ちょっとゆづっ! うちのトップシークレットなのにっ」
「いいじゃないですか姉さん。そこのバカップルがナチュラルにいちゃつくから、この旅行でいずれバレますし。だったら、変な誤解が生じるより、今はっきりさせておいた方が後々面倒なことにならないと思いますよ?」
「……っ、バカップルってそんなはっきり言わなくても……」
いきなり肯定されて面食らう二人を他所に銀次はふむふむと納得したように頷いた。
「なるほど。トップシークレットでしたか。だったらあまりいじらない方がいいかなぁ」
「あの……銀次君。その、気持ち悪いとか思わな……」
「え? 別に。人それぞれですし。俺、そういうの全く気にしないタチなんで。二人が幸せならそれで良いじゃないですか。お似合いだと思いますよ?」
あっけらかんとした銀次の言葉に、蓮は毒気を抜かれてぽかんとしてしまう。
同性愛者を偏見の目で見る人も少なくない現代で、彼のように受け入れてくれる人は珍しい。
「そ、そうか。よかった……って、さっきのいじるとか、いじらないとかって何?」
「んー、実は、せっかく話題の獅子レンジャーキャスト陣との遠方ロケに同伴させてもらってるんで! これはもう、レアなお宝がざっくざくの予感しかしないじゃないですか! 撮っちゃいけないものは前もって避けておかないと! あ、そうだ! ご当地アイス!食べに行きません? ええっと、そうだ!そこの大人しそうな棗さん? でしたっけ。行きましょ?」
「へっ!? えぇっ、ボ、ボク?」
唐突に銀次が振り返り、席で大人しく液晶とにらめっこしていた雪之丞に向けてそう声をかける。まさか自分に話が降って来るとは毛頭思ってなかったのだろう。銀次に声を掛けられ、雪之丞は心底驚いたように肩をびくつかせた。
「はい! せっかくだから撮りに行きましょう! ね? ね? さぁさぁさぁっ!」
「っ、ちょっ……ちょっと銀次君。そんな急に引っ張ったら危な……」
「ち、ちょっと! 全く、強引な人だな……。仕方がないんで私も行きます」
雪之丞を引っ張り、嵐のようにバスを降りた銀次の後を追って、弓弦がぶつぶつと文句を言いながら降りていく。
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