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捏造、年齢操作、家族パロ、キャラ崩壊、何でも許せる方向け。晒し行為はお控えください
カゲツ、ライ→中二 小柳→高1 星導→成人
朝起きて、顔を洗った後もしばらく洗面台の前に立つ。自分の頬に手を伸ばして、口角の元に指を置いて上へあげてみる。作ったものでも完璧な笑顔は、伊波の自慢出来る物の一つだった。
ほんの気まぐれだった。こんな事をするのは極稀で、たまに自分はどんな風に笑っているのだろうと、気になってやる事があるだけで、特に深い意味はなかったのだ。ただ、この日は運が悪かったのだろう。
「笑顔の練習なんてお前にはいらんだろ。」
「わっ!?…びっくりしたぁ。」
振り返ると、パジャマ姿のロウ。相変わらずの顰めっ面で、鋭い目でこちらを見るが、決して睨みつけている訳ではない事を伊波は知っていた。
「…練習なんかじゃないよ。
昨日笑い過ぎて、ちょっとほっぺた痛かっただけ。」
ヘラヘラしながら答える伊波に、ロウは鼻を鳴らして入れ替わるように洗面台の前に立つ。
制服に着替えてからふと、洗面台の方を見てみると。同じような仕草をして見るけれど伊波のようにはいかず、無理やり口角を上げようとしているロウの姿が目に入り、伊波は盛大に吹き出した。
「なっ…!」
「うそでしょ…!あのっ!あのロウが……
あっはははっ!」
思わず大爆笑をすれば、やかんのように赤くなったロウの顔。それにまた笑いがこみ上げてきて、伊波は腹を抱えて笑った。
「あ〜あ…めちゃめちゃ笑ったぁ〜……ふっあはっ!ふふ…。」
「お前…!いい加減煩いぞ!!笑い過ぎだ!」
思い出し笑いもしてしまう伊波に、ロウは呆れたようにして制服に腕を通した。
写真撮っときたかったなぁ〜なんてほざく彼を意図的に睨みつけるが、伊波はそれに気付かずスマホを見つめている。大方朝一緒に登校する友達と連絡しているんだろう。
「こんな笑ってんなら尚更練習要らないだろ。」
「だから練習じゃないって。勝手に変な闇深考察しないでよ。」
「ふーん…。」
サラサラの髪をワシャワシャと手でといてそれだけでセットを済ますロウに、ライは若干引いた目で見つめた。
午前9時頃、リビングに同じく制服に着替えて髪に寝癖をつけたままであろうカゲツが欠伸をしながら入ってくる。その後にいた星導が、エプロンを着用し朝食の準備に取りかかった。
伊波は、食卓で今日のロウの激オモロシーンを二人に伝えようか迷ったが、流石にロウに殺されそうなので言わないでおく事にした。
帰宅部である小柳は、人気があまりない時間帯に下校するのが楽で好きだった。
しかし、この日は何やら中学生を多く見かける。特別行事だったのだろうか、ツイてないなと思いながら、いつもの川の橋を歩いた。
ふと、向こうに見知った顔を見た。
「…何してんだ?アレ。」
複数人の中、一人が川に手を伸ばして他三人程度が手を繋いで川に落ちないよう岸に引き止めている。その川に手を伸ばしているのが伊波である事にはすぐ気付き、では何に手を伸ばしているかと言うと見たところネットに絡まった鴨を助けようとしているらしい。
前々から正義感が強い奴だと思っていた。死んだスズメを悲しそうに帽子に入れて持って帰ったような奴だった。しかし、丁度鳥インフルが流行っていた時の事でその時は星導に優しくも怒られていた気がする。
頑張ってるなぁ〜なんて、じぃさん見たいな事を思いながら通り過ぎようとした。その時、バシャン!と音が川の方から鳴ったのだ。川はそう浅くない、深くもない、大人が足をついて腰上まで浸かる程度だ。しかし、成長期でしかも小柄の内に入る伊波は顔面から水に入った事もあってバシャバシャと水を叩いて顔を上げ下げしている。
小柳は、カバンを放り投げて橋から飛び降りた。
「っ!げほっ、けほ…はっ…はー!死ぬかと思った!」
伊波の腕を肩にかけて、ほとりまで歩き道路に投げた。ぐえっと零してコンクリートの破片を背中に付けながら立ち上がる。
気付けば伊波以外の中坊共は何処にもいなく、振り返れば走って逃げていく後ろ姿が見えた。その後ろ姿を睨みつけ、今度はいつの間にか抱えていた鴨に絡まったネットを外す伊波を睨む。
「お前、もうアイツらと絡むの辞めろよ。」
「え、なんで?」
「命綱だった奴がお前の手を離した。ちょっとしたイタズラのつもりかも知んねぇけど、溺れてるのに助けもしない。」
「気のせいじゃない?濡れて手が滑っただけだよ。」
「お前なぁ…!」
イラついてこのまま説教垂れてやろうかと思いながら、伊波の方を向けば、やはりへらへらとした顔で鴨のネットを外し終えたのか川に戻している。
元気に生きろよ〜なんて言いながら川を泳いで行く鴨に手を降って、近くに置いていたカバンを手に取った。
「……お前、虐められてないか?」
「オレが? まさか。逆に人気者だよ。」
「自分で言わないぞ、そう言うのは。」
一つ、大きく溜息をついた。シャツの裾を絞っている伊波を見て自分も同じく裾を絞る。全身びちゃびちゃで暑い夏の始まりである6月でも少し肌寒いなんて思ってしまう。
「うわっ、なんでそんなビチョビチョなん?」
