テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
※注意※
私のオリジナルキャラクターと、原作キャラが絡みます。特にChance!
苦手な方は、目線を合わせ、手を広げながらゆっくりと後ずさりしましょう(熊の対処法)。
なんでもOKという方のみ、この先へお進みください。
キャラクターのエミュレーション練習用に執筆した作品のため、設定とかは適当です。
不快感で目が覚めた。じっとりとした湿気が、肌に張り付いている。体を起こそうとして、全身が軋むような痛みに襲われた。
「……っ、つぅ……」
ゆっくりと目を開ける。
そこは住宅街の跡地のような場所だった。枯れた木々と崩れたレンガの壁が墓標のように立ち並び、空はドス黒い赤色に塗りつぶされている。遠くて、何かが燃えるような音が聞こえた。
(ここ、どこ……?)
まるで永い眠りから覚めたかのように、視界と頭がぼやけている。
自分の手を見る。泥で汚れているが、傷はない。黒いスーツを着ていた。
自分が目覚める前の記憶がない。頭の中に霧がかかったみたいに、思い出せない。ただ、とてつもなく大きな音を聞いた気がする。
「……誰か、いませんか?」
声を出してみるが、擦れていてよく通らない。立ち上がろうとして、足元がふらついた。ヒールの高い革靴が泥に沈む。
周囲を見渡しても、人の気配はない。あるのは不気味な静寂と、焼け焦げた建物の残骸だけ。
その時、ズズン……と地響きのような音がした。足音だ。何者かが、こちらに向かってきている。
(人? 良かった……)
安堵して顔を上げた私は、直後に息を飲んだ。霧の向こうから現れたのは、人であって人ではない『何か』だった。
薄汚れた作業着を着た大男。顔には古びたホッケーマスク。そしてその手には、赤黒い血がこびりついた巨大なマチェーテが握られている。
「……え?」
目が合った――マスクの奥の、虚ろな穴と視線が交差した気がした。男がマチェーテを持ち上げる。本能が警鐘を鳴らす。逃げろ、と。
「嫌……」
足が竦んで動かない。男が一歩踏み出す。凶器が振り下ろされる。
バァァン!!
突然、乾いた破裂音が響いた。私のすぐ横の木が弾け飛び、木片が舞う。マスクの男がピタリと足を止めた。
「ボサッとしてんじゃねえ! 走れ!」
誰かが私の腕をつかんだ。強い力で引かれ、私は強制的に走らされた。
名前:堀北 カリス(ほりきた かりす)
年齢:17歳
性別:女
見た目:腰まで届くほどの艶やかな銀髪をハーフアップでまとめている。色白の少女。黒のスーツを着用している。
記憶喪失であり、名前以外の記憶を失っている。
「はぁ、はぁ、はぁ……ッ」
訳も分からないまま、私たちは崩壊した街を走っていた。手を引いているのは、黒いスーツを着た男性だった。灰色の長い髪を後ろで束ね、黒い帽子を目深にかぶっている。首にはヘッドホンをかけていた。
彼は時々後ろを振り返りながら、迷いのない足取りで瓦礫の間を縫うように進んでいく。
「ちょ、ちょっと待って……! あなた誰ですか!? あいつは一体……!?」
「説明は後だ! 今は足を止めるな!」
切迫した声。背後からは、まだあの重たい足音が聞こえる。
ガシャーン!
突然、頭上から焼け焦げた看板が落ちてきた。私の鼻先スレスレを掠め、地面に突き刺さる。
「うわっ!?」
「チッ、ツイてねえな!」
男が舌打ちをする。それだけじゃない。走る先々で、レンガが崩れてきたり、地面がぬかるんでいたりする。まるで、この街全体が私の行く手を阻もうとしているみたいだ。
「クソっ、なんでこんな障害物が多いんだよ!?」
男が毒づく。私は必死に彼についていくのが精一杯だった。息が切れる。肺が突き刺されたかのように痛い。
「そこだ! あのゴミ捨て場の陰に隠れろ!」
男が指差したのは、崩れた壁とコンテナが入り組んだ場所だった。
私たちは滑り込むようにその隙間へ入った。
男は私を奥へ押しやり、自分は入り口で銃――古めかしいフリントノック式の拳銃だ――を構えて警戒する。
静寂。
自分の心臓の音だけがうるさい。
数秒後、ズズン……ズズン……という足音が近づいてきた。
岩のすぐ向こう側を、何かが通り過ぎていく気配。
腐臭と、鉄の錆びた匂いが鼻をつく。
私は口元を手で押さえ、悲鳴を噛み殺した。
足音はしばらく周囲をうろついていたが、やがて遠ざかっていった。
「……ふう」
男が深く息を吐き、銃を下ろした。
彼は帽子を脱ぎ、乱暴に髪をかき上げる。
「危なかったぜ。……いきなりSlasherと鉢合わせとはな。今日は厄日か?」
彼は私の方を振り返った。
切れ長の目。整っているが、どこか疲れたような顔立ち。
彼は私を上から下までジロジロと見て、怪訝そうに眉をひそめた。
「お前、その服……葬式帰りか?」
「……え?」
「そんなフォーマルな喪服で来た奴は初めて見たぜ」
言われて、私は自分の服を握りしめた。
泥だらけになってしまった喪服。
「私は……堀北カリス、といいます。気付いたらここにいて……」
「記憶喪失か。ま、よくある話だ」
彼は興味なさそうに肩をすくめた。
「俺はChance。しがないギャンブラーだ」
「チャンス、さん……。ここはどこなんですか? あの怪物は……」
「ここがどこかって? さあな」
彼は赤い空を見上げた。
「だが一つ分かることは、ここは死後の世界……の掃き溜めみたいなもんってことさ。俺もお前も、一度死んでここに連れて来られた」
「死んだ……?」
心臓がドクンと跳ねた。
死んだ。私が?
