深くずっと眠っていた。
でも音はずっと聞こえていて
人間死ぬ時も最後まで音が聞こえるって言うけどそれは本当かもしれない。
でも聞こえてきた言葉は、大好きな人が甘く俺を愛しんでくれるフレーズばかりだからきっと夢だと思っていた。
【好きだよ。大好きだ。この世で1番な】
その告白と共に、今までだだっ広い水面に浮く様な意識の中で、ふと懐かしい匂いがした。
なんとなくこの匂いを辿れば会える気がして。
手繰る様にしていくと、体はどんどん空気を含んだ様な感覚になり、指先まで血が巡る重い感覚が戻る。
カーテンが閉じた様な暗い感覚から目を開けると、目の前には夜を閉じ込めたような綺麗な瞳があった。
鳴『…………ょ……………ぅ………』
無「え」
喉が張り付いたようで声が上手く出ない。指一本も動かせないほど身体が思い。目の前にいる無人くんはその目をパチパチしていた。
無「起き、た……起きたのか……」
そう言うと、俺に覆い被さる様に抱き締めてくれた。
髪の柔らかさも温かい体温も鍛えられた筋肉も、全部感じる。
俺、生きてたみたい
無「おはよう。鳴海。よく眠れたか?」
その後京夜くんに説明を受け、1年眠っていた事に困惑。
身体の調子は沢山寝て良くなった。
あの後、皆が各方面に働きかけ桃太郎機関に向けわざと俺という人物は死んだ事にしたらしい。
どこにも属さないただの人間になった。
ただ無人くんが、可愛いだの好きだの俺に向かって吐くのが信じられなくて何事?ってなったけど「色々と踏ん切りがついただけだ。」と笑っていた。
無「起きて早々だが、お前にプレゼントがある。驚いて倒れるなよ」
鳴『プレゼント…でも、』
無「お前は俺たちの為にやってたんだろ?大丈夫。受け取っていいよ」
すると1枚の書類を渡してきた
無「戸籍だ。」
鳴『戸籍…………え、戸籍????』
無「そう、戸籍だ」
買えるの?え、買っていい物なの?駄目だろ。どんな金の使い方したんだ。
色々ツッコミどころが多すぎて頭を抱えているとその書類をピン!と弾いて俺にみせる
無「親に売られた時すでにお前の戸籍はなかったんだ。だから、作った。俺の隣で生きていくのに負い目がないように。」
鳴『隣………?』
無「そんなの甘い絆を作ったつもりは無い」
するとその手で肩を抱き寄せらせ額にちゅっと口付けられた。突然の事に対処出来ずにいると、俺の様子を見て心底楽しそうな笑顔みせる無人くん。
無「何年待ったと思ってるんだ?何がなんだろうと隣にいてもらうからな。死ぬまでそばにいてくれ」
鳴『………………夢?』
キスされてプロポーズ紛いな事をして甘くて甘くてしかたない。
フリーズしてる俺を他所にとろりとした顔で無人くんが笑う
無「幸せな夢だな。でも目覚めさせるつもりはないから。」
そういうとまた頬にキスを落とされる。
ちょ、ちょっと待って京夜くんいるんだけど目の前に。
目だけで助けを求めるとコーヒーを啜りながら楽しそうに俺の困惑顔を眺める
京「今まで投げ売りしてきた愛情が時間差で帰ってきただけでしょ?可愛い顔してんだからさ貼り付けた笑顔よりなるちゃん自身の笑顔で笑いなよ。俺はそっちの方が好きだよ」
鳴『う……ぁ……』
無「可愛い」
京「ふはっ、なるちゃんの困惑顔見たら猫ちゃん達驚くだろうね」
鳴『ひえ………』
無「可愛い。ひたすらに可愛い。食べたい」
両手で頬を支えられると唇に噛み付くようにキスをされた。
驚き過ぎて肩が跳ねると京夜君がカラカラと愉快そうに笑った。
京「ダノッチはあの後すげー頑張ってたからさご褒美だと思いなよ。」
とりあえず飲み物飲もうねと水を渡された。
京「これから忙しくなるよ〜。寝てる間に色んなもの増えたから」
そして校長や各方面に謝ったりお礼を伝えたり幽ちゃんと猫ちゃんにも会いに行った。
鳴『2人とも元気してたー?』
幽「無茶…ゴホッ、しないでください。」
