赤司厨キセキとキセキ厨赤司がすきなだけ。黒子くんのお小遣い稼ぎに赤司くんが協力する話。黄瀬が不憫(いつも)会話多め
「あー」
「あ?どうした、黒子」
「お金が欲しい…」
「……え?」
彼の口から飛び出した予想外の悩み。ぼーっと空を見上げながら黒子はそう呟いた。火神も口に含んでいたシェイクを飲み込むことすら忘れて、口をぽかんと開けた。な、なにか悩んでいるのだろうか…金銭の関係で……己も財布が潤っている訳でもないが…
「…なんかあったのかよ。俺も…助けられそうなら助けるけど」
「いえ、君には関係ないこと……あ、いや、君に関係あります。聞いてください」
最初の消え入りそうな声はどうしたのか、いつもかすかに虚ろな瞳を、いまはギン!と見開いて迫力のある顔でこちらを見据えながら、彼は声を張った。久しぶりに見た彼の様子に、少し息を詰めて首を傾げる。
「バッシュをまた壊したんですよ。また、またね。」
「……あー、そーゆーな」
「はい、なのでお小遣いが必要なんですけどね、バイトをやるにも……」
恥ずかしそうにぽりぽりと頬をかき、彼は目を逸らした。困ったように眉を顰める彼は、いつにも増して子犬のように火神の目に映った。あー、助けてやりたい……でも自分もそれほど余裕があるわけじゃ……
「あ、いいこと思いついた。」
帰り道の途中にあるコンビニを通り過ぎた時、突然店内へ視線を向けて黒子はそう言った。「彼を道具とするのはすこし心苦しいですが……」と苦笑して、店内へ足を進めていく。不思議に思って火神が尋ねるが、黒子は一向に答えを出さない。彼はポップな見出し(内容は全くポップではない)の着いたカップ焼きそばを何個か手に取り、得意げな顔を浮かべてそれをレジへと持っていった。スクールバックからスマホを取りだし、黒子はとある番号を打ち込んで火神へ渡す。
「ちょっとお願いが……、とりあえず僕の家に来てと言って貰えますか?あぁ、大丈夫です、君も知っている人なので」
いつも通りの君で、と雑に締めて黒子は会計を始めた。未だ疑問は残りながらも、信頼している相棒の頼みを火神はしっかりとこなそうとした。…発信ボタンを押す。
「…」
ツー、ツー…
「……」
ツー__
「もしもし」
かかった。その声の主は忙しかったのか、少し息を荒らげていた。(黒子の友人となると、おそらく学生だろうから)まだ彼は校舎内に居るのか、声が反響している。それよりも、聞き覚えのある声だ。どこで、と問われると答えられないが絶対に聞いたことのある声。割と高めで、艶がある。だが、絶対的なセンスも感じる声の圧……。
「…黒子?どうした?」
「お前、赤司か!」
「火神……?」
思わず声を荒らげ、答え合わせをしてしまった。その、赤司と思われる声は若干困惑の色が混ざっている。そりゃそうだろう。想定外の人物が出たのだから。とりあえず頼みを済ませるため本当に簡潔に「黒子が”僕の家に来てくれ”、ってよ」と伝えると、存外キセキの世代には甘い赤司は、二つ返事で「あぁ、わかった」と返した。じゃあ、と別れの言葉を繋ぎ、スマホの終了ボタンを押す。買い物を無事終えた黒子へそれを返した。
「ありがとうございます。大丈夫だと?」
「あぁ、来るってよ。赤司ってお前らには優しいよな、驚いたわ」
「はは、そうですか?そういうところも可愛いですよね」
「……それは分からん」
同時に赤司に激甘な黒子も、火神へそう微笑みかけた。まあ、全く理解はできないが。
「……ってことで、皆さんにお集まりいただいたのは”コレ”のためです」
「これ、なんスか?」
「ただの焼きそばじゃねえの?」
「それは違います。火神くん、食べてください」
「え”」
唐突な飛び火。てっきり己は外野だと思っていたが関係があるらしい。……というか…
「…ふつー嫌だろ。俺はお前と一緒に作ったんだから、それがなにかは分かってんだよ」
試食を、パッケージもガッツリ見て、作った俺に言うかよ。てかそれよりも、なんでコイツらがいる?
