「では、話してもらおうか。」
立花先輩の鋭い瞳が私をうつす。
「はい。」
周りを見ると、5,6年生が真剣な顔で私を見ている。
「‥‥‥私は、竹の里という忍びの里に生まれました。里はとても綺麗で美しいところで、私は里で忍術を学びながら、母の手伝いをよくしていました。とても、幸せでした。‥‥‥あの日までは。」
自分の顔が歪んでいくのが分かる。
「十年間、私が4つの時、事は起こりました。兵士達が里を襲撃してきたんです。もちろん、里の皆はただの兵士に負けるわけなくて、最初は優勢だったんです。でも、」
頭の中に、あの日の光景が浮かぶ。
「奴らは、してはいけないことをした。森に火を放ったんです。里の人たちは皆森を大切にしてたから、火を消すことに目がいって、次々に殺されていきました。」
この場にいる全員が顔を歪めた。
「私は一番上の兄に助けられて、二人で麓の村の近くまで逃げました。‥‥だから私は生き残ったんです。」
「ちょっと待て、」
話を区切ると、立花先輩が声をはっした。
「何でしょうか?」
「今の話だと、生き残ったのはお前の兄と二人ではないのか?」
「はははっ、気づいちゃいました?兄は、私を麓の村まで連れて行ってから他の兄弟達を助けに戻ったんです。」
胸が締め付けられるような感覚にとらわれる。今すぐにでも泣きたい。でも、今泣くわけにはいかない。得意の作り笑みを作る。
「馬鹿でしょう?私達が里を抜け出したとき里は半分以上おちていたのに、助けに行くなんて。結局、兄はそのまま帰ってきませんでした。後から里に行ったら、里の子供を守るようにして死んでました。」
先輩達の顔が見れなくて目を伏せる。
「一人になった私は、頼れる人もいなくて色んなところを転々としていました。三郎にも言ったけど、毒草を食べたり泥水を飲んで命をつなぎました。そんな生活を一年続けていたとき、私はやっと見つけました。里を襲撃した城を。ちょうど戦の途中で、‥‥‥ドクタケとの戦でした。私はわざと肩に流れ弾をうけて、その城の兵士に助けられました。」
「っ!じゃああの傷は?!」
伊作先輩が私の左肩を見る。恐らく怪我の手当中に見たのだろう。
「はい。その時のものです。最初はドクタケの者じゃないかと怪しまれたりしたんですけど、まぁ信じてもらえて。城主様に、夕立氷樹郎に合わせてもらったんです。」
笑え、笑え、
「初対面のあいつに、私はある提案を持ち掛けました。‥‥‥一緒に忍術学園を落とさないかって、」
俯くな、
先輩達の顔が歪む。
「私なら学園に入学して内部の情報を得ることができるって言ったらまんまと飛びついてきて、私は相応しい力をつけるために、5歳で夕立城の忍び訓練に参加させられるようになりました。」
「5歳で!?」
勘右衛門が驚いた顔で私を見る。
「と言っても、最初の一年は基礎体力作りで命綱無しで崖を登ったり、1ヶ月に1回一週間ほど山で野宿させられたり、毒物への耐性強化でしたけどね。私が実践的な訓練を受けたのは6歳のときで、7歳で人の殺し方を教わり、8歳で初めて人を殺しました。」
皆の息を呑む声が耳に入る。
「私と同じくらいの歳の子で、瀕死の状態でした。助からないのはひと目見て分かりました。‥‥‥それでも、必死で私に手を伸ばして助けを乞うあの子を、私は苦無で滅多刺しにしました。」
「っ!」
善法寺先輩が顔を上げる。その顔はとても辛そうだ。
「あの時は本当に怖くて、震えが止まりませんでした。あの子の絶望に満ちた目が、いつまでも追ってくるような気がして。苦無を持つだけでもあのときの感触が蘇りました。‥‥‥でも、そんなのはすぐに無くなりました。9歳のとき、戦に駆り出され罪のない人を無条件に殺していった時から、私は人を殺すことに慣れていった。学園に入ったときには、私は百人は軽く手にかけていました。」
手のひらを撫でながら微笑むと、三郎が私を抱きしめた。
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