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好きすぎて森になった(????) なんでこう言うのかけるん???ほんま???? 好きだが?????

毎回読ませてもらってます😭💗まじでrtttにしか出せない雰囲気とか会話の節々に見えるめろポイントとか解釈一致すぎて泣けます😭💗これからも応援してます🫡💗

マジで今回も傑作でした! 最初ttが攻めっぽいと聞いて大丈夫かなと思っていたんですけどめっちゃどタイプでした。 また新しい扉が開かれそうです
⚠︎本番描写はありませんが年齢指定作品です。未成年の方は読まないでください⚠︎
媚薬ネタ。飲むのは🌩️の方です。
工スコートホ゛イスの内容がちょっと入っていますが、本編とは何も関係ありません。というか全然こんな話じゃありません。
🤝がかなり攻めっ気増し増しな襲い受け(?)です。読む人を選ぶと思いますので、この時点で嫌な予感がしたらブラウザバックしてください。
全然関係はないんですが、🌩️の工スコートホ゛イスいつも以上にばかメロくて余裕で狂えるのでまだ聞いていない方は是非(ダイマ)。
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「ただいま……」
「おかえり〜……って、どうしたのその顔……?」
帰宅早々、玄関で待ち構えていたテツは怪訝そうに眉を顰めた。
慣れない革靴をずっと履いていたせいで靴擦れができてしまっている上、とある事情によって今は歩くことさえ困難だ。テツはそんな足取りの覚束ない俺を支えるようとしてくれるが、今は少しでも刺激を取り除きたいので首を振って断る。
そうして自然と交わった視線に「まずい」と思い、すぐに引きちぎる。一瞬だけ視界の端に映った顔はどこか驚きと困惑が入り混じったような表情をしていた。
「……今日は昔の知り合いと、会食パーティだかに行ってくるだけ、って聞いてたんだけど……なんでそんな、今すぐにでも捕食してきそうな顔してんの?」
「…………」
そういえば隠すという思考にすら至っていなかったな、とぼんやり思いながら、いやに熱の集まる頭でどうにか言い訳を考えた。
「…………なんでもない」
「なんでもないわけないだろ。なんだよその間は。俺がきみの異常に気付かないとでも思ってんの?」
「っごめ、きょうはマジでだめ」
「……ほんとにどうしたの? 詮索されたくないならそれでもいいけど、せめて理由くらい聞かせてよ」
「……あーー……」
理由。理由っつったって、それが一番言いたくないんだけど。何故って? それを言えばこいつが絶対に引き下がってくれなくなるであろうことが明白だからだ。
ああでも、あれだ。嘘はつきたくない。洒落にならない、今後の関係性に響くようなことはちゃんと話しておきたい──なんてのはきっと、俺の頭が硬いと言われる所以なんだろう。
ようはとっとと楽になりたいがための言い訳を十分に用意して、ようやく俺は口を開いた。
「………………盛られた」
「……え? 何を?」
「わかんね、薬……? だと思う。会食に来てた趣味の悪そうな奴に──多分精力剤か、媚薬、みたいなやつ」
「……それ合法のやつ?」
「わかんねえ……」
やっとのことでそれだけ呟くと、俺は寝室のドアの前で蹲ってしまった。これはいよいよだめだ。頭がぐらぐら煮えて身体中の細胞が過敏になって、もう一歩も動けない。
煙草の匂いが鼻先を掠めて、それがやけに懐かしく思えて目頭がじんと熱くなる。どんだけ余裕がないんだよ、と少し冷静になりながら、散らかった思考を整理することにした。
──最初から、妙に馴れ馴れしいひとだとは思っていた。けれどそれは自分でなく連れに対してであったし、実際そいつが狙っていたのも俺じゃなかったんだろう。
そいつに不自然に手渡された、奇抜な色のノンアルコールカクテル。きっとあれに何かしらの薬が入れられていたんだろう。そいつが去ったあとに一応断りを入れてから飲み干して、その苦いんだか甘いんだか分からないひどい味に『飲むのがこいつじゃなくて良かった』と心から思った。
少し経ってから再度声をかけてきたそいつは平然と受け答えする連れにつまらなそうな反応をして、そそくさと退散していった。ああいった連中は摘発するのが難しく今回は特に会社絡みの付き合いであるため、目論見通りの相手が被害に遭っていたら泣き寝入りするしかなかったかもしれない。
