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目的地の駅を下りると、そこは緑が豊かでのどかな丘。
木造の家に低木の生垣、そして爽やかなそよ風が肌をくすぐった。
カゴメ「ふぅ…空気が美味しいわ、田舎はやっぱり良いわね」
般若「そうか?俺は都会の方が賑やかで良いと思うんだけど」
おかめ「さてと、地図によるとめぐみの牧場は…あの丘を越えたとこだね」
阿形「えぇ〜今度は歩き?俺もう疲れたぁ〜…」
隈取「おい阿形、まだ着いたばっかだろうが」
ヘロヘロになってしゃがみ込む阿形くんと、その肩を揺する隈取くん。
牧場までもう少しのところだけど、私も正直疲れてしまっている。
カゴメ「私ももうくたくたよ。今日は何処かで泊まって、また明日にでも牧場へ訪れましょ」
狐「お二人の言う通りですよ、隈ちゃん。休むことも大事です」
隈取「あ?しゃあねぇな…」
集落に到着すると、すぐに旅人用の宿が見えた。
古風な造りの建物は、周りの商店や近くの雑木林に雰囲気がぴったりで、様々なこだわりを感じた。
兄さんは意を決して宿の戸を叩く。
般若「御免くださーい、こちらに宿泊をしたいのですが、宜しいですかー?」
?「はーい!すぐに行きますー!」
中から声が聞こえ、木の床を滑るような足音が聞こえてきた。
やがて戸が開くと、出迎えてくれたのは優しげな表情の年配の女性。
どうやらこの宿の女将さんのようだ。
女将「はいはい、よくお越しくださいまし…あら…!」
女将さんは、会釈をして私たちを見上げると、少し驚いた顔をして、また嬉しそうに微笑んだ。
女将「あらまぁ、皆さんお若いこと。ささ、お疲れでしょう?どうぞ中へ」
私たちはそれぞれお辞儀をして、ぞろぞろと宿にお邪魔する。
宿の広間へ通され、阿形くんは椅子に座り込んで伸びをし、 女将さんは宿泊手続きの資料を取り出した。
女将「皆さん旅人…ではなさそうね。どうしてこんな田舎にいらしたの?」
その言葉におかめさんは、学生証と例の新聞を鞄から取り出した。
おかめ「僕たち、この燈湎魔法学校の生徒です。こちらに訪れた理由は、この新聞の内容を調べに来たんです」
おかめさんの学生証と新聞を交互に見た女将さんは、みるみるうちに笑顔が消え、表情が曇り出した。
カゴメ「お…女将さん?どうしましたの?」
女将「ま、正男さん…」
般若「し、知っているのですか?!」
女将「えぇ、もちろん…正男さんは本当に優しい人でした」
女将さんは俯いたまま、そっと正男さんについて話し始めた。
女将「朝早くの牛たちの散歩も一日も欠かさずに行って、動物たちもとっても幸せそうでした。彼の使い魔のとん吉くんとも…本当の友達…いえ、親子のように接していて…」
声が震えて、涙が頬を伝い、それでも女将さんは両手で顔を覆って話を続ける。
女将「せ、折角…お父さんの牧場を継げて…あんなに、張り切っていたのに…どうしてこんな…こんな…うっ…うっ…」
女将さんはとうとう泣き崩れてしまい、何も話してくれなくなってしまった。
そんな姿に、胸の内がぎゅっと締め付けられる感覚が襲う。
すると、正面玄関の戸が開く音が聞こえ、全員が振り向くとそこには、手拭いを首にかけた男性が入ってきていた。
?「ん?お、女将さん…!この人たちになんかされたんかい?」
女将「あ、ああ…ジルさん?ごめんなさいね、この人たちと正男さんの話をしてて… 」
袖で涙を拭いながら、ジルと呼ばれた人になんとか向き合う女将さん。
ジルさんはふらついている彼女をそっと支えて、裏手へ連れて行ってしまった。
阿形「なんか…とんでも展開になってきたね…」
カゴメ「そうね…正男さんって、色んな人に慕われていたのかも」
しばらくすると、ジルさんだけが私たちの元へ戻ってきた。
ジル「悪かったな、女将さんは事件のことがよっぽど受け入れられないみてぇで…兄貴のことは俺から話しておくよ」