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◆姫子が純の“視線の変化”に気づく
午後のオフィス。
姫子は資料をまとめて席に戻ろうとしていた。
そのとき──
純の視線が、ふと姫子に向けられた。
いつもと違う。
“見ている”というより、
“確かめている”ような目だった。
姫子は胸がざわついた。
(……昨日の夢の影と、同じ)
純はすぐに視線をそらしたが、
その一瞬の“迷い”が姫子の胸に残った。
(森川さん……何か、変わった)
姫子は席に戻りながら、
純の視線の意味を考え続けた。
その夜。
姫子はまた、あの森にいた。
光は薄く、風は止まり、
森全体が息を潜めているようだった。
きのこちゃんの姿は見えない。
代わりに、
森の奥から淡い光が揺れた。
姫子は光に向かって歩き出した。
光の中心に、影が立っていた。
昨日よりもはっきりしている。
輪郭が、ほとんど人の形になっている。
姫子が近づくと、
影も一歩、姫子の方へ踏み出した。
そして──
初めて、声が生まれた。
「……どうして、来るんだ」
低くて、静かで、
どこか寂しさを含んだ声。
姫子は息を呑んだ。
「あなたが……呼んだから」
影は沈黙した。
でも、その沈黙が肯定のように感じられた。
「あなたは……森川さんなの?」
影は答えなかった。
ただ、姫子に近づいた。
「……会いたかった」
その言葉が、
姫子の胸に直接触れた。