もしあの場に俺がいなかったら、と思うとぞっとする。
「ね、リトくん。今どんな感じ?」
「……あ?」
「その精力剤だか媚薬だかって創作上ではよく見るけど、実際効果はどんなもんなのかなって。完全に興味本位なんだけど」
「……お前なぁ……」
心配してくれるのかと思っていたが、こんなときでもテツの好奇心第一主義は変わらないらしい。
……まあ、むしろ今はそっちの方が助かるくらいだ。びっしり鳥肌の立った腕をさすりながら、俺は健気にその感覚を言語化しようとしていた。
「……なんつうか、身体が変に熱っぽくて……でも風邪のときみたいに節々が痛む感じじゃなくて、こう……身体の芯がじくじくして、うずく……」
「ほんとだ、すごい汗──あぁ、今は触んない方がいいか」
「う゛、ん……あと、頭がうまく動かなくって……気ぬいたら、だめになりそ、で…………楽んなることしか、考えらんねえ」
「……楽になること、ねぇ……」
そのために必要とされるであろう行為を想像してか、テツが声を低く歪ませる。けれど俺は絶対テツには頼りたくないし、どれだけ辛かろうとひとりでどうにか済ませるつもりだ。だって、この世で一番大切な人を、性欲を発散させるためだけに使うようなことはしたくなかったから。
ただでさえテツの身体に負担がかかって、一歩間違えば取り返しのつかないような傷を心にも身体にも付けてしまうかもしれない行為なのだ。だからこそ最中には慎重に愛をもって接したかったし、触れるたびにどうか怖がられませんようにと心の中で祈ってすらいた。
そんなことを理性も碌に保てないような今やってみろ。どんな結果になるにしろ、きっと一生の後悔になるであろうことは想像に難くなかった。
全身の血液が煮えたぎっているみたいに熱くて、荒い呼吸を隠すことすらできそうにない。はぁッ、と唸るように息を吐くたびに、思考力も一緒に出ていってしまうような錯覚を覚える。
それをテツは、身じろぎひとつせずに見守っている。
「……味は?」
「、は……? 味?」
「その薬の味。どんな感じだった?」
「……どんな、って言われても……」
俺は言われるがまま、なるべく詳細に薬を飲み干したときのことを思い出す。場を繋ぐ言葉すら思いつかず黙り込む俺を、相変わらずテツは何も言わずにただじっと待っていた。
「……甘かった。あんま好きじゃない甘さ……人工甘味料とか、多分そういう……誤魔化すための味付け? みたいなもんだと思う」
「誤魔化すための……ってことは、そのあとに違う味がした?」
「ん……確かに後味は苦かった。やっぱどっか薬っぽいっつうか、子供用の咳止めシロップみたいな味……? あと、なんかの結晶……なのかな。溶け残ったそれが舌に残って、すげえ嫌だった」
「…………結晶、か」
「やっぱ合法じゃないやつ?」と聞くと、「どうかな、調べてみないと分かんないかも」ととてつもなく不安が残る答えを返される。
そうしてしばらく黙考していたテツは何を思ったか、突然ぐいと身を寄せてきた。煙草の匂いがふわりと立って、俺は依然として体勢を変えられない。
「ッ、おまえ……」
「じゃあ、効き始めまでの時間は?」
「……は?」
「だから、それ飲まされてから、効果が出るまでにかかった時間」
「…………ッ」
こんな状態で聞くことがそれかよ。そう毒づいてやろうかとも思ったが、元より薬のせいでぼやけた思考は、隣から香り立つ苦い煙草に色気のないシャンプー、それからほんの少しの体臭によって散らかされていく。
結局皮肉のひとつも言えなくて、俺はまたしてもテツの問いかけに答えることしかできないのだった。
「……正確には分かんねえけど、多分……20分かそこら、だと思う。それくらいのときちょうど声かけてきたし……」
「ふぅん、効きの長さにしては随分と即効性だね。その分たちが悪い」
「あ゛ーー……マジで、飲むんじゃなかったわほんと……でも、あいつが狙われてるって思ったら、多少怪しくても代わりに飲むしかなくってさぁ……」
「…………え?」
「ん……?」
俺の言葉を聞いたテツが素っ頓狂な声を上げる。思わず顔を上げると、丸く見開かれた目は明らかに動揺していた。
「……待って、最初からリトくんが狙いだったんじゃないの?」
「ああ……言ってなかったっけ? 最初渡されたのは友達の方で、態度とかタイミングとか……とにかく全部怪しかったから、俺が代わりに飲んだの」
「……あ、あぁそう、……きみがそういう目で見られてたんじゃなかったんだ……」
