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真夜中の夢
その夜…小崎は疲れ果てた深い眠りに落ちたが、眠りの中に現れたのは安らぎではなかった。
空に響き渡る叫び声の中、白金髪の少年が十字架に磔にされていた。炎の塊が彼を取り囲み、血走った瞳は怒りに満ち、視線は群衆に向けられていた。
「邪悪な力を神に委ねよ!!」
群衆の詠唱は、まるで審判の詠唱のように何度も響き渡った。
松明の炎が火を舐め始め、熱が広がり始めたが、少年はただ冷たく笑みを浮かべた。
「ふん…お前らってバカだな。目も耳もあるのに、考えない。お前ら……しなきゃ…」
声は途切れたが、最後の言葉が小崎の頭の中でこだました。
夢から覚めて
「小崎くん!起きて!降りてきて、ご飯を食べなさい!」
ポチコが優しく腕を振ると、小崎は汗だくの顔で目を開けた。
両親は出張中だった。ポチコを託し、小崎 は彼女と共に食卓に座った。彼女が用意してくれた料理の香りが漂っていたが、心はどこか遠くへ行ってしまった。
「ポチコ…」彼は静かに言った。「昨夜、夢を見たんだ…磔にされた少年の。白い髪と赤い目をしていた…群衆に呪われて…焼かれる前に…」
ポチコは少し間を置いてから、ためらいがちに答えた。
「もしかしたら…前世は君だったのかもしれない、小崎くん。」
その言葉が彼の心を突き刺した。彼の鬼喰の力は、前世に…あるいはあの少年に由来するかもしれない、という真実。
夜の屋上へシーンカット
都会の真ん中に佇む高層ビルの屋上。強風の中、ヘリコプターが停泊していた。高層ビルの無数の灯りが影を落としていた。
背が高く、体にフィットした黒い服を着た女性が、銀色の鋭い目をしながら、影の中に静かに立っていた。彼女は物言わぬ狐の妖怪、ヨツメだった。
「情報が入ってきました…ブック・オブ・シャドウがジキルとハイドの手に渡っているというのです」と彼女は静かに言った。
「港近くの倉庫が目的地です。ミユリが座標を送ってくれました。行きましょう。奥村さん」
彼女の後ろに座って膝を抱えていた若い男は、すぐには返事をしなかった。黒いフードで顔を隠し、冷たく無感情な目でビル群を見つめていた。
深く柔らかな声が、振り返らずに言った。
「行ってもいい…でも、リンと呼んでください」
夜風が吹き抜ける中、屋上には二つの影が並んで立っていた…そして闇が迫っていた。
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