俺が電話をかけたのは赤司だけだったはずだ。黒子がその後電話をした素振りは無かった。なのに、なぜ……?
「いいえ、関係ありませんね。食べてください、イグナイトしますよ」
「その脅し地味にこえーからやめろよ!」
黒子は瞳をかっぴらき、火神を見つめた。その圧に勝てず、恐る恐る盛られた麺を掬いとる。…クソ、どうにでもなれ!!
「…?…思ったよりフツー……ッかっっっら?!!!!!?!!!?」
口が焼けた!!?!!?ゼッタイ焼けてる、痛い。辛いと言うより痛い。マジで
「まあ、こういうことです。頑張ってください」
「どういうことなのだよ!!納得できないに決まってるだろう」
「ふふふ、そう言うと思ってましたよ、緑間君。」
「は?」
「そろそろ来ますかね。」
眉を釣り上げた緑間に黒子はそう伝え、ドアへ視線を動かした。確かに、数秒してガチャと玄関のドアが開く音がした。ここにいない、欠けたもう1人は……
「やあ、黒子。待たせたかな…って、お前たち……」
待望していた声に、キセキの世代(黒子&火神in赤司out)は揃って声の方へ顔をむけた。学校帰りか、彼は”洛山”とプリントされたジャージを羽織っていた。そんな彼は想定外の人数に少し驚いたかと思えば、ドア近くに立ちすくんでいた火神へにこりとほほ笑みかける。
「黒子、頼まれていたものだ、が……この人数とは思わなかったもので、1パックしか買ってきてないんだ。すまないね」
「いえ、赤司君は悪くありません。ところで、協力してくれませんか?」
「協力?」
ハテナマークを浮かべ、いたいけに首を傾げた赤司の耳に黒子は顔を寄せる。少し黒子の口が動いて、赤司へ伝わると、彼は破顔した。
「あはは、黒子ったら 案外ずるいんだね。嫌いじゃないよ」
「はい、僕も君が好きです。結婚しますか……」
「それは嫌」
彼らに甘いとは言ったが、赤司はこういうところはキッパリしている。黒子の言葉を遮るかのように、にっこりとしながらそう放った。そんな黒子へ目を向ければ、なぜかふんふん、と鼻息を荒らげて目をキラキラとさせていた。……なんで?いや、こいつは赤司の事になると大分変態的な思考に…
「赤ちんじゃん。遅いよー。ほら、俺の隣来て」
「は?なんでお前のとこなんだよ?席空いてんだし俺のとこだろ」
「いや、青峰の隣はやめた方がいいのだよ。どうせまともな事を考えていない」
「それには賛成ッスね。じゃ、どーぞ?赤司っち♡ 」
…さすがに好かれすぎではないだろうか?紫原は想定内だったが、これほど……。キラキラとした笑顔をみせた黄瀬に、青峰は青筋をかすかに浮かべながら、「覚えとけよ」と音を出さずに口を動かした。それを読み取った彼は、子犬のように震え上がり、黒子へ助けを求める。
「えーーん!黒子っち!助けてくださいっス!!」
「え?なんでですか」
「バカ峰…あ、ちが、青峰っちに脅されてます!!!」
「おいお前今なんて」
「こら、青峰。友人間でそんなことをするのは、俺は嫌いだと言ったろう?_俺に嫌われたいのかな」
「それは違ぇ!その……お前と話したかったから…」
「ぁ…はは。かわいいね、青峰……俺もお前と話したかったよ。…すまない黄瀬。今日はこっちにいるよ、ありがとう」
「もー…仕方ないっすね!赤司っちが言うなら許します!」
そう聖母のような笑みを浮かべて、赤司は青峰の隣へ腰を下ろした。先程の険悪な雰囲気はすっかりと消え去り、黄瀬だけではなく青峰にも犬のしっぽが見えるようだった。隣に座った赤司を横目でじっ…と見つめ、青峰は口をとざす。その目をそらすと、それに気付いたのか赤司はくすくすと小さく笑って、青峰の手を優しく握った。びくっと大きく肩が揺れる。壊れたロボットのように、おぼつかなく顔を動かして青峰は赤司を捉えた。
「…話したかったんだろう?たくさん話そう、青峰。……まあ、これが終わったら、だが」
魅惑的に微笑んだ、かと思えば白魚のような指は机上に置かれた山盛りの焼きそばを指した。
次⬇️