「は……当たり前だろ。俺みたいな大男に誰が薬なんか盛るかよ……」
「俺なら全然盛るけどな」という恐ろしい呟きは聞こえなかったことにして、さっさとそっぽを向いてしまう。何か別の方向に気を逸らしていないと、どうしても意識が左の肩に寄せられた薄い胸板に行ってしまってだめだ。
なんでこんなときに限って薄着なんだよ、お前は。
「……あれ、っていうことはさ、薬飲んでから帰ってくるまでは結構時間があったってこと?」
「え? ……ああ、まぁ、1時間くらい?」
「…………1時間もその顔、他の人に見せたんだ?」
「……テツ……?」
そう言うテツはどろりと濁った瞳でこちらを見上げていて、口元には貼り付けたような笑みが浮かんでいる。……何やら不穏な空気になってきた。心なしか体感温度がぐんと下がったような気がする。
「……きみってほんと、どこまでもヒーローだよな。そんなふうに身を挺してまで友達を守って……かっこいいなぁ。きみが守ってくれてたことを知ったらその子、きみのこと好きになっちゃうかもね」
「そ、そんなこと、」
「あるよ。だって現に僕はそうやってきみに惚れちゃったんだから。……こんなにかっこよくばっちりキメたきみを独り占めできて、さりげなくスマートに守ってもらって……ずるいなぁ、その子」
独り言みたいに呟かれた声はさっきともまた違った暗い響きを持っていて。内に秘めた感情を圧縮したような空気の振動が、肌にさえ伝わってくるような気がした。
もしかしてまずいんじゃないか、なんて今更気付いた俺にテツは更に追い討ちをかける。
「──ねぇ、僕ってそんな淡白なように見える?」
「……は、」
「ごめん、言い方変えるわ。……僕が、信じて送り出した恋人が知らない人に王子様ムーブかました上で、知らない人に媚薬盛られて真っ赤な顔して帰ってきても嫉妬とかしないタイプに見える? って話なんだけど」
「……いや、言ってる意味がよくわかんねえんだけど……お、怒ってる……?」
「…………怒ってないよ。ただちょっと、さすがの僕も余裕ないってだけ」
テツはそう言ってふい、と顔を背けたかと思うと、俺の肩口に手を置いた。
瞬間、視界がぐるりと反転する。
「、っおい……?」
「……はは。ほんとに力入んないんだね、僕でも簡単に押し倒せちゃうくらい。……ね、リトくん、────抱いてよ」
耳元で吐息たっぷりに囁かれ、自分の意思とは関係なしに身体がびくっと跳ねる。ゆっくりと身体を離したテツの瞳は、まるで焦げついたブルーベリーのジャムみたいにどす黒い紫色をしていて。それでいててんで逃げようという気も起きないほど穏やかに凪いでいるものだから困った。
なかなか返事をしない俺に苛立つこともなく、テツは手持ち無沙汰に俺の髪を撫で梳いてくる。時間をかけてセットした髪が、指と指の間でぐしゃりと崩れる。
──まずい、このままだと流される。いつになく危機を感じた俺は咄嗟に拒絶の言葉を吐いた。
「っだ、めだ、……俺、お前にひどいことしたくねえ、」
「……今の状況分かってる? きみ今、僕に押し倒されてるんだよ。この状況で加害者を選ぶとしたら間違いなく僕の方だろ」
「〜〜〜っ、でも……っ!」
「……はぁ。確かに、その高潔さはきみの美徳ではあるけどさ」
やれやれ、といった表情でテツはおもむろに上体を起こす。何をするのかと思えば、あろうことかそのまま腰の後ろに手を回して俺の股間をまさぐり始めた。
さすがに止めなければと腕を伸ばしかけた矢先、柔らかい尻の感触が過敏になった神経の上をずりっ、と這って、思わず喉からくぐもった呻きが絞り出された。
「ぐ、ッぅ゛……っ!」
「あ〜〜……好きだな、その顔……もちろんいつもの爽やかなヒーロースマイルも大好きだけど、ほら……そういう雄、って感じの顔、僕にしか見せないでしょ」
「っ、テツ、マジでっ……やめろって……!」
「……うん、」
俺の制止の声を聞いているんだかいないんだか、テツは相変わらず腰を前後に揺らしながら、ぐりぐりと俺のちんこを甚振り続ける。全ての感覚が鋭敏になった今ではそんな刺激すらも毒となり、気を抜けばすぐにでも射精してしまいそうだ。
それでもなお抵抗を続ける俺にテツも負けじと悪魔の囁きを浴びせてくる。甘ったるく掠れた声に、徐々に理性が剥がされていく。
「──全部僕のせいにしちゃえばいいよ。きみは精一杯我慢したのに、こんなふうに煽ったりした僕が悪いって。それでいいでしょ?