伊波の後ろからこちらに歩いてきたカゲツに心底不思議そうに見られ、暑すぎて川に飛び込んだのかと勘違いされた。
テレビに映るニュースキャスターが本日の天気を伝える。今日は一日通してずっと晴れであり、絶好の洗濯物日和だ。
ボソボソと眠気眼でパンを囓るカゲツとは対照的にライはパクパクと若干急いで食べてるように見える。
「よく噛んで食べてね。」
近くに麦茶を入れたコップを置いて伝えると、ライは口いっぱいにしながらこくこくと頷いた。
洗濯機から洗濯物を取り出し、カゴを持って廊下を歩いていたら、先に出ていたはずのロウが扉から顔を出した。
「ラーイ?外でお前の友達が待ってる。」
「もうちょっと待っててって伝えて!」
「ん。」
そう言うとまた顔を引っ込めようとする、そこで思い出し急いで彼にお弁当を渡す。彼は嫌そうな顔をして渋々受け取った。きっと、仮病を使って早退して家で食べるつもりだったのだろう。
最後の一口を飲み込むより先に立ち上がったライがカバンを探して一階と二階の階段を行ったり来たりしている。
一緒になって探してやるが、自分の部屋に置き去りにしていたようで靴の踵を踏みながら玄関を出ていった。
ロウが家を出ると、扉すぐ横にいたであろう学生がパッと笑顔でこちらに「おはよう!」と挨拶しかけ、ぎょっとした目でこちらを見て固まる。
それは人見知りを拗らせているロウも同じで、そりゃもう驚いて、叫ぶ一歩手前で留まりジッとその少年を見つめた。
少年は気不味そうにすみません。と俯いて謝る。人違いをしたようで、下二人のどちらかの友達だろう。
ふと、彼のつけている名札が目に入り「緋八」は最近ライからよく聞く人物の名字であると思い出す。
「お前、ライの友達?」
「え?…そうですけど…。」
「…ちょっと待ってろ。」
そう言って、扉を開けたまま二階の住居スペースに向かった。
ライに友達が待ってるとだけ伝えようとしたのに星導から弁当を受け取ってしまった…。雑にカバンに入れると小走りで階段を降りるライに抜かされる。
元気よく外にいた友達に挨拶し、そこで履きかけていた靴を直す。
「おはよー!ごめん寝坊した。」
「お、おはよー…。」
「ん?、どうしたの?」
「いや、ちょっとな…」
2人を無視して学校へ向かおうとするロウにライは肩を手の平で軽く押し、「いってらー!」とイタズラっぽく言った。ロウは一瞬驚いて顰めっ面でライを睨んだ。
すぐに前を向いて歩き出すロウをクスクス笑うライに緋八は小声で話す。
「実は、さっきあの人が出てきた時ライやと思ってさ、初対面なのにめっちゃ元気よく挨拶してもうてん。」
「えー! なにそれぇ!めっちゃおもろいじゃん!」
「ほんま恥ずかったぁー……。」
そう笑い合いながら二人はロウとは反対の道へ進み始める。
ライ、カゲツ→中一 小柳→中三
「なぁ、ライ見ろよコレ!」
同じクラスの中でも特に仲のいい隣の席の生徒が伊波にスマホを向ける。そこには最近有名になってきたソシャゲが開かれており画面には今一番強いとされる最高レアリティのキャラが映っている。
「10連で出た!0.03%だせ?スゲーだろ!?」
「すごっ、てかそのゲームうちのお兄ちゃんもやってるやつだ。」
「え、ライの兄ちゃんって、小柳先輩だよな…?」
「…そうだけど?」
近くにいた者全員ざわざわとしだす。伊波には何故こんな空気になったのかイマイチ分からなかった。
「小柳さんソシャゲとかするんだ……」
「これ結構可愛い女子を愛でる系だよな…?」
伊波は首を傾げる。そこにガラガラと扉が開き、入ってきたのはクラスのお調子者で、この空気は何事かと渦の中心へとズカズカと入ってきた。
「なになにー?なにがあった??」
「いや…別に……」
皆が言い淀む中、ふと伊波はお調子者が鞄に着けていたキーホルダーが目に入る。
「あ、それうちのお兄ちゃんも持ってる。」
「え?これ??」
そう指差したのは猫のキーホルダーでフェルトで出てきた灰色の可愛らしい顔がぶら下がっていた。
「これ、妹から貰ったんだけど……。」
「へーそうなんだ、うちのお兄ちゃんは自分で買ってたよ。」
「へ、へぇ……。」
体育終わり、伊波のクラスが授業を終えると一つ上の学年が入って来た。
「ラケットを持っている人は次の学年の人に渡してー。」
そう体育教師の呼び掛けが入る。伊波は手元を見る必要も無くわかる事だが、ラケットを持っていて、渡しに行かなければならない。そこに友人が寄ってきた。
「お、あそこにライの兄ちゃんいんじゃん、渡して来なよ。」
「…ほんとだ。おに……」
とそこまで言いかけて伊波は気づく。普段、友人に兄すなわち小柳の事を話す時毎回お兄ちゃんと言っているが、小柳に向けてお兄ちゃんと言ったことは一度もないのだ。家では小柳かロウで、学校で話すことなんてないと油断していたのかも知れない。
「ライ? どうした?」
「………。」
伊波はラケットを握りしめ、早歩きから小走りで小柳の元へ駆け寄る。そして「ん。」とだけ言ってラケットを押し付けた。
小柳は大変困惑し普段は滅多に人と話さない圧のオーラを放っている彼だがこの時は薄れ、クラスメイト数人が覗き込みニヤニヤとした表情で野次を飛ばす。
「今の誰?弟?」
「弟くん可愛いー!」
そんな中小柳はなんだアイツとしか頭になかった。