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どうも皆様、サカナですいやあの、八月と九月ほぼ書いてなくてすみません…
次から頑張ります、あくまで頑張るだけです
今日はサロちゃんを合法的に絶望させて良い日って聞きました(難聴)
私、イタ王=サロ共の概念も好きですが、イタ王の子供がサロ共って方の概念も同じくらい愛しておりましてね
ドイツ推しにはなりましたが、やっぱりイタリアのえっち度は中々覆りません
お誕生日おめでとう!サロちゃん!
サロ共和国の両親は、互いが心の底から愛し合っているらしい。
酷い戦争の中、同盟国とはいえ互いを愛し、子を成すほど大切に想い合っていると、サロは日々教えられている。
彼の母であるイタリア王国は、身体が悪くて、滅多に会うことはないけれど。
それでもサロは、強くて尊敬する父と、優しく美しい母の子であることに誇りを持っている。
サロは三人兄弟の中で唯一、イタリア王国とナチスのどちらにも似ており、そんな自分を好いていた。
ナチスのように立派な黒い羽と、イタリア王国のように綺麗な顔。
バチカンとサンマリノはいつも、憐れむような目で見てくるけれど。
月日を重ね、大人に近づいてきたある日のこと。
サロは父であるナチスに呼び出され、彼の書斎を訪れていた。
サロ「父様、何かご用件でしょうか?」
ナチ「あぁ。サロ、お前ももう一人前だから、任務を与えたいと思ってな」
憧れの父を手伝うことができる。
サロはパタパタと小さく羽を揺らし、内心少し嬉しがりながらもナチスの話を聞く。
サロ「任務?」
ナチ「イタリア北部の前線で、指揮を取れ」
サロ「…えっ?」
ナチ「なんだ?何か問題でもあるだろうか。お前たちには訓練もつけているし、何より国なのだから、十分戦えるはずだが」
ニコリと微笑むナチスの顔は、いつもの笑みとは違った。
圧をかけられている。
断ることは許さないとでも言うように、静かに、けれど確かに重い重い圧。
初めて見る父の顔に、サロは固まってしまった。
ナチ「…お前しかいないんだ。愛息子を戦場に送るのは、確かに心苦しい。だが、私はお前ならば必ずやり遂げることができると信じているのだよ」
サロ「!」
ナチ「やってくれるな?」
「お前しかいない」「信じている」
ナチスの言葉は全て、サロに勇気を与える。
尊敬する父の頼みなのだから、僕にしかできないのだからと、サロはこくりと頷いた。
イタリア北部の最前線…そこにいる敵は連合軍と、何ヶ月か前に出て行った弟であることを知らずに。
サロにとって、イタリアとは故郷である。
母の生まれ育ったこのイタリア半島は、サロにとっても思い出深い土地だ。
母と道端の花を眺めて、農家のおじさんから新鮮なトマトをもらって、気持ち良い草原で兄弟たちとお昼寝をして。
大切な大切な思い出が詰まった、故郷なのである。
サロ「…なんだ…これ…」
サロが見たのは、地獄だった。
燃える建物、叫ぶ人々、あたりに漂う悪臭、響き渡る銃声。
そこは思い出とあまりにもかけ離れていて、似ても似つかなかった。
だが、行かねばならない。
行って、父に認めてもらわなくては。
サロ「…っ!!」
覚悟を決め、サロは高台から翼を広げる。
見事に着地したサロはまず、銃を撃っている敵軍の頭を斧で飛ばした。
気持ちの悪い感触に顔を顰めながら、血を撒き散らして倒れる敵軍を見送る。
早くこの場を制圧し、混沌をなくさねば。
アメリカ人、フランス人、イギリス人。
敵軍はそれだけではないのだ。
敵であるパルチザンたちの…兄弟ともいえるイタリア人たちの命をも奪いながら、サロはただその場を駆ける。
人を殺すのは初めてのことだ。
悲鳴をあげる人々は敵とは思えなくて、けれど殺さねば殺されるのみ。
頭を飛ばし、胴を割り、綺麗だった軍服も手も心も汚れていく。
何度か隠れて吐いてしまった。
自らの手でイタリアを汚しているような気がして。
でも実際そうだとだけは信じたくなかったから、見知らぬ敵軍たちに怒りを向ける。
辛い。
その一言は、家に帰るまで秘密にしようと決めた。
サロ「…疲れた」
何日働いたのだろう。
ようやく落ち着きを取り戻した町は、そこら中が血の赤で満ちていた。
ほとんど、サロが殺した人々のものである。
心にどんよりと、何かがのしかかる。
溢れ出てきそうなそれを無理矢理に押し込め、サロは帰路を辿った。
血に塗れた斧と重い体を引きずり、愛する家族の元へ帰るのだ。
ここまで頑張ったのだから、厳格な父もきっと褒めてくださるだろう。
見慣れた家屋の扉を開け、汚れたまま家に上がる。
今はとにかく、この汚い手を洗いたい。
赤くなってしまったこの服も変えなくては。