……ね、だからさ……僕にしか見せない顔、もっと見せてよ──おねがい、」
「──ッく、〜〜〜〜ッッ゛!!」
あと一瞬遅ければまずかった、というすんでのところで、俺は最後の力を振り絞ってテツの身体を突き飛ばした。突然の反撃に目を白黒させているテツに今度は俺が覆い被さり、顔の真横にどん、と手をつく。
「はぁ、ッ……──そうやってわざとヒールに回ろうとすんの、悪い癖だぞ」
「……きみに言われたくないね」
そう言って拗ねたようにそっぽを向いてしまうテツは、一瞬前までの顔つきが嘘のように子供っぽく見えた。
俺はむくれているテツに「ごめん」と小さく謝罪して、頬にてのひらを当ててやる。床についたせいで冷えた手に柔らかな温もりが伝わってきて、愛おしさがぎゅっとこみ上げた。
「……心配しなくても、俺にとって特別なのはテツだけだって。こんな顔見せんのもこういうことすんのも全部、お前にだけ」
「……どうでしょうね。今日も帰ってくるまでにその自慢のセクシーを振り撒いたりしたんじゃないの?」
「は、俺のこと何だと思ってんのお前……大丈夫だって。ちょっとやばいなってなってきたのはちゃんと家帰ってきてからだから。……隠し事は得意なんだよね、俺」
「……うわ、なんか嫌味」
「本心だって」
相変わらず目を合わせてくれないテツの頬にキスを降らせて、反射でこちらを向いたへの字の口に続けてもうひとつ軽いキスを贈る。テツは一瞬だけ驚いたように目を丸くしてから、「そんなので絆されないんだからねっ!」とわざとらしく頬を膨らませた。
それがかわいくてしょうがなくて、そうしてじゃれているうちにいよいよ頭がぼうっとしてくる。くそ、どんだけ強い薬なんだよ、あれ。
「…………な、テツ……ほんとにいいの。今日はマジで俺、歯止め効かねえと思うけど。……そもそもここ、廊下だし」
「、今更……いいじゃん、たまにはこういうのも。俺だってたまにはかっこつけてない、ありのままのきみが欲しいよ」
「……お前、そうやって意識してないときのがやばいこと言ってんだよな」
「これもわざとだから」ととぼける口を塞いで、あとはテツのお望み通り、自分の欲に従ってしまうことにする。屈んだときに肩周りの縫製が悲鳴を上げたのが分かって、せっかく仕立てたオーダーメイドのスーツに皺がついてしまうな、と冷静な思考が一瞬だけ脳裏をよぎった。
丁寧に扱っている余裕もないので乱雑にジャケットを脱いでネクタイを緩めると、テツはそれを夢でも見ているみたいに潤んだ目でじっと見つめてくる。
「……やっぱずるいよ、そんな仕草だって様になっちゃうの」
「ふ、だから……これも全部、お前にだけだって」
§ § §
瞼に透ける光が眩しくて、渋々ながらに目を開く。──アルコールを飲んだときに似た喉の渇きと倦怠感。それに頭がガンガンする。
なんでこんなに身体が重いんだ、と記憶を遡れば、昨日の出来事が一気に蘇ってきた。
「────ッッやば、」
「あ、おはようリトくん。まだ寝てた方がいいよ」
人として色々と大切なものを取り戻した俺が飛び起きようとするのを、ベッド横の椅子に座ったテツが制してくる。片手には連絡用のスマホが握られており、何やら長文のやり取りをしているようだった。
見てみればしわくちゃになっていたはずのワイシャツは寝巻き代わりのジャージに着替えさせられているし、汗やら何やらでべとべとだった身体は綺麗さっぱり拭き取られている。……いや、いつも俺がやっていることではあるけど、いざやられる側になると結構罪悪感すごいな。特にこんな巨体をベッドまで運ばせてしまったという罪悪感が。
未だ整理がつかない俺の脳は、とりあえず痴態を晒したことを詫びるべきだと判断した。