「……信じられないか? まあ、徐々に思い出すさ。それより今は、生き残ることだけ考えろ」
Chanceさんが銃の撃鉄を起こす。カチリ、という音が響く。
「さっきの怪物――キラーから逃げ切れば勝ち。捕まれば……まあ、お察しの通りだ」
キラー。勝ち負け。
まるでゲームのようで、現実味がなさすぎて、逆に頭が冷えていくのを感じた。
「……分かりました。今は、あなたについていけばいいんですね?」
「物分かりが良くて助かるぜ。……ただし」
Chanceさんは私の目を真っ直ぐに見た。
「足手纏いになるようなら置いていく。俺もあのチェーンソーに切り刻まれるのは御免なんでな」
突き放すような言葉だった。けれど、その瞳の奥には、虚勢では隠しきれない本音――死への忌避感が揺らいでいるように見えた。 彼もまた、この理不尽な世界に怯えているのだ。
「行くぞ。発電機を探して動かすんだ。それが生き残る鍵だ」
「なんで発電機が……?」
「試合の残り時間が減るんだよ。……納得できねえかもしれんが、そういうもんだと覚えておけ」
「は、はあ……?」
彼は背を向けて歩き出した。
私は慌ててその後を追う。
一人きりで怯えるよりは、彼の背中の方が、少しだけ安心できた。
私たちは住宅街を抜け、搬入口のような場所にたどり着いた。
トラックが横転し、荷物が散乱している。
その陰に、古びた発電機が置かれていた。
「これか……」
「俺が見張ってる。お前は修理しろ」
「えっ、私がですか? 機械なんて触ったことないんですけど!?」
「……俺は手先が不器用でな。俺がやると、修理どころか爆発させて位置をバラすのがオチだ」
Chanceさんは肩をすくめて、古びた銃を構えた。
「それに、俺の本職はスタンだ。キラーが来たら俺が足止めする。その隙に直すのがお前の仕事だ。……お前に何ができるのかは知らねえが、今は俺に従っとけ」
有無を言わせぬ口調。仕方なく、私は発電機の前にしゃがみ込む。
配線がむき出しになり、油汚れがひどい。見様見真似で工具を手に取り、配線を繋ごうとする。
バチッ!
「キャッ!」
「静かにしろ! 見つかるぞ!」
火花が散って指先が痺れる。
おかしい。
ただ繋ぐだけなのに、コードが勝手に絡まったり、ネジが急に折れたりする。まるで、機械そのものが私を拒絶しているみたいだ。
(落ち着いて……落ち着いて……)
深呼吸をして、もう一度トライする。
その時。
遠くてチェーンソーの音がした。崩れたピザ屋の方角だ。
Chanceさんがビクリと反応する。
「誰かがミスったか……。チェイスの始まりだ」
「チェイス?」
「鬼ごっこだ。……誰かが囮になってる間に、早く回せ!」
焦りが手元を狂わせる。
また配線がショートしそうになった、その時。
頭上の錆びた看板の破片が、音を立てて揺れ始めた。
「……?」
風なんて吹いていないのに。
嫌な予感がして、私はとっさに身を引いた。
ガシャーン!!
看板が落下し、発電機を直撃した。
発電機は火花を散らして沈黙してしまった。
「なっ……!?」
Chanceさんが振り返り、目を丸くする。
「お前、何やったんだ!?」
「わ、私じゃありません! 看板が勝手に……!」
「勝手に落ちるわけあるか! ……チッ、これじゃ使い物にならねえ。移動するぞ!」
彼は舌打ちをして走り出す。
私は泣きそうな気分で彼を追った。
どうして?
私の周りだけで、物が壊れたり落ちたりする。
まるで、世界中が私をいじめているみたいだ。
「伏せろ!」
Chanceさんの鋭い声。
思考が中断される。
目の前の茂みから、あのマスクの男――Slasherが姿を現した。
今度は、完全に私たちを見ている。
「見つかった! 逃げろカリス!」
Chanceさんが発砲する。
カチッ。
――不発。
銃口からは煙一つ出ない。
「……マジかよ」
Slasherが唸り声を上げ、マチェーテを振り上げる。
Chanceさんは動けない。不発に驚いたのか、硬直している。
殺される。
(嫌だ!)
私はとっさに、近くにあったドラム缶を蹴り飛ばした。
重いはずのドラム缶が、なぜか軽く転がる。
そして、地面の窪みにハマり、信じられないバウンドをしてSlasherの足元へ飛び込んだ。
ドガッ!!
Slasherが足を取られて派手に転倒する。
その拍子に、彼が持っていたマチェーテが手からすっぽ抜け、回転しながら飛んでいき――近くの電柱のワイヤーを切断した。
バチバチバチッ!!
切れた電線が暴れ回り、Slasherの周りに火花の結界を作る。
怪物は感電し、立ち上がれない。
「……は?」
Chanceさんが口をあんぐりと開けている。
私も呆然としていた。
「い、今の内に逃げますよ!」
「お、おう! ……今の、何だったんだ?」
私たちは感電して痺れている怪物を尻目に、全力で逃げ出した。
私の『不運』が、初めて役に立った瞬間だった。
――カーン、カーン、カーン。
どこからともなく、無機質な鐘の音が鳴り響いた。
その音は、死刑執行の合図ではなく、試合終了のゴングだった。
Slasherの動きがピタリと止まる。
感電しながらも起き上がろうとしていた怪物が、霧のように揺らぎ始め、足元から消滅していく。
「……え?」
「タイムアップだ。サバイバーの勝ちってわけさ」
Chanceさんが帽子を目深にかぶり直す。
直後、私たちの足元が白く輝き始めた。
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