鏡を見れば、そこには真っ赤に染まったサロの姿がある。
完璧に任務を達成したはずなのに、達成感は何一つとしてない。
体を洗い、服を着替え、見かけだけは綺麗になったサロは、ナチスの書斎を訪れた。
コンコンコン、とノックをすれば、聞き慣れた声で返事を返される。
失礼します、と一声かけて、その部屋へ入った。
サロ「…父様、ただいま戻りました…」
ナチ「あぁ、サロか。よくやった、おかげでまだあの場所を占領できる」
ナチスはサロの方も見ず、書類仕事をこなしている。
疲れ切ったサロは少し寂しいと感じたが、父は忙しい人なのだから仕方がないと諦め、言葉を返す。
サロ「ありがとう、ございます…」
ナチ「疲れているだろう?今日のところは休むといい。明日からはまた頼み事があるからな」
サロ「…わかりました。それでは、これで失礼いたします…」
書斎を出たサロは幼い弟に会いたくなり、母と弟の部屋がある地下へ向かった。
暗い階段をランプの光一つに頼り、一段一段降ってゆく。
たまには母に甘えたい。
お菓子なんかを食べて、弟と遊んで、ゆっくり寝たい。
サロ「母様、サロです。入ってもよろしいでしょうか?」
鉄の扉はノックをするには手が痛く、こうして小窓から声をかけなくてはならなかった。
何故か、イタリア王国の部屋の扉は頑丈にできている。
昔にも聞いたが、危ないものからイタリア王国を守るためだとナチスは言っていた。
「サロおにいちゃん?」
サロ「あ、イタリア…うん、サロだよ。母様はいるかな?」
イタリア「いるんよ!呼んでくるんね!」
サロ「ありがとう、でも寝ていたら大丈夫だからね」
イタリア「はーい!」
小窓から返ってきたのは母の声ではなかったが、久々に聞いた弟の声は十分に安堵できるものだ。
少し待っていると、重々しい音を立てながら扉が開いた。
「サロ?」
サロ「母様…!」
鈴の鳴るような声で、自身の名を呼ばれる。
綺麗に着飾ったイタリア王国は記憶通りで、思わず涙が出そうだった。
サロ「母様、僕、たくさん頑張って…」
イタ王「サロ、ごめん。もう来ないで」
サロ「…え?」
イタ王「随分大きくなったね、立派になってくれて嬉しいよ」
イタリア王国は困ったように笑っている。
けれどサロは、その直前の言葉を受け止めきれなかった。
イタ王「ナチから聞かされたよ、君を戦場に向かわせたって」
サロ「は、はい」
イタ王「そこで…たくさん、人を殺したそうだね」
サロ「っ…!」
イタ王「君のことは、もちろん大切な息子だと思ってる…思ってる、はずなんだけどね…」
不穏な空気に戸惑いを隠せず、サロはその場でおろおろとするばかり。
イタリア王国はサロと目を合わないまま、サロにとって残酷なことばかりを言う。
イタ王「…この際言うけど、僕はナチのことが大嫌いだ」
サロ「…ぇ」
イタ王「無理矢理ここに連れて来られて、嫌だって言ってるのに酷いことばかりされるんだ。君たちの前では繕ってたけど、もう限界なの 」
サロ「そ、んな…」
イタ王「本当に悪いと思ってる。でもね、君は…サロは、特にナチと似ているから…」
サロ「ぁ…」
イタ王「見た目だけって思って接していたのに、まさか中身まで似ていただなんて思わなかったよ…命令だからって、同じイタリア人まで殺し尽くせる君はもう、僕の息子だって、胸を張って言えない 」
サロ「かぁ…さま…?」
イタ王「サロ、もう会うのは最後にしよう。君を見ていたら、ただでさえ会いたくないナチを思い出して辛くなる。君だって、こんな親嫌でしょう?もう、親子ごっこはやめにしよう?」
サロ「親子ごっこ…」
自分は、愛し合っていた両親の元に生まれた、望まれた子ではない。
頭を殴られたような衝撃に襲われ、今にも膝から崩れ落ちそうだった。
自分が信じた家族像は全て、ナチスによって作られた偽物だったのだろうか。
それだけが、サロの支えだったというのに。
イタ王「僕はここから出ることはできない。出たらナチに何をされるか…だからサロ、もうここには来ないで。それが僕と君のためだ 」
サロ「…はい…」
君だなんて他人行儀な言い方に傷つきながら、鉄の扉は…イタリア王国を閉じ込めるための檻は閉じていく。
その日、サロは泣いた。
今まで好きだと思っていた翼の羽を引き抜いて、自分の部屋にあった鏡を全て割った。
ぐちゃぐちゃになった部屋を片付ける気にもなれなくて、横になっても睡魔は来なくて。
サロ(所詮、僕は父様の独りよがりのために作られただけなんだな…)
傷だらけになった手とボロボロになった翼を見ていたら、サロの中で何かがぷつりと切れた。
なんだか、全てがどうでも良い。
ぐちゃぐちゃの顔で吊るされた兄を呆然と見るCLNとイタリアに、春の息吹がふわりと当てられた。