猫「会えて良かったです。本当に」
猫かぶりちゃんがこんなにしょげてるのは初めて見るなぁ。
馨「先輩おはようございます」
鳴『あ、馨ちゃんだ!おはよー』
見知らぬ後輩ちゃんも増えていた。
俺の持つ部隊はなんと無人くんが代わりに請け負っていてくれたらしい。頭上がんねぇや
久々な穏やかな日々。これから住むところを考えなきゃと自室で悩んでた時には無人くんが口を出してきて
無「物件情報?」
鳴『まぁセーフティハウス的な?いつまでもこの大部屋はね。かと言って職員寮も…』
無「1人で住むつもりか?なら俺のセーフティハウスに来い。部屋は空いてるから」
鳴『えっ、無人くんと住むとか俺何しでかすか分かんないよ』
無「逆だろ逆。俺に手を出されるのを覚悟しろよ」
鳴『ひぇ…俺、人の形保っていけるかな…』
顔を覆って限界を迎えると顎を掬われる。
無「あと、呼び方。いつ変えるんだ?遺書で無人って呼んだのに未だ無人くん呼びなのは納得がいかないんだが?」
鳴『むっ、無理ですぅぅぅぅ…推しの供給過多で俺死んじゃう!』
無「もう死ぬなって、ほら」
鳴『や、あの、、恥ずかしい…』
無「全部リセットされたから俺も推しに貢げる…全部買い与えるか」
鳴『え、推し?』
無「お前のことだが」
指さすのは紛れもない俺の方角で。
一気に顔が真っ赤になる。耳の端が熱い
鳴『俺もっと無人くんの事好きになっちゃう…』
無「俺も好きだよ。大好き。愛してる」
そのまま俺の布団に寝転がる。
抱きしめられながら布団と無人くんに挟まれて。
今まで何人もの男に抱かれてきたけど、心臓がブッちぎれそうなほど高鳴りが酷い。
鳴『他人の手垢だらけだよ。美味しくないからペッしてよ』
無「じゃあ俺が洗って綺麗にして食べるよ。今まで好き放題されてきたんだろ。愛情たっぷりに抱いてやる。料理の腕には自信があるからな」
首筋にキスを落とされるだけでもくすぐったくて。
少し身をよじると満足そうな顔をしている。男だな、って思った。
今から好きな人に抱かれる、それだけで恥ずかしさと幸福感でどうにかなりそう。
無「俺、体力には自信がある方だがお前は大丈夫だろ?朝までいじめ尽くすから」
鳴『………ヌカロクってやつ?』
無「むしろ6回で済むと?」
鳴『やだぁえっち♡』
無「下半身は別腹さ」
鳴『だよねぇ〜〜〜〜〜♡』
無「今まで見たことない俺が見れるぞ。お前も俺に可愛いところもっと見せろよ」
鳴『…………ばか』
翌朝起きた時には、狭いシングルベットで包まれるように無人に抱きしめられて眠っていた。腕を眺めると痕がすごくて一晩のえげつなさを感じた。
鳴『(腕にまで歯型…独占欲弱そうって思ってたけど強かったな。全部吹っ切れたからかな)』
今まで沢山身体に残されたどの痕よりも愛おしくて全部残しておきたいほどだった。
無「おはよう」
鳴『わぁ♡目覚めてすぐ無人くんの顔が見れるなんて♡おはよう無人くん♡♡』
無「あれだけヤったのに元気だな。鳴海」
無人くんの分も水を取りに行こうと立ち上がったら寝ぼけながらも腰を引き止められた。
無「駄目だ。行くのは」
鳴『お水取りに行きたいんだけどなぁ』
無「それでも」
変化を楽しむ関係が恋人同士が、これ程まで幸せなものだとは知らなかった。
無「名前、呼んでくれないか?」
鳴『………無人』
無「ふ、なんでそんな舌っ足らずになるんだ」
鳴『意識しないと無人くんって呼んじゃいそうだから…』
無「まぁ、他のやつに聞かれるよりかはマシか。俺だけの特権だ。」
そうして額に軽くキスをしてくれた。
無「腕枕するか?」
鳴『え、いいの?』
無「おいで」
俺の最愛の人。
鳴『無人、この世で1番だぁい好き』
無「俺もだよ鳴海」
初恋以外は全部いらない
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