「っごめん、俺……」
「えぇ……昨日あんだけ俺に好き勝手されておいてまだそんな殊勝な態度保てるの? すごいなきみ……」
感心しているんだか引いているんだか、若干頬を染めながらこちらをじとりと睨むテツに、昨日のより鮮明な光景を思い出す。
なんというか──あえて言葉にはしないでおくが、俺もテツも、いつもと違った状況でテンションが上がってしまっていたのは確かだ。
そして今になってなんとなく分かるのは、昨日の強引な誘い方は俺が引け目を感じてしまわないよう、分かりやすい口実を作ろうとしてくれていたんだろうということ。嫉妬していたのも事実ではあるんだろうが、よりによって『僕のせいにしちゃえばいい』なんて台詞、素面のこいつから出てくるはずがないからな。
……相変わらず恐ろしい演技力だ、と出会ってから何度目かの嘆息を漏らす。
「──それよりさ、昨日きみに薬飲ませた犯人、もう逮捕状出たんだって」
「は……はぁ? な、俺通報なんてしてな──」
「俺が上の方に報告しといただけだから。情報漏洩とかじゃないから安心して」
安心も何も、そりゃあ何事もなく捕まるんなら良かったけども。俺の表情に不満が残っていたのか、すぐに何かを察したテツは慌てて両手を振って訂正する。
「あっ……俺が報告したのは薬の特徴と昨日リトくんが参加した会食パーティの会場と、あと『所属ヒーローが被害に遭った』って情報だけよ!? それがやっぱり違法なルートで取り引きされてたやつらしくって、組織が動いてくれたおかげで早めに犯人が特定できたってだけで……きみの尊厳を損なうようなことまでは言ってないって!」
「いや、別にそこは気にしてねえんだけどさ」
「うん……気にはした方がいいと思うけどね? 一応」
「きみの気にするポイント分かんねえよ……」と冷や汗を流しながら常識人みたいな顔をしているこいつと、昨日あれだけ凶悪な誘い方をしてきたあいつが同一人物なんて信じられない。いつぞやのネットで見かけた言葉に倣うなら、『温度差で風邪を引く』というやつだろう。
それに、あんなふうに俺の余裕を突き崩しておきながら、本人は冷静に情報収集をしていたと来たものだ。興味本位にしては妙に細かく聞いて来るなとは思っていたが、よく考えてみればあれは事情聴取の聞き方そのものだった。
何だかんだで一番理性がしぶといのはテツなんじゃないかと時々思うが、こうして目線を泳がせている様子を見るとそれもまた違うような気がしてくる。掴みどころがないというか、本性が読み取れないというか──面白い奴だよなあ、と今更月並みなことを思った。
「副作用キツいと思うし、まだ寝てていいよ。本部には俺から連絡して、今日の任務はマナくんが代わりに出てくれることになったから」
「あー……マジ? 次会ったときお礼言っとかないとな……つか、テツもごめんな。なんていうか色々」
「いいってことよ。こんなことでもないときみ、滅多に頼ってくれないんだから」
──だってそりゃ、恋人の前では余計にかっこいいとこだけ見せていたいし。
そんな俺の心情を知ってか知らずか、テツは水の入ったペットボトルを差し出しながらふっと不敵に笑ってみせる。それは俺のそれともまた違った、力強くも心強いヒーローの笑い方だ。
「──どうだ。頼りになるだろ、きみのスパダリは」
「…………………………まぁまぁかな」
「は? おいクソガキ」
ペットボトルの水を半分以上飲んでなお癒えない喉の渇きと病熱は、薬の副作用によるものだろうか。それとも──ああもう、今度こそお前のせいにしてやるからな。と心の中で悪態をつきながら、残りの水を飲み干した。